病院に見る、アメリカと日本の違い

アメリカで「病院に行く」ことは、一大事!

 こんにちは、ランサムはなです。みなさま、健康でお過ごしでしょうか。私はと言えば、なんと医者にかかることになってしまいました。前回のコラムで「通りすがりに公園で開催されていたイースター礼拝に参加した」という話を書きましたが、虫よけ対策もせずに屋外で2時間もベンチに座っていた際に虫に刺され、足中に発疹が出現。水ぶくれもできて、ついに病院に行くことになったのです(涙)。私が住むテキサス州のような温かい地域は、虫が多いので気を付けなければいけなかったのですが……。

 ここで「ついに」病院に行くことになった、と書いたのには、理由があります。アメリカは医療費が高額なので、おいそれと医者にはかかれません。大袈裟ではなく、ややこしい治療や手術を伴う病気にかかったら、日本の医療費にゼロを1つか2つ足したような、目玉が飛び出るほどの金額が記載された請求書が来ることを覚悟しなければいけないのです。

 アメリカでは法外に高い医療費を請求されて、「医療費破産」する人も珍しくありません。大企業や政府機関(政治官僚、役所、学校、軍隊など)に勤めている人は企業や機関がほぼ全額の医療費を支払ってくれますが、そういうところに勤めていない人(マジョリティーの人たち)は、65歳になって国が運営する「メディケア」という高齢者向けの医療保険への加入資格が得られるまでは、高い医療費を恐れて戦々恐々と日々を過ごすことになります。なので、いざ医者にかかるとなると相当の覚悟が必要になるのです。

日本の医療制度の素晴らしさ

 日本に住んでいた時は、病院は実に身近な存在でした。医療費もお財布にやさしい金額だったので、ちょっとでも体調が悪くなると、すぐにお医者さんに駆け込んでいました。病院に行くことは、誰にとっても銀行や郵便局に行くような日常生活の一環。何か心配事があるから病院に行くというのはもちろん、「通院」も日常生活に当たり前のようにあることでした。今振り返ると、日本は本当に恵まれた環境だったとしみじみ思います。アメリカ在住者にとっての「通院」は、決意なしにはできないほど高額だから。

 日本の病院と言えば、私が以前に住んでいた北海道某市の病院で、「救急車はタクシーではありません」という貼り紙を見かけて、仰天したことがあります。日本では救急車が無料なので、タクシー感覚で救急車を呼んでしまう人もいるようですが、救急車が無料な国が当たり前ではありません。そんな恵まれた国に住んでいるという恩恵をありがたがる日本人がマジョリティーであることを願います。

 というのも、アメリカでは「救急車を呼ぶだけ」でも10万円〜20万円を請求されることはざらですから、救急車なんてとても気軽には呼べません。命の危険を感じる場合であっても、高額の請求書が来ることを案じて救急車に乗ることを拒否する人も大勢います。ハリウッド映画などで心臓発作を起こした人や破水した妊婦さんが「救急車ではなく、タクシーを呼ぶシーン」を見たことがある人も多いでしょう。アメリカで「医療機関にかかる」のは、文字通り「決死の覚悟」が必要になるのです。

医療に「とりあえず」は、ないのでは?

 日本に暮らしていた時の思い出で、もうひとつ印象に残っているのは、アメリカ人の夫と一緒に、いわゆる「メタボ検診」を受けに行ったときのことです。

 検診後、体格の良い夫が「あの医者はやぶ医者だ!」と烈火のごとく怒り出しました。理由をたずねると、夫の診断書に「肥満」と書かれた、と。そのこと自体は本人も自覚しているので、「肥満と言われたこと」が気に障ったのではなく、夫の言い分は「肥満なんて、医者に行かなくてもわかる」という点でした。

 アメリカでは、病院に行って医者の診察を受けることは、気軽にできることではありません。深刻な症状を抱えているとか、何かの事情があるから足を運ぶものなので、わざわざ医者に診断を乞う以上は、「素人ではわからないこと」を医者から教えてもらうのを期待するのが当然です。それなのに夫の診断結果は、誰が見ても明らかな「肥満」。しかも担当医師が「とりあえず、コレステロールの薬でも出しておきましょうか?」と言ったのが、夫には衝撃だったようです。「とりあえず、とは、どういうことなのか?」と。

 医療ですから、居酒屋などで「とりあえずビール」と頼むのとはわけが違います。ですから、「そんな軽いノリで薬を処方して良いのか? とりあえず薬を処方するなんて適当すぎる!」と愕然。よほどのことがない限り病院に行かない、もしくは行きたくても行けないアメリカ人の感覚からすると、「気軽に薬を処方する」という日本の病院の医師の慣行は信じられないことだったようです。

 そのような習慣や感覚の違いから、私もアメリカで長いこと暮らすうちに「できる限り医者にかからずに済ませよう」と考えるようになりました。そして、めったなことでは医者にかからない(かかれない)日々を送っているうちに、自分でも思いがけない心境の変化が生まれました。

簡単に医者にかかれないことで心境の変化が

 日本ではちょっとでも具合が悪くなると、「即、医者に駆け込み」でしたが、アメリカに来てからは、何かあってもまずは最初に、「何とか医者にかからずに済ませられる方法」や「入院期間をできるだけ短くする方法」を真剣に考えるようになりました。

 まず、ネットなどで病気に関する詳しい情報をとことん調べるようになり、少しでも知識をつけてから診察に臨むのが基本になりました。いろいろと調べれば様々な情報が見つかります。それゆえアメリカで「インフォームドコンセント」や「セカンドオピニオン」などの制度が生まれた背景と理由がわかった気もしました。

 また、医療に関しては「人任せではいけない」、もっと言えば「病気をしてはいけない」という自覚が生まれ、危機感をもって運動したり、忙しくてもウォーキングをするようになりました。日本にいたときは、「(血圧の薬など)病院で薬をもらって常時飲んでいさえすれば安心」という気持ちが強かったですが、アメリカで暮らすうちにそれでは不十分だと気づき、「どうすれば医者や薬に頼らずに、健康を維持することができるのか」と考えるようにもなりました。

 もちろん今でも、日本の医療制度は素晴らしいと思いますし、アメリカでも日本のように手頃な価格での国民皆保険が実現すればどんなにいいだろうと思います。でも、今は「日本にいた時に感じていた、何等かの病気にかかるのではないかという漠然とした不安」がだいぶ薄れて、病気が話題に上がる頻度が格段に減りました。それと同時に「健康は当たり前のことではない」ことを改めて実感でき、健康に感謝できるようになったことは、思いがけない収穫だったと思います。

ランサムはなのワンポイント英語レッスン

ドラッグストアで買える薬は「OTC (Over the counter)」と呼ぶ

医療費が高いアメリカでは、ちょっとした病気は病院へ行かず、薬局で薬を購入して治そうとする人が多いです。処方箋がないと買えない薬は「Prescription drugs」と言いますが、市販されていて誰でも買える薬は「OTC (Over the counter)」(=薬局のカウンター越しに買える薬、つまり市販薬)と呼んで区別されています。アメリカで市販されている薬は、日本人にはちょっと分量が多いこともあるので、服用する際には注意が必要です。

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