年末年始に見る、日本とアメリカの違い

クリスマスは誰と過ごすもの?

 こんにちは、ランサムはなです。2022年の年の瀬を皆さんはどのようにお過ごしでしょうか。私が暮らす米テキサス州でも、ここ数日は珍しく零下10℃を越える寒い日が続き、生まれ故郷の北海道を思い出しています。

 年の瀬の行事といえば、クリスマス。日本では(少なくとも私が若い頃は)、クリスマスは家族よりも恋人と過ごすためのイベントという印象でしたが、今はどうなのでしょう? 私が暮らしていた頃は、クリスマスを一緒に過ごす恋人がいないと、ちょっと肩身が狭い思いがしました。

 さらに言うと、当時は25歳以上の独身女性を「クリスマスケーキ」と表現する流行語(25日を過ぎると価値が急降下)などもありました。その2倍以上もの年を重ねた今、「当時の日本の若い女性たちは、ずいぶん厳しい品定めをされていたものだな」と改めて思います。最近は「クリぼっち」などという言葉も聞くので、今はクリスマスに恋人と過ごさなくても肩身が狭く感じることがなくなってきたのかもしれません。どちらにせよ日本では、クリスマスは恋人や友人など家族以外の人と過ごすもの、と考える方が多い気がします。

家族で祝うアメリカのクリスマス

 一方、アメリカはキリスト教の国と言われているので(もちろん多種の宗教がありますが)、その伝統に従って、お正月(ニューイヤーズ・デー)よりもクリスマスを祝うことを重視します。お正月に家族で集まる習慣がないこともあって、クリスマスは家族のための重要な行事だと認識されています。

 それゆえにクリスマスの準備も本格的。毎年わざわざ本物の木を買いに行き、車の屋根にくくりつけて家に運んだ木を飾りつけたり、家の外観や庭を色とりどりにライトアップする家々がたくさん並び、夜は住宅地にもイルミネーションが輝いてとてもきれいです。

 家の中もクリスマス仕様に飾り付け、ツリーの下には、何日も前からきれいなラッピングペーパーに包んだクリスマスプレゼントを置いておきます。プレゼントはひとりにつき1つとは限らず、大小いくつものプレゼントを用意することが多く、その数が徐々に増えていくのもお楽しみのひとつ。クリスマスの朝に家族が見ている前でラッピングペーパーをビリビリと破いてプレゼントを豪快に開けるのが子どもたちにとってのメインイベントです。サンタクロースを信じている子どもたちがいる家庭では、サンタが夜中に来てくれたことを労わるためのクッキーとミルクを用意し、親御さんがクッキーを半分かじってサンタが来た証拠を演出するなどしてクリスマス当日を盛り上げます。

 様々な背景や信条の人種、民族が集まる多様性豊かなアメリカですが、クリスマスだけは一斉に休み、家族と一緒に過ごす習慣が今でも守られている——そこに山下達郎の「クリスマスイブ」が流れてくれたら申し分ないのに、とよく思います(笑)。アメリカはクリスマスが盛大で、日本はお正月が盛大。毎年アメリカでクリスマスを過ごし、日本でお正月を過ごせたら理想的ですよね。

「あけましておめでとう」は "Happy New Year"なのか?

 年末年始のご挨拶といえば、日本では元旦以降に届く年賀状ですよね。アメリカでは年末年始の挨拶にはクリスマスカードを送ります。最近はペーパーレス化が急速に進み、紙のクリスマスカードを郵送する方はごく一部の方になってしまいました。いまでもグリーティングカードは売られていますが、卒業式など一部の重要な人生の区切りでお札を同封してプレゼントする場合などを除き、紙のカードが使われることは非常に少なくなりました。

 年末年始の挨拶といえば、おもしろい話があります。以前にアメリカ人の学生に日本語を教えていた時、新年の挨拶は「あけましておめでとう」だと教えると、年が明ける前から「あけましておめでとう」を連呼する学生が続出して慌てたことがありました。

 確かに”Happy New Year”を辞書で引くと「あけましておめでとう」と書いてありますが、若干ニュアンスが違います。”Happy New Year”は直訳すると「良いお年を」なので、年が明ける前に使用しても、年が明けた後に使用しても違和感がありません。しかし、「あけましておめでとう」は「新年が明けた」ことを祝っているので、実際に年が明けてからでなければ言えません。挨拶として何気なく使っている表現でも微妙に使い分けが異なるのです。学生たちには、辞書を鵜呑みにせず本来の意味を理解する必要があることや、「良いお年を」とセットで覚えて、お正月の前と後で使い分ける必要があることを説明しました。

 「あけましておめでとう」という表現ひとつをとっても、日本は年末よりも年が明けてからの方が「おめでたい」と捉えていることがわかります。年末に大掃除をし、大晦日に除夜の鐘を聞いて108個の煩悩を消し、きれいさっぱりリセットして新たな気持ちで新年を迎えようとする考え方は、英語の"Happy New Year"には込められていません。新年の挨拶として同じ意味に訳されることが多い2つですが、言葉の本来の意味を考えることで文化的背景の違いも浮かび上がってくるのは興味深いと思います。

 それぞれの国の違いはありますが、「思いを新たに新年を迎える」という点は世界共通だと思います。皆さん、良い年末年始をお迎えください。

ランサムはなのワンポイント英語レッスン

"Merry Christmas"と"Happy Holidays"

キリスト教が土台にあるアメリカでは、長年 "Merry Christmas"がクリスマスの定番の挨拶でした。ですが最近では、キリスト教の信者でない方や多様性を考慮して、"Happy Holidays"を使う人が多くなっています。ちなみに "Have a happy new year!"というときは次の1年を指すので「a」がつきますが、"Happy Holidays"は1日だけを指すわけではないので複数形になります。

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