心地良い上質な暮らしを楽しみながら

自分らしく生きるキャリアを築く

 ブランド・コンサルタントの花園真理子さんは、企業や商品、サービスの魅力を引き出すスペシャリスト。経験に裏打ちされた手腕と持ち前のセンスの良さで、多くの顧客から信頼を寄せられています。そんな花園さんは、元ファッション・デザイナー。ご自身のキャリアをどのように活かし、今のキャリアを築かれたのでしょうか? お仕事のことや日々の生活の中で大切にされていることなど、いろんなお話を伺いました。

ファッション・デザイナーからの転職

編集部:様々なライフスタイル・ブランドのプロデュースやコンサルティングをされていますが、最初のお仕事はファッション・デザイナーだったそうですね。子供の頃からおしゃれが好きだったのですか?

 はい、おしゃれは好きで、中学生の頃から母のミシンを使ってバッグや服を作っていました。自分だけのオリジナルが欲しくて。母が洋裁好きだったことも影響していると思います。高校生になると、制服を勝手に自分でリメイクしたり、ファッション誌をみたり。DCブランドに憧れた世代です。

 鹿児島の高校を卒業後、福岡の短大被服科デザインコースに通っていましたが、当時のアルバイト代のほとんどがファッションに消えていました。デザインコースを卒業後、東京へ。平成のスタートと同時に、東京暮らしとファッション・デザイナー人生がスタートしました。

編集部:ファッション業界に入って、キャリアを積むために日々努力していた頃、最も苦労されたことは何ですか? 

 言われたことを素直にするというよりも、新しい提案をするタイプでしたので、若い頃は生意気だったと思います。でも、そのせいか新しい企画に抜擢される機会も多かったです。大変だったこともあったと思うのですが、そういうことはほとんど覚えていないんです(笑)。

編集部:苦労されたことは覚えていないとはポジティブですね(笑)。では、ファッション・デザイナーをしていた頃、最も楽しかったことは何ですか?

 楽しかったことは、たくさんありましたね。28歳の時に、フランスのCHEVIGNON GIRL(日本のライセンス)のチーフデザイナーに抜擢されたのですが、当時の日本はデニムブームで、たくさん商品が売れました。多くのファッション誌や業界新聞で取り上げて頂いたり、パリで世界中から集まったデザイナーたちとミーティングをしたり、展示会やファッション・ショーも経験しました。

 その後、その会社に自らプレゼンして、オリジナル・ブランド『A mon avis(アモナヴィー)』を立ち上げ、東京・表参道にファッションとカフェレストランを併設した路面店を建ていただきました。ブランド名やコンセプトをはじめ、お店の内装やスタッフの面接、販売マニュアルまで自分で作りました。フランスの展示会へも何度か出展し、世界各地のセレクトショップで販売していました。当時は日本の企業ブランドがパリの展示会へ出展するのは珍しく、業界新聞や経済誌にも大きく取材していただきました。

 でも、一番嬉しかったことは、店舗にいらしたお客様が、「ここに来るのがとても楽しみ!」と言って下さったことです。当時はたくさんのタレントや女優さんもお買い物に来てくださったり、ニューヨーク在住のコレクション・デザイナーが来店された際に「日本で一番好きな店」だと言っていたと後から聞き感激しました。

編集部:チーフ・デザイナーとしてキャリアも積み、仕事も楽しんでいたのに、なぜ転職しようと思ったのですか?

 ブランドを立ち上げた当初の企業が、社長交代によって全てのブランドビジネスを廃止したのです。私が立ち上げたブランドだけは残すことになったのですが、別の企業にブランド譲渡をすることを社長に提案し、いろんな企業のトップにお会いして、タイミングや条件が合う企業へスタッフ全員と移ることになりました。しばらくはブランド・プロデューサーとして務めましたが、デザイナーの仕事ではなく、管理職の仕事をすることになって……。そんな折、タイミング良くヘッドハンティング会社から、「日本上陸するフランスのブランドでデザイナーを募集している」と連絡があったのです。物作りがしたかったので、自分で立ち上げたブランドで愛着はありましたが、『ZADIG & VOLTAIRE(ザディグ エ ヴォルテール)』に転職しました。

 転職後、フランスでのミーティングに初めて参加して自己紹介をした際、フランス人の企画スタッフに「A mon avis、知ってる!」と言われて、フランスにも日本の小さなブランドを知っている人がいたことにご縁を感じました。

編集部:企業デザイナーから独立をされたのはなぜですか?

 最後の転職後、市販の履歴書の経歴欄がいっぱいになってしまったので、30代半ばで独立しました(苦笑)。当時は今とは違って、会社に長く勤めるのが優秀な人というイメージがありましたが、デザイナーとしては経歴が豊富な方が役立てるし、いろいろな仕事を同時に出来る方が自分に合っているとポジティブに考えました。

編集部:独立後はすぐに今のスタイルでお仕事を始められたのでしょうか?

 独立後、すぐにお声がけ頂いたのは、ファッションの専門学校の講師の仕事でした。『ファッションの歴史』と『ブランドの立ち上げ方(ブランディング)』の授業を数年、受け持ちました。その他に、イタリアのレディスブランドのチーフデザイナー、アパレルブランドの立ち上げや企画なども手掛け、映画『SATC』のファッション・トークイベントの開催、フランスの靴のブランドの広報、書籍出版、ラグジュアリー・ブランドのソーシャルメディア・イベントの企画などデザイナー以外の仕事も徐々に増えてきました。それに伴って顧問先も広がり、ファッション業界以外からのお仕事も手掛けるようになりました。

ランディング・プロデュースという仕事について

編集部:そしてデザイナーから、ブランディング・プロデュース業へと仕事の幅を広げられたのですね。ブランディング・プロデュースとは、どんな仕事なのでしょうか?

 「ブランディング」という言葉は、今ではご飯やお味噌汁と同じくらい、どの業界でも当たり前に使われるようになりましたが、その使われ方は曖昧で幅広いなと感じています。私が考えるブランディングとは、「ブランドのブレない軸を決めること」。ブランディング・プロデュースは、その軸をブラさずにトータルで演出することです。

 たとえば、企業において最初にブランディングがしっかり構築できると、迷いや意見の相違が出たときの答えが明確に出せるのです。私は「ブランディングは法律と同じだと考えてください」とお伝えしています。最初にしっかりと考えた法律、つまりブランディングが出来ていれば、それが正解を導くので、偉い人の意見が全て正しいとはなりません。もちろん時代と共に変化を柔軟にとらえて組み込むことも大切なことです。

編集部:たとえば「女性もセルフ・ブランディングをしましょう」とか、「自分らしいライフスタイルを実現しましょう」という提案をよく目にしますが、自分をブランディングといっても、どうしていいかわからない人がほとんどだと思います。女性が自分を「ブランディングする大切さ」や、「自分らしいライフスタイルを実現することの意味」などをアドバイスいただけますか?

 ご自身のブランディングをされるときには、まずは理想の自分、なりたい自分をイメージすることから始めると良いと思います。イメージが湧かないならば、誰かのマネから初めても良いかもしれません。ただし、「みんながやっているから」、「流行っているから」と流されることなく、「自分が本当に好きなことってなんだろう」と立ち止まって考えるのもおすすめです。とはいえ、「自分らしさ」に強く縛られるのも良くありません。個性を出さなきゃと頑張るよりも、今の時代は肩の力を抜いて、自分にとっての「心地良い選択」をしてみると良いと思います。

編集部:会社員としてクリエイティブな仕事をすることと、独立してひとりでクリエイティブな仕事をすることには、それぞれ長所と短所があると思いますが、独立してよかったと思うのは、どんなことですか?

 長所は、何を仕事にしても良いこと、好きなペース配分で時間を使えること、満員電車に乗らなくて良いこと。短所は、自分ひとりで考えて、全てが自己責任であるということ。でも、これは自分自身を鼓舞することでもあります。

心地よい上質なライフスタイルがテーマの展示会を開催

編集部:独自のライフスタイル総合展示会『クリエーション・アムール』。ファッションから美容、雑貨、ヘルシーフード、家電など多岐にわたるカテゴリーの中から、花園さんがセレクトした質の高いブランドを紹介しているユニークな展示会ですが、そもそも展示会を始めようと思ったのは何故ですか?

 シンプルに「こういう展示会があったら良いな」という私の理想を形にしました。長くファッション業界にいたので、「他の業界の展示会も見てみたいなあ」と思っていたことや、「展示会で見て、すぐにその場で買えたらいいな」、「たくさんあっても選べないし忘れてしまうので、絞り込んだ良い物だけを見たいな」、「都心の落ち着いた空間だったら」などと、顧問先の企業が単独で展示会を開催するよりも、合同展にしたほうが効率やコスト的に良いということから始めました。

編集部:『クリエーション・アムール』では、どのような視点で紹介するブランドを決めているのでしょうか? 

 今の時代に求められる「心地良い上質」を感じられるか? 愛を持ってブランド作りをされているか? ブランドビジネスとして成り立つか?という、この3点とブランドのリーダーやスタッフさんが、「そのブランドを好きで、大切に扱っているか?」も見ています。

編集部:展示会を定期的に継続開催するのは大変なことだと思いますが、これを何年も続けていく秘訣はなんですか?

 「目標を立てる」、「ルーティン化」、そして「毎回少しずつのステップアップ」だと思います。始めるときに「どんなことがあっても最低10回は続けよう」と心に決めていました。私はファッション・デザイナー時代から、春夏・秋冬で展示会を開催することが身に染みついていたため、展示会の開催日から逆算してスケジュールを立てることでルーティン化できました。ルーティンだけだと飽きてしまうので、展示会自体をひとつのブランドとして考えて、毎回違う企画を加えたり、ブラッシュアップをしています。

編集部:いつもとても楽しんでお仕事をしているように見えますが、花園さんにとって仕事とは何ですか?

 仕事は楽しみとやりがいを与えてくれる、と思います。好きな仕事は、時間や損得勘定なく頑張れますし、続けているうちに気づいたら成果に繋がります。仕事を通して出会った方々から受けた感動や、助けてもらったことへの感謝も、私が仕事を楽しむモチベーションになっていると思います。

編集部:この企画は「ミライを創る情熱」というタイトルがついています。花園さんにとって「情熱」とはどういうものでしょうか? また、ご自身が「情熱」を傾けていることは何ですか? 

 実は最近、バレエを習い始めたのですが、50代になって初めて「楽しい!」と思える運動に出会いました。レッスンを続けるうちに、少しずつ身体が柔らかくなり、出来る動作が増えるので、何歳からでも成長できる喜びを感じます。

 年を重ねるほど、新しいことを始めることに臆病になる人も多いですが、リアルな経験による感動ほど人の心を豊かにしてくれるものはないと思います。新しいことをするには、必ず緊張感と少しの勇気、そして初心の謙虚さが必要ですから、私は毎年10個、新しいことをすると決めています。私にとっての情熱は、初心を持って「新しい自分」を始めることです。もちろん、「心地良い選択か?」を大切にしながら。

花園真理子さん プロフィール

ブランド・コンサルタント。ライフスタイル総合展示会『CREATION.AMOUR』主催。
フランスのライセンスブランドのチーフデザイナー、アパレルブランド&カフェのプロデュースなどファッション・デザイナー&プロデューサー歴20年を経て2008年に独立。ゼロからのブランドプロデュースや企画デザイン、海外および国内の展示会の出展やバイイング、 PRマーケティングなど、ファッション、ビューティー、ヘルシーフード、 インテリアなどライフスタイル全般の質にこだわったコンサルティングと、総合的かつ実践的なブランド・プロデュースに定評がある。

公式サイトhttp://parfaitfraise.com/

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