マスクを外すか外さないかに見る、日本とアメリカの違い

3月13日って、何の日?

 こんにちは、ランサムはなです。何気なくツイッターを見ていたら、「3月13日」がトレンド入りしていました。「天皇誕生日は終わったし、ひな祭りでもホワイトデーでもない。3月13日って新しい祝日?」と不思議に思って調べてみたところ、日本ではその日から「マスク着用が個人判断に委ねられるようになる」と政府が決定したことがわかりました。

 これを聞いたとき、私は「ん?」と狐につままれたような気持ちになりました。そもそもマスク着用というのは、政府が音頭を取って全国民にやめようと呼びかけなければいけないほど強い拘束力のある法的義務だったのでしょうか? 少なくともそういう法律はなかったような……。それに、なぜ3月13日になったのでしょうか? 日にちを決めなければいけない理由はどこにあるのでしょうか?  不思議に感じられることばかりです。

 ひょっとすると、3月13日には、私の知らない何か特別な理由があるのかもしれない。そう思って日本に住む友人に聞いたところ、「卒業式に顔出しできるように配慮した、という説がある」と教えてくれました。でも、それまでマスクを着けて一緒に過ごしてきた仲間が、最後にようやくお互いの顔が見えても、そのあとすぐ離れ離れになってしまうことを考えると、あまり実用性がないし、それほど説得力がある理由には思えません。あえて3月13日と日にちを決めた理由は何なのか? 考えれば考えるほど不思議に思えてなりませんでした。どなたかご存じの方がいたら、教えていただけたら嬉しいです。

みんながマスクを外すだろうか?

 友人は「みんながマスクを外すか、見ものだね!」と言っていましたが、私は正直なところ、複雑な心境で彼女の話を聞いていました。というのもここアメリカでは、マスクを着用している人を見かけることはほとんどありません。以前のコラムでも書きましたが、アメリカは昨夏ぐらいから「アフターコロナ」へとシフトして、誰からともなく自然にマスクの着用をやめてしまいました。政府が「この日からマスクをしなくてもいいですよ!」などと国民に呼び掛けることも、もちろんありません。今ではコロナが流行り出した当初に各地で見られた自粛モード的な雰囲気はすっかり影を潜めています。もちろんコロナ自体がなくなったわけではなく、今でもコロナ検査が陽性だったという人の話を聞くことはありますが、罹患したら自己隔離して安静にするなど、やるべきことを淡々とやって回復を待てばいいだけの話。もはやマスクに話題が集中することはありません。

 元々マスクを好まない国民性だったこともありますが、マスクを着用する・しない云々という議論は、一般のアメリカ人にとってはすでに過去の話。感覚的にも「もう終わったこと」です。そんなアメリカの地で「3月13日からマスク着用を自己判断で」と呼び掛ける日本の報道を見ていると、日本はどこかで時計が止まってしまったのだろうか?と思わずにはいられなかったのです。

「マスク警察」って、何?

 3月13日について知った翌日、たまたま日本語を学習中のアメリカ人にレッスンをする機会があったので、日本のマスク着用についてどう思うか尋ねてみました。

 するとアメリカ人の学生が、「日本のマスク警察という言葉について学びました」と言うので、さらにびっくり。マスク警察とは、マスクを着けていない人を激しく叱責、罵倒する人のことで、ワクチン未接種の人も攻撃の対象になることがある、と私に説明してくれました。

 マスク警察の話を聞いて、私はなんだか我が身が心配になってきました。私は3年近く日本に帰省しておらず、アメリカでマスクを着用しない生活にすっかり慣れてしまっているので、日本に帰国したらいつもの癖でマスクを着用せずに外に出るすことがあるかもしれません。そんなことをしたら、すぐにご近所の「マスク警察」が飛び出してきて、人前で叱られるのでしょうか? そもそも「マスク警察」は、どれぐらいの割合でどの地域に存在するのか? 地方と都会での比率はどれくらいで、どんな出で立ちなのか? あれこれ心配して妄想していたら、だんだん気が重くなってきました。

 件のアメリカ人学生に意見を聞いたところ、「マスク着用は大切。でもマスク警察はやりすぎだと思います」という答えが返ってきました。あまりにも簡潔で、的を得た答えに脱帽するとともに私も彼の意見に強く共感してしまいました。

本当に大切なことは何かを見極めたいもの

 日本におけるマスク着用の徹底ぶりについて別の友人にも尋ねたところ、さらに驚きの話を教えてくれました。

 友人のお子さんが通う小学校では、マスクを外せないのでリコーダーを使った音楽の授業ができなくなったそうですが、そのために口の部分に穴の開いたマスクや、マスクをしたままリコーダーが吹けるグッズがあるというのです。そもそも「マスクに穴が開いていたら着用する意味がないのでは?」と思いますが、マスクは着用しているので規則を破ったと非難されることは回避できるのでしょう。この創意工夫ぶりにはびっくりして、文字通り「開いた口がふさがらない」思いでした。

 マスク着用が徹底している日本でも、コロナ感染を食い止めることができていないのは統計結果を見ても明らかです。それなのに、なぜそこまでマスク着用にこだわり、マスク着用を徹底させるために膨大な時間とエネルギーを注がなければいけないのでしょう。マスク着用はそれほど大切なことなのでしょうか?

 日本の外から見ていると、本来の目的だったコロナ感染を拡大させないことよりも、マスク着用を徹底させることに躍起になっている人も多いのではという印象も受けます。私がこのような印象を持つのは、外国から客観的に日本を眺めているからかもしれません。何事も渦中にいるときは目の前のことでいっぱいになるし、どの国も外から見ると不思議なことをやっていることはあるものです。私も日本に帰省すれば、周囲の目を気にして、マスクを着用していない人を非難がましく見るようになるのかもしれません。

 ただ、どのような状況に置かれても、本当に大切なことは何かを常に見失わず、常に物事の本質に立ち返り、自分の頭で考え、行動していける人間でありたいとは思います。一生は短く、私たちが持てるエネルギーの量は限られています。数年後にあらためて自分の姿を振り返ったときに、的外れなことにエネルギーを使っていたと悲しくなるような選択はしたくないもの。当時の自分は自分にとって本当に大切なことにエネルギーを使い、ベストを尽くしていた、と未来の自分が誇らしく思えるような生き方や選択ができればいいなと思っています。

ランサムはなのワンポイント英語レッスン

「マスク」にはmask、muskの2つの意味がある

日本では、衛生用のマスクもイーロン・マスク氏の苗字もカタカナ表記にすると「マスク」ですが、英語表記ではつづりが異なります。フェイスマスクなど顔を覆うマスクや仮面は「mask」ですが、イーロン・マスク氏は「Musk」です。「Musk」はジャコウジカから取れる香料で、香水を作るときなどに使われます。香水の意味で使うときには「ムスク」と表記されます。

看板・標識の英語表現 ランサムはな

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