ユーモアのセンスに見る、日本とアメリカの違い

自虐ネタはうけないアメリカ

 こんにちは、ランサムはなです。私が住む米テキサス州も遅ればせながらようやく秋らしくなってきましたが、日本の皆様はお変わりありませんか。

 先日、私はコロナ禍になって以来、実に2年7か月ぶりに飛行機に乗り、ロサンゼルスへ出張してきました。ロサンゼルスで開催されたアメリカ翻訳者協会の総会に出席するためでした。

 様々な会議や講演の中で特に印象に残ったのは、日本から特別講演のために駆けつけてくださったカナダ人の落語家、桂三輝(サンシャイン)さんのお話と落語です。「寿限無」などの日本の古典落語の英語版をアメリカで拝聴し、日本とアメリカはユーモアのセンスがかなり違うことに改めて気づかされました。  日本には「普通はこう(あるべき)」などの一定の期待値というか、「常識」「普通」という枠組みがあり、その範疇を逸脱すると、その「意外性」に対して笑いが生まれるように思います。「寿限無」も名前が普通よりも長いというところから生まれる笑いですよね。その他、日本では男性と女性の違いを強く意識させられるジョークや自虐ネタも好まれる傾向があるように思います。

 自虐ネタと言えば、以前にアメリカの大学で日本語を教えていたとき、日本でウケた自虐ネタをクラスで披露したところ、アメリカ人の学生が目のやり場に困る、と言った表情で下を向いてしまったことがありました。日本語の長音の発音の違いについて教えるために、「主人」と「囚人」を例に出し、私は「うちの主人は自分を囚人だと思ってるかも」と冗談を言いました。しかし、笑うのは私に対して失礼だと思われたらしく、教室内がシーンとしてしまったのです。非常にバツが悪い経験をして、「海外で笑いを取るのは本当に難しいなあ」と痛感しました。

 一方、アメリカのユーモアには様々な種類があります。政治や民族間の違いをネタにしたジョークなどは、国の事情や文化背景をよく理解していないと面白さがわからなかったり、風刺や皮肉も多いので、他国から来たばかりの人には少し難解かもしれません。私自身、アメリカのジョークを理解できるようになるまでに、かなり時間がかかりました(今でもわからないものもあります、汗)。

 どの国の笑いも文化的な要素が強く、直訳してすんなり受け入れられるものは全体的に見てもそれほど多くないと思います。それだけに、そのような文化の違いの狭間の中で日本の落語を世界に広めようとしている桂三輝さんの活動には、本当に頭が下がる思いでした。

大変なことが起きたときに、ジョークを言うアメリカ人

 「アメリカのユーモア」と一口に言っても多種多様ですが、特色のひとつと言えるのが、緊張をほぐす目的や困難な状況に陥ったときにジョークを言うアメリカ人が多いことでしょう。

 身近な例を挙げると、先日出張した際にサウスウエスト航空という格安航空会社を利用したときのことです。この航空会社では「乗客の笑いを取ること」が社是になっていると言われるほど(本当か否かは知りませんが)、乗客を笑わせることに長けている客室乗務員が大勢います。今回の私が乗った飛行機でも、着陸時の衝撃で飛行機が大きく揺れたときに、「It wasn’t crews’ fault. It was asphalt(クルーのせいじゃない。アスファルトのせいだ)」とアナウンスをして乗客をドッと笑わせ、リラックスさせていました(過失を意味する「fault(フォルト)」と「アスファルト」の「-phalt」の部分が韻を踏んでいるから面白い)。飛行機を降りる時、乗客の誰もが笑顔だった様子が印象的でした。

 不安や心配なことが起きたときにジョークを言って緊張を和らげようとする習慣は、日本ではほとんどなかったように記憶しています。誰もが不安を感じている状況や緊迫している時に笑いを取ろうとすると、「不謹慎」だと世間のお叱りを受けそうです。誠実なイメージが求められる日本の航空会社に慣れている人の目には、サウスウエスト航空の対応は「軽い」「ふざけている」「チャラチャラしている」と映るかもしれません。

辛い時こそ笑顔を作る重要性

 私もアメリカに来た当初は、シリアスな状況になるほどジョークを連発するアメリカ人の感覚がわかりませんでしたが、こちらでの生活が長くなるにつれて、状況を和ませる笑いの重要性がわかってきました。

 「泣き面に蜂」という言葉がありますが、深刻な状況で眉根をひそめていても、負の連鎖が進むばかりで状態が改善しないことの方が多いものです。どうせなら泣くよりも笑い飛ばす方が、心にゆとりが生まれて、思いがけない解決策が見えてくる気がします。

 がんにかかった人が、コメディを毎日見て大笑いすることでがんを治したという「笑いによるがん治療」の話を聞いたことがありますが、笑いには人生の流れを好転させてくれる効能や効果があるという科学的なリサーチもされているようです。ひょっとすると笑いは、強運を引き寄せるための最高の薬なのかもしれません。今では辛いときほど笑顔を作ろうとか、笑っている方が困難を乗り切りやすいと思うようになりました。アメリカ人特有の楽観的な開拓者精神が私にも身についてきたのかもしれません。

ランサムはなのワンポイント英語レッスン

笑いを表す英語は形容詞が多いが、日本語は動詞を使った表現が多い
英語では笑いに関する表現として「funny」「hilarious」「fun」など形容詞が多いですが、日本語では「ツボる」「ウケる」「笑える」など動詞を使う表現が多いです。動詞の訳が形容詞になるのは興味深く、日本語を学んでいる人に「ウケる」の意味は「funny」だと説明すると、不思議な顔をされることが多いです。また、日本では笑うときに口に手を当てる人がいますが、アメリカでは大きく口を開けて笑っても行儀が悪いとは見なされないため、失笑を隠そうとするのでない限り、口に手を当てる人はいません。

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