私が選ぶ、1本の映画 #02

どんな状況でも自分の信念を貫く

 1本の映画が、何かに迷っている自分の背中を押してくれたり、気づきを与えてくれることがあります。このコーナーでは、様々な人生を歩む素敵な女性たちに「心に残った映画」を1本選んで紹介していただきます。

 今回ご登場いただくのは、ニューヨークを拠点に音楽家として活躍されているラーセンみどりさん。作曲家、ピアニスト、和太鼓奏者として和と西洋を融合した世界観を創作し、演奏活動をされています。

 みどりさんは、「自分とつながること」をテーマに、本当はやりたいことがあるけれど挑戦をためらっている人や、自己表現をするのにもうひとつ勇気が出ない人たちへ「挑戦する勇気を与えたい。かかわる人々が元気になるような存在でありたい」という気持ちで活動を続けていると言います。現在は、ファースト・アルバムを制作中。自身のルーツと「自分探し」の体験を通して、祖先の人生に思いを馳せながら自身の生きる目的を探す作業を続けているそうです。そんなみどりさんがお勧めする1本は、この映画です。

ギレルモ・デル・トロ監督『パンズ・ラビリンス』

 『パンズ・ラビリンス(Pan’s Labyrinth)』は、内戦直後のスパインで、ある少女が現実と地底の世界へつながる迷宮を行き来しながら、二つの世界で起こる試練を乗り越えていく冒険ファンタジーです。

 この映画では、「どんな状況でも自分の信念を貫く」とか、「自分を信じる」ということに、とても心を打たれました。ちょうど、この映画を見た頃は自分が揺らぐ時期だったので、「私は私を信じて行動すれば良いのだな」と、強く感じました。私はファンタジーが好きなのですが、その理由は「ファンタジーには生きる目的や人生の大事なことを考えさせられるメッセージが凝縮されているから」なんです。いつどこから、どんな試練がやってくるか分からない世界はドキドキするし、どんな試練にも果敢に立ち向かう主人公オフィリアの姿にすごく感動します。

 この映画では、主人公である10歳の女の子(オフィリア)が、母親を力強く支え、赤ん坊の弟を悪の手から守ろうとします。途中、彼女は誘惑に目が眩んで間違いを犯す場面もあるのですが、それを見ながら私は「私だったら絶対そんな間違いはしない! 危険を回避するためのルールはどんな時でも守る!」と、フラストレーションにも似た気持ちでハラハラしながら見ていました。けれど映画を見終わった後に振り返ると、「自分がぶれている時は、何が自分にとってルール違反なのかさえも判断できない状態だよなー」って思ったんです。そして、そんなオフィリアもまた芯の強さを取り戻し、映画の最後のシーンで極めて難しい選択を迫られても、まったく迷わずに決断します。

 私はこの少女から勇気をもらいました。そして、人間は誰にでも芯があって、そことつながったり、時には見失ったりしながら、それでも基本はつながろう、つながろうと願いながら生きていくのだな、と感じました。ぶれそうになったときに、おすすめの1本です。

Midori Profile
今回の映画の紹介者、NY在住のラーセンみどりさん

紹介者:ラーセンみどりさんのプロフィール

ニューヨーク在住の音楽家。アメリカの大学に留学中に音楽に目覚めた遅咲き音楽家。大学院で博士号(Ph.D. in Piano Performance)を取得。20代と30代前半はクラシックピアノに明け暮れたものの、30代半ばで「自分の才能を発揮できていない」と気づき、出産と育児とも重なって8年ほど音楽から遠ざかる。41歳の時に、「作曲家になろう!」と決心。心機一転、作曲家として勉強し、活動を開始。宮沢賢治の「雪渡り」に合わせた音楽を篠笛、ピアノ、太鼓の編成で作曲し、初演で好評を博す。現在はニューヨークのアジア系芸術家をサポートする機関「エイジアン・アメリカン・アーツ・アライアンス」のアーティスト・イン・レジデンスとして創作活動を行なっている。また、長い留学生活で培った英語勉強法のノウハウを活かして、留学/英語コーチングも行なっている。

https://linktr.ee/midorilarsen

Pan’s Labyrinth (El laberinto del fauno)

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