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テキサスが注目を浴びているらしい
こんにちは、ランサムはなです。突然ですが、アメリカはテキサス州在住の私はテキサスが大好きです。若い頃はアメリカ各地を転々としましたが、今はアメリカに住むならテキサス以外は考えられません。
ここテキサスが最近、世界的に大きな注目を集めているそうですね。確かにこの数年、カリフォルニア州に本社があったテスラやオラクルなど多くの大企業が相次いでテキサスに移転してきており、トヨタ自動車やダイキンなど北米本社をテキサスに置く日系企業も増えています。これに伴い年間約50万人もの人がテキサスに流入してきているというのも驚きです。
トランプ大統領の就任に大きく貢献したと言われるイーロン・マスク氏も、自身が経営する企業(電気自動車のテスラ、ソーシャルメディアの「X」、宇宙事業の「SpaceX」)を次々とテキサスに移転。アメリカで大人気のポッドキャスター、ジョー・ローガン氏など多くのセレブもテキサスに引っ越してきています。
これまで「カウボーイ」「プロレス」「サボテン」「石油」など、日本ではあまりぱっとしないイメージが強かったテキサス。なぜここへ来て多くの企業や有名人がテキサスを移転先に選ぶようになったのでしょうか。長年テキサスで暮らす者として、独断と偏見で見解を述べてみたいと思います。
「保守vs革新」「のんびりvs真面目」が共存
テキサスは保守派が多い土地と言われていますが、正反対の価値観や信条を持つ地域が絶妙なバランスで共存しています。一例を挙げると、テキサスの州都オースティンは、保守的な価値観の街々に取り囲まれながら非常にリベラルで異彩を放つ地域。この街で人種差別を感じることはほぼありません。また、テキサスはメキシコとの国境がある州。南米文化の影響もあって全般的におおらかでのんびりした雰囲気です。
また、テキサスには開拓時代にドイツやチェコなどの欧州系移民が大勢移住して町を開拓してきた歴史があり、その影響で非常に「実用的で物事をきっちりこなす」側面もあります。医療系企業やNASAなどの航空宇宙事業がテキサスで発達しているのは、その影響もあるのではないかと私は見ていますが、テキサスには良い意味での「ゆるさ」を残しつつ、やるべきことを真面目にしっかりとこなす文化が定着しているように思います。
このことは人、つまり「テキサス人」の中にも見られます。たとえばオースティンなどのリベラルな街に行くと、タンクトップに短パン、サンダルと言った「ただのだらしない人」にしか見えない人が、寝ぐせのついた髪のまま街を闊歩し、通りすがりの私のような外国人(日本人)に気さくに話しかけてきたりします。その人の話を聞いてみると、実は大金持ちで大成功を収めている人で驚いた、というようなことがよくあるのもテキサスならでは。常に既成概念を破られるような想定外の出会いが待ち受けているので、どのような価値観の人も一定の「風通し・居心地の良さ」「快適な距離感」を感じられる空間ができているように感じます。
私自身は根っからの日本の昭和気質のワーカホリックなので気を付けないとすぐに根を詰めて働きすぎてしまうため、街中のカフェで仕事をしていると良い意味での「ゆるさ」を感じられて癒されます。
「Keep Austin Weird(風変わりなままでいよう)」
私が気に入っているもうひとつのテキサスの特徴は、個性を尊重すること。インディーズ系など主流から外れた存在を応援する風潮があることです。
州都オースティンは「Keep Austin Weird(風変わりなままでいよう)」というスローガンを掲げており、「風変りである」「人と違っている」ことを「良し」としています。毎年オースティンで開催されている映像・音楽・テクノロジーの祭典「サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)」」も、有名になりたい人やスタートアップ企業の登竜門としての役割を果たしており、無名で野心とアイデアのある新人や起業家にチャンスを与えてくれます。「X」の前身であるツイッターや日本を代表する「こんまり」さんこと近藤麻理恵さんも、SXSWでの登壇や発表をきっかけに大ブレイクしました。すでに出来上がっている既成のものに媚びるのでなく、小さくて新しいものを応援しようという反骨精神が大きなエネルギーと希望を生み出しているように感じます。
個人的な話になりますが、幼少期に「普通ではない」「ユニークだ」などと、みんなと同じように振る舞えないことで肩身の狭い思いをしてきた私にとって、テキサス州の特にオースティンという街(市)は自分らしさを全面に押し出して生きることを肯定してくれる心強い存在です。私が年齢に捉われず50代になってからYouTubeなどに挑戦できたのも、新しく小さい存在を後押ししてくれる環境で暮らしていたからこそだと思います。
テキサスはアメリカで一番自由な場所なのかも?
こうして見てみると、多くの企業や人々がテキサスに押し寄せている理由は、「テキサスは他地域と比べて自由度が高く、やりたいことができる/言いたいことが言える土壌があり、可能性を感じられるから」ではないかと思います。
アメリカ国内の他の大都市と比べると物価や住宅価格が手頃で、企業にとっては法人税がかからないなどの利点も大きな魅力でしょう。ときにはテキサスから過激な発言や施策の話が聞こえてくることもありますが、それは「世界を変えたい」「世界を変えられる」と信じる人が多く暮らしているからではないかと思います。
ただ、長年テキサスの心地よい「ゆるさ」と、お財布にやさしい生活に慣れてきた私にとっては、正直なところ大企業が次々と進出し、物価や住宅価格が上がって大都市化していることを手放しでは喜べない部分があります。大都市化が進むと物価が上がり、個人事業主は賃料を払えなくなって店を畳み、街を出る事を余儀なくされる人たちも増え、小さい街としての個性が失われてしまいます。世界中から注目を浴びるのは嬉しいことですが、同時にこれまで築いてきた自由な気質や反骨精神が失われないようにと祈らずにはいられません。 こんなに注目されつつも「Weird(風変わり)」が奨励されているテキサスで、私も今年は新たな可能性を切り拓いて行きたいと思います。
ランサムはなのワンポイント英語レッスン
「Weird」と「Strange」の違い
どちらも「変」という意味ですが、「Strange」は「馴染みがない」「いつもと違う」と言った意味があるのに対し、「Weird」はちょっとネガティブな「気持ち悪い」の一歩手前のようなときに使います。「あの人はよほどの変人だね」などと言いたいときは「weird」を使った方が的確です。

『写真で見る 看板・標識・ラベル・パッケージの英語表現』ランサムはな著
『写真と動画で見る ジェスチャー・ボディランゲージの英語表現』ランサムはな著
