爆笑!はじめての日帰り訪問

我が家を気に入ってくれるかな?

 太郎くんが初めて我が家へ日帰りで遊びに来る日がやってきました(これまでのお話はこちら)。

「土曜日の午前中に児童養護施設へお迎えに行き、家で一緒に過ごし、夕食とお風呂を済ませてから夕方に施設へ帰る」という1日です。日帰りの訪問日は2回。私たち夫婦と太郎くんとの交流の内容などは、児童相談所の担当職員が中心となって計画を立ててくださいました。

 私は数日前から、初めて児童養護施設で私と夫と太郎くんとの三者交流をした時と同様に、「大丈夫かな~? 泣かないかな~?」等と心配をしながらも、その日が来るのをワクワクしていました。

施設にとっても大きな一歩

 児童養護施設に到着して、太郎くんのお迎えの旨を伝えると、最初に対応してくださった職員のほか、太郎くんをお部屋から連れてきた職員、事務室にいた複数の職員など5〜6人の職員が次々と見送りに集まってきました。私はその光景を見て、「太郎くんが初めて我が家へお出かけするのは、もしかして、施設にとっても一大イベントなのかもしれないな」と思いました。

 大勢の職員に見送られながら、児童養護施設を出発。我が家と児童養護施設は、車で10分くらいの距離でしたので、すぐに我が家の駐車場に到着しました。

 当時、私たち夫婦はエレベーター付きの集合住宅に住んでいました。先日の自動販売機の件もあったので、私は、「もしかすると太郎くんは、エレベーターも珍しがるかも」と思い、エレベーター内で太郎くんの様子を少し注意して見てみようと密かに考えていました、

 エレベーターの前に着き、ボタンを押して開いたドアから、私と夫はエレベーターの中に入りました。太郎くんも同じように入り、我が家がある階の数字のボタンを押すと、エレベーターが動き出しました。太郎くんを見ると、何だか状況が分かっていない様子です。でも、だからといって怖がっているようにも見えません。私は、「次にエレベーターに乗る時には、太郎くんにボタンを押させたり、遊び感覚でいってみよう」と思いました。

おもちゃがない家

 その日、私たちは午前中は家の中で遊び、午後は公園へ遊びに行く計画でいました。

午前中はまず、太郎くんと一緒にテレビを見ていました。子供向けの番組が終わると、太郎くんがキョロキョロ辺りを見渡して、こう言いました。

このおうち、おもちゃが何もない……

私は「言われてみればそうだなあ」と、そういう準備をしていなかったことを反省しつつ、数年前に夫が私にプレゼントしてくれた、スペースシャトルのおもちゃがあることを思い出しました。家にある唯一のおもちゃを「これしかないけど、これでいい……?」と手渡すと、太郎くんは喜んで、しばらくそのおもちゃで遊んでいました。

私と夫は、太郎くんを我が家に迎えるにあたって、以前から「買い物リスト」を作り、必要なものを自分たちなりに準備してきたつもりでしたが、リストには「おもちゃ」が入っていなかったのです。子供と暮らすということは、日々気づきの連続だなと実感しました。

新しい体験から学ぶこと

 昼食後は、近所にある公園で遊ぶために、3人で家を出ました。エレベーターの前に来て、私は太郎くんにエレベーターを操作させてみたいことを思い出し、彼に声をかけました。

「太郎くん、またエレベーターに乗るよ。私が教えるから、エレベーターの操作をしてみない?」
太郎「……。」

太郎くんは、私の言っていることが理解できていない様子でした。でも私は、これは児童養護施設ではなかなか経験できないことかもしれないと思ったので、押してほしいボタンを指しながら、太郎くんに操作をしてもらいました。エレベーターの中の太郎くんは、「へえー、こういうものがあるんだ」といった表情を見せていました。

 近所の公園に到着。ブランコにシーソー、滑り台に砂場など、たくさんの遊具がある広い公園で、太郎くんはとにかく遊びに、遊びまくっていました。私も一緒に遊びましたが、途中から太郎くんのパワーについていくことが出来ず、夫に任せて見学(失笑)。そのうちに夕食の支度をする時間になったので、私は一足先に家に戻ることになりました。

 その帰り道、「自分だけで行動できないことって大変だなあ」と思いながら、やっとひとりになれる時間を確保できたような気がして、少しだけホッとしました。自分のふとした感情から、「家族が増えれば、おのずと生活パターンは変わる」ということを実感していました。

大爆笑のお風呂タイム

 夕食前に夫と太郎くんが帰宅。夫から、太郎くんがなかなか公園を去りたがらなかったので、「太郎くんを引きずって帰ってきた」と聞き、それほど楽しんでくれたのだと嬉しく思いました。私も子どもの頃には自宅近くに大きな公園があり、そこで遊んでいるときは、帰宅時間になる度に、まだまだ遊び足りないと感じていたことを思い出しました。

 児童養護施設の職員から太郎くんの食べ物の好き嫌いを聞いていたので、夕食には、太郎くんの好きなものを用意しました。たくさん食べて欲しいなと思っていましたが、遠慮をしているのか、あまりたくさんは食べてくれませんでした。はじめての手料理をあまり食べなかったことは少し心配でしたが、「子どもはこんなものなのかも知れないな」とも思いました。最初から何でもわかるはずありませんから(苦笑)。

夕食後の休憩を少し取って、その次はお風呂です。

「太郎くん、男同士で一緒にお風呂に入ろう!」
太郎「うん!」

そう言って、夫は入浴の準備を始め、その夫の横で私は太郎くんの入浴の準備を手伝っていました。すると何も前触れもなく突然、太郎くんが大きな声でこう言いました。

太郎「大きい~!!!」

私は何事かと思って太郎くんを見ると、太郎くんの目線は夫の男性器の位置とちょうど同じ高さにありました(笑)。私と夫は、太郎くんのこの発言に大笑い。これでもかと言うほど笑い続け、しばらくは笑いが止まりませんでした。こんなに笑ったことは後にも先にもないかもしれません。

その後、夫と太郎くんはお風呂に入り、何やら楽しんでいる様子でした。私は夕食の片づけをしながら、また先ほどの太郎くんの発言を思い出して、ひとりで笑い続けていました(笑)。

はじめての日帰り訪問体験を終えて

 そんな日帰り訪問体験を終えた太郎くんを車で児童養護施設へ送り届け、迎えてくださった職員に、その日の内容を報告しました。

 その中で、職員から「初めておうちで彼を迎えて、何か困ったこと等はありませんでしたか?」と聞かれたので、私は家におもちゃを用意していなかったことを話しました。

「正直、私はおもちゃを事前に準備することは思いつきませんでした。ですから家の中では、太郎くんはつまらなかったと思います。」
職員「そうでしたか。おもちゃに関しましては、太郎くんが個人で所有しているものがありますので、次回からは太郎くんのおもちゃの中で本人が持っていきたいものを持たせるようにします。お2人と一緒に生活を始める引っ越しの際には、本人の荷物をすべて持参します。どの子どもたちもそうですが、おもちゃはたくさんありますので、わざわざ新しく買う必要はないですよ。」

私はこれを聞いて、慣れ親しんだおもちゃを持参してもらえるのが一番だと安心し、「買い物リストから、おもちゃを消さないと」と思いました。そして、次の交流日のスケジュールを確認し、児童養護施設を後にしました。

帰宅途中、夫と二人で太郎くんの例の発言の話をしておおいに笑い合いました。子どもが家にいることで生活の中に笑いが生まれ、家全体の雰囲気が明るくなることを経験させてもらった素晴らしい1日になりました。

 「日帰り交流」は2回用意されていたので、後日、再び太郎くんが我が家に遊びに来てくれました。その際は、太郎くん用の食器や寝具等、生活用品の買い物に一緒に行ったり、近所をお散歩したりして過ごしました。

 次回は、太郎くんが我が家にて初めてのお泊りに来たときの話です。我が家は再び笑いに包まれるでしょうか? お楽しみに~!

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