太郎くんとの交流のはじまり、はじまり

まずは児童養護施設にて

 少し不安な気持ちを消せないまま、太郎くんと児童養護施設の職員、そして私と夫という三者交流(全3回)がはじまりました(前回までのお話はこちら)。

 1回目の交流は、太郎くんと2人の職員、私と夫の5人で、児童養護施設内の個室で行われました。その部屋には、絵本やおもちゃ、ぬり絵やカードゲーム、ボードゲーム等がたくさんありました。しかし、私は太郎くんがどんな遊びが好きなのか、どのようなものに興味があるのか全く見当もつかず、「何をすればいいんだろう~?」とあたふたしてしまいました。それを見た職員が主導権を握ってくださり、太郎くんと一緒に遊ぶ会が始まりました。

 まずは、ぬり絵。私、夫、太郎くんが1枚ずつの紙に色を塗っていきます。私は「ぬり絵をするなんて、いつぶりだろう?」と思いながら、時折、太郎くんや夫の進捗状況にコメントをしながら、緊張をよそに意外に楽しむことができました。

そんな中、職員がお菓子と飲み物を持ってきてくださいました。それをありがたくいただきながら、「あっそうだ、次回の交流から私たちが太郎くんが好きそうなお菓子を持ってくればいいんだ!」と、交流のアイデアがひとつ浮かびました。

すると太郎くんは、「ぬり絵が終わった~!」と言い、その後、あるおもちゃを見つけて「あっ、メルちゃんだ~!」と嬉しそうな声をあげました。私はその名前を聞いたことがなく、「どんなおもちゃだろう?」と見てみると、それは女の子のお人形でした。 その女の子のお人形を抱っこする太郎くんは、自分よりも年下の子どもに優しく素直に接しているように見えました。その姿を見ながら私は「太郎くんは、かわいいな~」と思い、それと同時に「男の子だから、女の子のお人形で遊んじゃダメ」などと、性別や年齢等で「こうあるべき」という固定概念を押し付けるやり方は絶対にしないにしようと決めました。太郎くんが我が家の息子となるならば、なるべくたくさんの経験をし、その中から様々なことを学んでほしいな、と思ったのです。

なんて呼ばせたらいいですか?

 そのあとも一緒に話をしながら、ウン十年ぶりにする本格的なおもちゃ遊びを私も一緒に楽しみました。その途中に職員にこう聞かれました。

太郎くんは、お2人のことを何とお呼びすればいいですかね?

そう聞かれて、即答できなかった私。聞かれるまで、そんなことは考えていませんでした(苦笑)。

児童養護施設では、子どもたちは職員たちを「佐藤さん」と「さんづけ」で呼んでいます。きっと、子どもたちは大人をそう呼ぶことに慣れていると思い、私は職員に「2人とも、下の名前に“さん”をつけて呼んでいただければ嬉しいです」と答えました。

 45分ほど交流をした後、太郎くんと別れて、大人たちは別室へ。児童養護施設で太郎くんの養育を担当している職員が、私と夫に対して、児童養護施設での太郎くんの普段の様子を説明してくださいました。

内容は、食べ物の好き嫌い、食物アレルギーの有無、性格的なこと、通っている幼稚園での様子、興味のあること、養育において職員が気になっていること、生活全般における課題など多岐にわたりました。今後、太郎くんを我が家へ迎えるにあたり必要となる多くの情報を知ることができ、かつ、私の手帳の中の数ページはこれらのメモでぎっしりと埋まりました。 私から、今後の交流時には私たちが太郎くんにお菓子を持参してもよいかどうかを聞いたところ、太郎くんが喜ぶと思うのでぜひとの回答をいただけました。

太郎くんは、どんなお菓子が好きなのだろう?

 数日後、太郎くんへのお土産のお菓子を買うために、スーパーマーケットへ行きました。正直、私は大人になってから、子どもの時のようにはお菓子に興味がわかなくなり、お菓子コーナーへ立ち寄ることはなかったため、久しぶりにお菓子の商品棚を前に圧倒されてしまいました。とりあえず全体をバーッと見渡そうと思い、隅から順に見始めると、自分が子どもの頃に食べたことのあるお菓子が目に入りました。「あ~、懐かしい~!」と、それを手に取ってにっこりしたり(笑)。そんな私の様子を店員さんは怪しい客だと思って警戒していたかもしれませんが(苦笑)。

「子どもって、パッケージにかわいらしい絵があると飛びつくのかな~?」
「うーん、太郎くんは何を気に入ってくれるだろう?」

これもいいかも、あれもいいかもとお菓子を選びながら、「お菓子と言えば、小学校の時の遠足だ。あ~、懐かしい」などと郷愁にひたったり。いつか太郎くんが我が家に来ることになれば、遠足用のお菓子選びなどもあるんだろうなあなどと、実に様々なことが頭をよぎりました。結局、「これが一番無難かも……」と考えて、チョコビスケットに落ち着きました。彼の様子を思い描きながら、お菓子をひとつ選ぶだけでも、私にとっては行ったり来たりの初イベントのひとつになりました。

職員の数が減った次の交流ステージへ

 2回目と3回目の交流において、1回目と異なる点は、「対応してくださった児童養護施設の職員が2人から1人に減ったこと」と、「交流時間が45分から1時間になったこと」の2点で、あとはほぼ同じでした。

 太郎くんは、私たちが持参したお菓子(チョコビスケット)を気に入ってくれたので、嬉しかったです。交流後は、1回目と同様、太郎くんの養育を担当している職員と私と夫で話をする場が設けられ、私と夫の太郎くんに対する印象や、職員が私と夫が太郎くんと交流している様子を見て感じたこと、太郎くんの普段の生活のさらなる様子等を話しました。

そして、私たちだけでの交流へ

 そして次の段階は職員の同席なしで、太郎くんと私と夫のみでの交流となりました。3人での交流は2回(各1時間)ありましたが、内容は児童養護施設の職員を含めた交流の時とほぼ同じでした。

 3人だけで初めての交流する前に、私は「太郎くん、泣かないかな~?」、「拒否されたりしないかな……」など、不安な気持ちでいっぱいでした。でも、実際に3人で会ったら、それらの心配は無用でした。一緒にブロックでタワーを作ったり、折り紙の本を参考にしながら折り紙を折ったり。途中、「これはこうやってやろう!」などと太郎くんの方から意見を言ったりすることもありました。遊びながらたくさんお話をしたり、ときどき夫が、「これは英語では△△と言うんだよ」と英語を教えたりする場面もありましたが、これには太郎くんはキョトンとしておりました(笑)。

 これまでの太郎くんと交流において、「この子は手がかかるな」とか、「言うことを聞かなくて困るな」などのネガティブな印象は全くありませんでした。だからと言って、太郎くんが完璧な子でないことは百も承知。子育ては24時間体制で、休みがほぼゼロです。この交流のように、大人と子どもにとってお互いの都合の良い時に会って数時間遊んで過ごし、「はい、じゃあ、今日はたくさん遊んだから、また次に遊ぶ時に会いましょう」と、そんな都合が良いものではないことは重々理解していたつもりです。

次回は、児童養護施設の外への初めてのお出かけについてです。お楽しみに~!

前回までのお話はこちら

特別養子バナー

おすすめ記事