「おもてなし」は誰のため?

久々の日本を満喫中

 こんにちは、ランサムはなです。私は今、日本に一時帰国中です。コロナ禍の旅行規制などにより3年以上も帰国できなかったので、久しぶりの日本です。

 コロナ禍が明けた日本では、私が思っていたよりもマスクを外している人が多いことが印象的でした。コロナ禍に導入されたというコンビニの支払いタッチパネルや、販売されているマスクの種類の多さに驚いたり、日本食の繊細さに改めて感動したり、慌ただしいながらも日本での滞在を楽しんでいます。

 久しぶりの日本ということで、ありがたいことに食事に誘ってくださる方も多く、寿司、ラーメン、スープカレー、出汁茶漬け、そば、焼肉、水炊き、鉄板焼き、マクドナルドの日本限定フレーバーなど、様々な料理をいただきました。帰国するたびに思うのですが、日本の食へのこだわりは世界一ではないでしょうか。気持ちをストレートに表現することが少ない日本人にとって、食は「おもてなし」であると同時に、心を伝えるコミュニケーション手段の役割も果たしているように思います。

アメリカにお住みだからパンが良いですか?

 多くの方にお声がけをいただき、いろいろなレストランに連れて行っていただきました。その際、「はなさんはアメリカ在住だから、ご飯じゃなくてパンが良いですか?」とか、「洋風のブレックファーストがいいですか?」などと聞かれて、回答に詰まることがありました。

 3年ぶりに日本の土を踏んで、最初に私が注文したのは、何を隠そう鮭ハラスの出汁茶漬けでした。日本に住んでいる方々にとって、お茶漬けなんてお客様に出すような料理ではないと思われるかもしれませんが、日本人が日常的に食べている食事こそが、海外在住者にとっては何にも代えがたいご馳走です。「お茶漬けなら海外でも食べられるのでは?」と思われるかもしれませんが、日本で食べるのと海外で食べるのとでは、なぜか味も風情も全然違うのです。器や雰囲気が変わると、同じ料理でも日本にいた時とは違った味がします。

 海外在住者の多くは、焼き魚やお惣菜、ご飯と納豆、卵かけご飯、漬物と言った、日本に住む日本人にとっては何の変哲もない食事を切望しながら帰国します。ところが美味しいものを食べさせたいと思う家族や友人の中には、久しぶりに帰国した者を喜ばせるために奮発してフレンチやイタリアン、ステーキなどの高級店に連れて行こうとすることがあります。たまにしか食べられない豪華なごちそうを食べさせることが「一番のおもてなし」と思ってのことでしょうが、海外在住者にとっては、フレンチやイタリアンやステーキが「日常食」であり、しかも本場で食べているので食指が動かないこともあります。私のように日本での滞在期間が短く、食事の回数が限られている場合は、日本食(和食)を優先的に食べたいと思うので、先のような質問には回答に詰まってしまうのです。

 食事だけに限らず、おもてなしを受ける側とおもてなしをする側とでは、「何がおもてなしなのか」に対する期待値について、感覚的な食い違いがあるような気がします。

日本のおもてなしは「良かれ」が根底にある?

 このような食い違いがどうして生まれるのでしょうか。日本では、お客の好みを聞かずに先回りして、相手にとって「良かれ」と思うことを提案・実行するのが「おもてなし」と思っている節があるように思います。例を挙げると、日本では客が何も言わないうちにお茶を持ってきますよね。アメリカなら、まずはお客さんに「何が飲みたいですか?」と尋ねます。客の好みを聞いて、忠実にその望みを再現するのが良しとされるため、一方的に飲み物を出すことは少ないです。

 「良かれ」と思っての先回りがうまく行くのは、(ほぼ)単一民族国家の日本でなければ不可能な気がします。日本人の私でもこのようなすれ違いを感じるので、海外から来日される日本人ではない方々は、日本流の「おもてなし」をどの程度理解し、感謝しているのだろうかと時々思います。多民族国家から来た人たちに対しては、先回りせずに先に好みを聞く方が、コミュニケーションも円滑に取れる上、相手にも喜んでもらえるのではないでしょうか。

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「おもてなし」を英語で言うと?
東京オリンピック招致で10年前に話題になった「O・MO・TE・NA・SHI」。英語では「Hospitality」が一般的な言い方です。「Hospital」(病院)ととても似ているのは、ラテン語の語源「Hospes」に「客人の保護」など「世話をする」という意味があるとわかれば納得がいくと思います。

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