里親あるある 

世間には「決まりごと」がいっぱい

 子どもを家族に迎える日が近づくと、児童相談所から私たちが「里親であることを証明する書類」を受け取ったり、今後の生活についてアドバイスをいただいたりと、新生活の始まりが現実味を帯びてきます。

 そして、子どもを迎えた生活が始まると良い意味でも悪い意味でも初めて体験することが増えました。私たちが里親であるため、なかには予想もしていなかったことも。今回はそのうちのいくつかをお話ししたいと思います。

里親あるある1:健康保険証がない

 「受診証」という証明書をご存知ですか? 私たち夫婦が住んでいた自治体では、実親と暮らせない子どもには健康保険証の代わりに「受診証」というものが発行されたのですが(各自治体が同じ制度を採用しているかは不明)、これは子育て支援の一環で自治体が子どもの医療費を100%負担するもの。すべての子どもが国から健康保険証をもらえると思っていたので、そうではないことにまず驚かされました。

 そんなわけで、太郎くんが病気やケガをしたときには、その都度、病院や薬局で「受診証」を提出します。でも、どの病院や薬局でも「受診証」を見たことも扱ったこともなく、新規で受診する際には毎回受付で手こずりました。

 そのため、病院に行く時には必ず自分が里親であることを証明する書類を一式揃えたファイルを持参することにしました。我が家の場合、受診を拒否されたことは一度もありませんでしたが、病院や薬局での滞在時間が通常よりは長くなることは必須でしたので、それを見越して予定を組んで対処しました。

里親あるある2:親と子どもの名字が異なる

 日常生活の中で最も明らかな「里親あるある」のひとつが、自分と子供の名字が異なることだと思います。

 病院や薬局で名前を呼ばれる際は子どもの名字で呼ばれるため、初めのうちは名前を呼ばれても気づかないことが多かったです。病院の職員が何度も何度も同じ名前を呼び掛けているのを見ながら、心の中で「〇〇さんという方、何度も呼ばれていますよ」と周囲をきょろきょろ見渡したりしていました(笑)。太郎くんの名字が呼ばれるのだと意識するようになってからは、「いつ呼ばれるか」と注意を払うようになりました。

 子どもが通う教育機関からのお知らせや連絡もは、通っているのは子ども本人ですから、私も子どもの名字で呼ばれたり、子どもの名字で宛名が書かれていることがしょっちゅうありました。

 また、子ども名義の銀行口座の新規開設にも苦労しました。太郎くんは自分名義の銀行口座を持っていましたが、私たち夫婦と同じ銀行に口座があった方が便利だと思い、新規口座開設の手続きを申請しました。しかし、里親が里子名義の新規口座開設の手続きをこれまでに扱ったことがないとの理由で、手続きは出来ないと言われてしまいました。もちろんその説明には納得がいかず、持参したありとあらゆる里子の関係を証明する書類を見せて、相手が「うん」と言うまで粘りました。その結果、新規口座を開設できましたが、何度も銀行に足を運び、時間と苦労がかかりました。

里親あるある3:どちらに似ているのかな?

 我が家は私が日本人、夫が白人という夫婦で、そこに太郎くんが加わりました。3人でいると、「ぼく、かわいいね~」などと声をかけていただいた後に必ず、「ぼくはお父さんとお母さんのどっちに似ているのかなぁ~?」とジロジロ見られることがよくありました。知らない方々から太郎くんの外見にコメントされる度に、「我が家は特別養子縁組なんですよ」と言いそうになりましたが、知らない人ひとりひとりに説明することでもないと思い、たいていは笑ってすごすようにしました。

 あるとき、私と夫と太郎くんとショッピングモールを歩いていた際、前から歩いて来た中年の女性が私たちの前で立ち止まり、いきなりその地域の方言で、「うわぁ~、息子ちゃん、お父ちゃんとお母ちゃんが、よー混ざっとんな~!」と言われたこともあります(笑)。

 欧米では公共の場で他人の外見にコメントしない(社会的にそれをしてはいけない)ので、文化の違いに驚くことも多かったですが、どんな家族や個人の背景も外見だけではわからないものなのに「子どもはどちらかの親に似ているもの」「親子は名字が同じなのが当たり前」などと決めつける人が多いことに驚かされ続けました。こういうことからも日本ではまだまだ特別養子縁組は社会に浸透していないのだなと実感します(第16話「この質問、あなたならどう感じますか?」も参照ください)。

 我が家の特別養子縁組体験記はまだまだ続きます。次回もお楽しみに!

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