『特別養子縁組ものがたり』第一章の終わりに
前回のコラム「世界で一番長い14日間」で、戸籍上の親になったももさん夫妻。児童相談所で太郎くんを紹介されてから、約2年3カ月かかって、ようやく戸籍上の我が子となった日までの奮闘を綴った『特別養子縁組ものがたり』の第一章の終わりに、太郎くんを産んだお母さんへの気持ちを伝えたいと、ももさんが書いた手紙を公開します。
息子の実母さまへ
息子の実母さまへ
あなたへ感謝の気持ちを伝えたい——。初めて息子に会った時から私はずっとそう思っておりました。
今から12年前の2012年、児童相談所から「紹介したいお子さんがいます……」という連絡を頂き、私と夫はその子と会う日が待ち遠しくてたまりませんでした。「どんな子だろう?」と想像を膨らませながら、初めて会う日を指折り数えて待ちました。
児童相談所で、その子には特別養子縁組が必要な事情があることを聞いた時、あなたがすでに特別養子縁組に同意している旨を証明する、あなたの直筆の署名入りの書類を見せていただきました。その書類を見た瞬間から、私の心の中にはあなたが居る「特別な場所」があります。あなたが息子を産んでくれたからこそ、私と夫は息子に出会うことができ、家族になることが出来たのです。今の私と夫には、息子がいない人生は考えられません。
私と夫が息子にとって最適の両親かは分かりませんが、息子をひとりの人間として尊重し、将来は社会で活躍する一員となれるように出来る限り応援しております。
息子は16歳になり、立派な青年に成長しました。勉強は苦手ですが、日本語と英語の両方で意思の疎通ができ、スポーツが得意です。運動能力がとても優れていることには常に驚かされております。性格は恥ずかしがり屋ですが、私たちに心温まる言葉をかけてくれたり、困っている人を助ける優しい子に育ちました。これまで大きな病気やケガもせず、毎日元気にしておりますので、どうかご安心ください。
息子を産んでくださったこと、そして息子を私たちに託してくださったことに対する感謝の気持ちをなんと表せばよいのか言葉が見つかりませんが、どうしてもお礼をお伝えしたくて筆をとりました。息子を産んでくださり、本当にありがとうございます。これからも私たちは実母さまへの感謝の気持ちを胸に、息子の成長を見守り続けていきます。心の底からの感謝を込めて。
とよのぶもも