「マスク着用」の認識に見る、日本とアメリカの違い

マスク着用者をほとんど見かけないアメリカ

 こんにちは、ランサムはなです。皆様はどんな夏をお過ごしでしょうか。2020年3月に新型コロナウイルスが世界を震撼させてから、早いもので2年半。その間、日本の土を踏んでいない私ですが、私の周囲では家に閉じこもる生活に飽きてきたのか、海外旅行をする人がかなり増えてきました。

 先日は、出張で日本から米テキサス州にいらしていた私の翻訳の生徒さんが、私の住む遠方の街まではるばる訪ねて来てくださり、日本の話や翻訳の話に花が咲きました。日本の話が聞けて懐かしかった半面、日本とアメリカの違いをあらためて認識させられる経験となりました。

まず日本について生徒さんに伺った話でびっくりしたのは、日本は今でも、外出する時に全員マスクをしているそうですね。夏の暑い時でも、屋外でも誰もマスクを外そうとしないとか。今も全国民規模でマスク着用の足並みが揃っている話を聞いて、とても驚きました。

私が暮らしているテキサス州では、今ではマスクをしている人を見かけることはほとんどありません。ときどき周囲でコロナにかかったという話を聞くことはありますし、病院や一部のお店に入るときにマスクの着用を求められることはあるので、一応マスクを持ち歩いてはいますが、「マスクはもう特別な時にしか着用しない」という認識になっているように思います。アメリカでは「マスクを着用すべきか、しないのか」という議論自体が、もう過去の話題。日本から来たその生徒さんは、誰もマスクをしていないテキサスの「アフターコロナ」の状況を見て、私とは反対の意味で驚いておられました。

そういえば先日、国際線で日本からアメリカに戻って来た他の友人も、アメリカの国内線へ乗り換えたところ、マスクを着けていた乗客は自分ひとりだったという話をしていました。日本とアメリカのマスクの着用状況が全く違うことがわかります。

コロナウイルスが世界からなくなったわけではなく、誰もが気を付けなければいけないという事実は日本もアメリカも同じなのに、なぜこんなに国によって対応が違うのでしょうか。お国柄なのか、文化的なものなのか、いろいろな理由が考えられますが、個人的には、様々な反応があることは視野が広がってとても面白いと思っています。ともすると「正解は1つしかない」「こうでなければいけない」という考えに囚われてしまいがちですが、どんなことにもいくつもの答えがあり、正解は必ずしも1つではなく、世界各国で対応が異なるという事実は、人生の見方や選択肢も広げてくれるような気がするからです。

「マスクをする」、「しない」の二択以外の考え方

コロナ感染拡大が全盛の頃、私の住む小さい街のダウンタウンで「マスク反対デモ」が開催されたことがありました。日本人の私は「マスク反対」と書かれたプラカードを見て驚き、こんなことを言っている人たちは正気の沙汰ではないと思いました。「どんな顔の人たちが、何を考えて集まっているんだろう?」と群衆に近づいて、好奇心から話を聞いてみることにしたのです。

 その人たちの話をよくよく聞いてみると、そこに集まっている人たちは、「マスクをすること自体に反対」しているのではなく、「マスクをする、しないを子どもが選べないのはおかしい」と言って抗議していたことがわかりました。

「マスクは絶対にすべきだ」VS.「マスクなんていらない」という二択の議論しかないと思っていた私にとって、マスクをするか、しないかが問題なのではなく、マスクをするかどうかは「選べるべきである」と言って闘っている人たちがいる、ということを知ったのは大きな衝撃でした。

 日本に住んでいたら、「マスク着用は当たり前」ということで発想が止まってしまい、その先のことを考えることはなかったと思います。世界が危機的状況になっているのに、マスクをする、しないを決めることよりも、どちらの決定にせよ選べることが大事だと考える人がいるなんて想像もつかなったし、そういう考え方が存在して、そのために闘う人が世界にはいるのだということも、目から鱗でした。

多面的な考えのすすめ

マスクをする、しないのどちらが正しいかはさておいて、私が海外で長年暮らしている大きな理由のひとつは、今回のマスクの例のように、日本にいたら思いもつかなかったであろう発想や気づきに触れる機会があり、それによって物事を多面的に見られるようになるからだと思います。

自分では思いもしなかった考えを他の人から聞くことで、既成概念が崩れ、2Dでしか見えていなかった物事が3Dで見えたり、深みを帯びた景色に見えるのが楽しいのだと思います。

 日本から訪ねてくださった生徒さんにこの話をしたところ、教育学を専攻されたというその方は、「それはコロンビア大学のジャック・メジロー教授が提唱している“変容的学習(Transformative Learning)”ですね。これまで自分が持っていた物事の見方が変わる経験によって起きる学びです」と解説してくださいました。そのような専門用語があると知って、私も二度びっくりしました。

 マスク着用の議論から世界の新たな側面を発見できたことは、確かに「変容的学習」だったのかもしれません。

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アメリカではコロナウイルスの名称は「COVID」が一般的
日本では「コロナ」「コロナウイルス」と「コロナ」が全面的に呼び名として使われていますが、アメリカでは「コロナ」と呼ばれているのを聞いたことはほとんどありません。コロナは人の名前や固有名詞などで既によく使われているからでしょうか。大部分の人がコロナではなく「COVID」と呼んでいます。また、同様に「Pandemic」と言う単語もよく使われます。

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