世界で一番長い14日間

特別養子縁組の申し立て その3:結果は郵便で

 家庭裁判所の調査官による家庭訪問は無事に終わりましたが、その結果はすぐには届きませんでした。

 日々の生活を送りながらも、我が家の特別養子縁組の法的な手続きの進み具合を気にしない日は一日もありませんでした。でも来る日も来る日も、家庭裁判所の担当者からは何も連絡はなく……落ち込んだ気持ちにならないよう感情を抑える努力をしながら過ごしていました。

 家庭訪問から2か月ほど経ったある日、やっと家庭裁判所から手紙が届きました。待ちに待った手紙なので、ドキドキしながら恐る恐る封筒を開けると——「審判確定」の記載が! つまり、私と夫は法的に太郎くんの親になることが認められたのです。  

 「これで、やっと終わった!」——これまで数年に及ぶ長かった日々の苦労が一瞬で吹っ飛び、これでもかというほど気持ちが舞い上がりました(笑)。

通知の内容には続きがあった

 普段は割と落ち着いた性格の私ですが、この通知を受け取った時はあまりの嬉しさで踊り出したくなるくらい気持ちが高揚しました。この喜びをすぐに家族で分かち合おうと思い、念の為もう一度、通知を読み直すと、そこには続きが書かれていました。

 「不服申立期間が14日間ある」と。

 要するに、我が家の特別養子縁組の申し立てにおいて裁判所が出した「審判確定」の判断が気に入らないなら、「その審判に対して意見を言うことが出来る」ということです。もっと砕いて言うと、「実親さんは考えを変えて、太郎くんを自分の元に戻すことが出来る」ということです。

 それを読んだ時の私の気持ちは、撃沈……。「噓でしょ?! もうこんなに待ったのに、あと14日間も待たなきゃいけないの?!」という、やるせない気持ちをどこにぶつけていいのか分からず、手紙を握る手が震えるほどでした。

世界で一番長い14日間

 その14日間は本当に苦しかった——毎日毎日、「お願いだから、本当にお願いだから、不服申立期間に何も起きませんように……」と願い続けた日々でした。

 とてつもなく長い、長い14日間が過ぎた数日後、家庭裁判所から再び通知が届きました。それは正式な審判確定の通知でした。つまり、不服申立てはなかったので私たち夫婦が正式に太郎くんの親になることが確定した、という通知で、「太郎くんをあなたの戸籍に入籍する手続きを行ってください」と書かれていました。

 翌日、私は夫と共に住民票がある役所に行き、指定された書類に必要事項を書き込みました。書類に記入しながらも、嬉しさのあまり顔がにやけてしまうので、「記入を間違ってはいけない!」と自分に喝を入れながら情報を書き入れました(笑)。

 記入した書類を窓口に提出し、待つこと約20分。名前が呼ばれて窓口に行くと、「これで、ここでの手続きは完了いたしました。これらの書類は戸籍筆頭者の本籍がある役所に送付し、そこで戸籍上に記載されます。手続きには1週間ほどかかりますが、戸籍に記載後は親ですので、もしも何らかの理由でお子さまの元の戸籍を取得する必要がある時にも問題なく取得できます」と言われました。

 「1週間後には、太郎くんも私たちと同じ戸籍に入るんだ」と思うと、また嬉しさが込み上げて来ました。

 やっぱり、太郎くんの名前が入った戸籍が一刻も早く見たかった私は、1週間後に戸籍を取り寄せる手続きをし、数日後に待ちに待った戸籍謄本が届きました。慎重にゆっくり封筒を開けて、戸籍謄本を取り出して開いてみると、「長男」という記述と共に太郎くんの情報が記載されていました。私は「やっと、ここまで来ることができた」と思いながら、ポロポロ流れ落ちる涙を抑えることが出来ませんでした。

 我が家の場合、私が日本国籍者で夫が外国籍者のため、私の戸籍に夫と太郎くんが記載されています。児童相談所で太郎くんを紹介していただいてから、全ての手続きを経て戸籍上で我が子となるまで、約2年3カ月がかかりました。ものすごく長かったような、あっという間だったような時間でしたが、これで胸を張って、「この子は私の息子です」と言えると思った時のことを、今でもよく覚えています。当時の太郎くんは7歳、2014年の出来事でした。

 特別養子縁組ものがたりは、戸籍に記載されたことがゴールではありません。子育てはここからもずっと続きます。言い換えれば、ここまでが第一章のようなものだと思います。

 そんなわけで我が家の特別養子縁組ものがたりは、まだまだ続きます。第二章もお楽しみに!

特別養子縁組と里親の情報
おすすめの記事