とうとう児童相談所から電話が!

 いつの日か我が家に子どもが来ることを夢見ながら日々の生活を送っていると、里親登録書が届いてから1カ月程経ったある日、電話が鳴りました。「誰だろう?」と思いながら携帯電話を見ると、児童相談所の担当者からでした(前回までのお話はこちら)。

担当者「特別養子縁組の件で、紹介したいお子さんがいましてね……。それについて、一度お会いしてお話をしたいので、次の土曜日のご都合はいかがでしょうか?」
「大丈夫です!」

電話を切ってから、土曜日が待ち遠しくてたまらなかったです!

 そして、ついに土曜日。夫と一緒に児童相談所へ出向き、担当者に部屋を通されると、担当者は持っていた大量の書類をドサッ!と机に置きました。私はその様子にびっくりし、「特別養子縁組で紹介したい子どもの話をするためには、相当な量の書類が必要なんだ……」と感じずにはいられませんでした。その後、私はどのような内容の話になるのか全く見当もつかず、担当者が持参した大量の書類を小分けしている様子をとにかくジーっと見つめていました。

担当者「あのですね……、紹介したいお子さんと言うのは……、現在4歳の男の子で、学年で言いますと年中、児童養護施設にて生活をしています……。」

その子には名前があります

 私は、とにかく無我夢中で話に聞き入り、途中、断りを入れて、担当者の話を夫に英語で説明をさせていただきました。内容は、特別養子縁組に出されることとなった理由等を含む、そのお子さんについての詳細、お子さんの実親とその他の血縁関係者についての詳細、どのようにして児童相談所がお子さんと関わるようになったのか等で、1時間以上かけて様々なことを説明してくださいました。

 その中で、お子さんの実親がお子さんを特別養子縁組に出すことに同意している旨、また、実親としてお子さんの親権を持つが、実親の判断を仰ぐ必要な状況に直面した際、その時点でのお子さんの養育者が、実親の判断を待たずに実親代わりに、あらゆることにおいて判断することを許可する旨の実親の署名入り文書を見せていただきました。私はこの様な文書を見るのが初めてで、担当者がこれらの文書をその場で読む許可をくださり、「へぇ~、こういう文書が存在するんだ~」と思いながら、ひと通り読ませていただきました。

 そして、このような説明もありました。

担当者「あとですね……、特別養子縁組となりますと、法的手続きを経て戸籍上の子どもとなるため、特に新生児や乳児の場合はお子さんのお名前を養親さんが決めるということが多いのですが……。今回のケースはお子さんの年齢がある程度いっているということもありまして、お子さんも本人の名前に慣れていますし、お2人はご希望のお名前があるかもしれませんが、名前を変更することはかなり難しい状況だと思います…。」

「そうですね、おっしゃっていることは十分に理解出来ます……。私たちは希望する子どもについては話し合いましたが、そう言われてみますと……、子どもの名前については考えたり、話し合ってはいませんでした(笑)。」

担当者「あ、そうだったんですね(笑)。それでは、お子さんのお名前がそのままでも問題なさそうで良かった。その子の名前は、太郎くんと言います。」

そして担当者さんは、私たちに太郎くんだけが写っている数枚の写真を見せてくれました。

私と夫「わぁ~!」

担当者「お子さんについて初めてお話する日に、子どもの写真をはじめに見せてしまいますとね、かわいい~!という気持ちが先走ってしまうことがありまして、こちらの作戦で写真は最後にお見せしました。」

しばらく写真を見ながら、担当者は継続して太郎くんの話をしてくださいました。‘

担当者「それでですね、実際に本人と会う日程についてですが……、当日は児童養護施設で生活している他の子どもたちも施設に居た方が良いので、今日の様に、次回も土曜日でいかがでしょうか?」

「大丈夫です!」

私たちは2週間後に、太郎くんが生活している児童養護施設で会うことを約束し、この日は児童相談所を後にしました。

これは、命をつなぐバトンなのか

 その夜、布団に入ってから、静まった環境の中で今一度、昼間に児童相談所にて2通の実親の署名入りの文書を読んだことが私の頭の中をよぎりました。

「実親さんは、どうしてもこの子を育てることが出来ないのか……。特別養子縁組に同意することで、親としてこの子に与えることの出来ない人生を他人、それも見ず知らずの人に託す……。その見ず知らずの他人が、私と夫……。」

 実子を手放さざるを得ない状況について、しばし考えてみました。

「おそらくそれが、親として我が子のために与えることが出来る最大限の愛なんだろうな……。でも、私は大人だからこの状況が理解出来ても、4~5歳の子どもが自分のこととして、自身が納得いくように理解出来るのかな?」 

 いや待てよ、と、さらに考えました。

「私は理解出来ている」と言ったものの、「実親、子ども、養親」という「登場人物の構図」みたいなうわべのことを理解出来ているだけであって、養親候補である私が知る由もない実親や子どもの内における心の葛藤をはじめとする本当に様々な背景は、絶対に一生かかっても全てを理解することは出来ないんだろうな……。産んだけど育てられない……、我が子を手放す……、きっと誰かがこの子を望んでいるはず……、いのちをつなぐバトン……。」

 ……と、私の頭の中に「私は子どもを選んでいるのか」と悩んだ時のように、実に様々なことが駆け巡り、「ひとの命」について、とても複雑な気持ちになりました。したたれ落ちる大粒の涙が止まらず、この夜も私はなかなか寝付くことが出来ませんでした。

 私は特別養子縁組に関わるようになってから、これまで自分が知らなかった世界について知るようになり、夜、布団に入り、それらについて考えさせられることがガゼン多くなりました。

 次の2週間が実に長く感じただけでなく、夫との会話はこれから会う太郎くんのことばかり。「早く会いたいなぁ~! でも、実際に会ってみて、何、この変なおじさんとおばさんは?!とか思われて、嫌われちゃうかな~(笑)?」

 次回は、「初対面(ドキドキ…)」のお話です。お楽しみに~!

前回までのお話はこちら

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