不妊治療の費用はアメリカと日本でどう違う?
国際結婚・海外移住

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人生の選択肢を海外へ広げたいGo Women Go読者の皆さんからの様々なご質問に、国際結婚歴15年のジョーンズ千穂さんがアメリカから答えます。

読者からの質問:アメリカの不妊治療の費用を教えて下さい

 日本で不妊治療中です。夫が海外赴任するので(3年間)、これからアメリカで不妊治療を受けることになります。アメリカは何でも高額だと聞いていますが、不妊治療にはいくらくらいかかりますか?

アメリカでの人工授精(IUI)費用は高額!

 私は日本でもアメリカでも不妊治療(人工授精と体外受精)を受けたので、私の経験をシェアさせていただきますね。日本とアメリカでは費用がかなり違いました。アメリカでの医療にかかる費用は本当に高額です(汗)。

 まず初めに、アメリカでは各州がそれぞれ国のような働きをしているので(州ごとに法律も異なります)、州によって保険で賄える治療や薬の種類、保険が負担する額もそれぞれなんです(稀に州ではなくアメリカ合衆国労働省のERISAという法律を適応する保険会社もあります)。

 アメリカの保険制度は日本とは違い、みんなが同じ保険に入るのではなく、会社員や公的機関で働いている場合以外は自分で選んだ保険会社のプランに入ります。各社のプランは様々なので、「どの州で、どの保険のどのプランだから何がカバーされるのか?」を調べてから加入してください。日本の医療費は原則的に全国どこの医療機関にかかっても同金額という「公定価格」で基本料金が決まっていますが、アメリカは医療機関(病院や専門医)によって金額の違いが結構あるので、「絶対にこの有名な不妊治療専門医に診てもらいたい!」という希望がないならば、いくつかの病院を比較された方が良いかと思います。

 治療が始まると「毎日のように採血やウルトラサウンド、または注射を打ちに行く」という可能性もあるので、自分で通える範囲内の病院(クリニック)を選ぶのも重要です。これが結構大変なんですよ(汗)。注射は自宅で自己注射をするという手段もありますが、採血はクリニックに通わなくてはいけないので。

 私が不妊治療中に住んでいたアーカンソー州では、人工授精までならば、それに必要な薬のいくつか(たとえば排卵誘発剤のレトロゾールやクロミッド、排卵を確実にさせるHCG注射)を保険が負担する場合もありました。アメリカでの人工授精(IUI)費用は、私の場合は10年前の価格で1回につき、約22万円(1ドル=150円計算の場合)。これ、1回にかかる費用です、1回! その上、人工授精に至るまでの検査費用(たとえば子宮卵管造影検査は保険でカバーしない場合は約1000ドル)は別なんです。私の場合は全身麻酔が怖くて使わなかったのですが、全身麻酔をすると保険を使用してもプラスで数百ドルはかかると思います。  

 日本で人工授精をした時の値段は1回2万~3万円だったので、この金額の違いにはびっくりしますよね。

体外受精になると、さらに高額!

 これが、さらに「体外受精」にステップアップすると、どうなるでしょう?

 なるべく安くしたいから保険を使う場合は、タイミング法で数年チャレンジをしてから人工授精へ、そして人工授精を何回かしてから、やっと体外受精へステップアップできる(もしくは出来ないことも)という流れになることが多く、体外受精にたどり着くまでにものすごく時間がかかります。保険会社も直ぐに高額の治療費を負担したくないからでしょう(苦笑)。

 当時の私は30歳で、時間を無駄にしたくなかったので、自分の保険の範囲内ではなく、州外からも希望者が来る不妊治療専門の有名クリニックを選びました。なので、保険でのカバー額はゼロ。体外受精にかかったお値段は今から10年ちょっと前で約150万円。それに自己注射や薬代などが約100万円。なので、合計約250万円でした。

 これは、このクリニック独自のプランで「現金一括払い、一発勝負」(笑)というもので、採卵を1回して培養した受精卵のある限り移植をしてあげましょうというものでした。

 不妊治療専門でもクリニックや病院によってかかる費用は様々だとは思いますが、アメリカでの体外受精にかかる費用の平均は、2024年現在12,000ドル(約180万円)だそうです(American Society for Reproductive Medicine @ASRMによる調査)。これは体外受精と移植にかかる費用なので、ここに薬代や検査費用が上乗せされると思われます。私が選んだような「専門医によるクリニック」は比較的値段は高め(強気)だという印象です。

 一方、日本のレディースクリニック(一応、地元では不妊治療で有名)での体外受精にかかったトータルの費用は、1回の移植で約60万円(地域からの補助金なし)でした。アメリカに比べると半額以下ですよね。

 最近のアメリカの物価上昇に伴い、医療費にも影響が出ているため、私が不妊治療を受けたときと現在(2024年4月)では、州や保険によって不妊治療の費用負担額も変わっているはずので、私の体験談はあくまでも参考です。

 こんなにお金を遣った結果、残念ながら私は妊娠しませんでした。これが「夢を買った値段」だとしても、当時30代だった私たち夫婦にはあまりにも高額で、支払う時は若干手が震えました(笑)。

 大変な不妊治療を経た先に待っている夢。私のこの経験談が、これから夢を買われる方々のファイナンス・プランニングのお役に立てたら嬉しいなと思います。今まさに不妊治療を頑張られている方、これから頑張るという方々の治療がうまくいきますように。

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