里親にふさわしいかを調べる家庭訪問

 里親として登録されるためには、研修を受けるだけでなく、児童相談所の職員による家庭訪問を受けなければなりません(前回までのお話はこちら)。家庭訪問の目的は、一言で言うと「里親候補者の生活の実態を確認する」こと。「申告された住所と実際に家のある場所が一致しているか」ということから始まり、子どもが安心で安全に生活できる場を提供する能力があるか、自宅の周辺や地域の環境はどのような感じかなど、実際に子どもが生活するにあたり適した環境かどうかを調査します。

 訪問時には聞き取り調査も行われ、希望する子どもの性別や年齢等の質問を受けました。これについては、事前に夫婦で話し合いを持つように児童相談所から指示があっため、私たち夫婦は何回かに分けて話しました。

:僕は新生児か、年齢がいっていても1歳で、女の子がいいなぁ~。
:ふーん。私は男の子でも女の子でも、年齢もさほど気にならないなぁ~。

そして数日後、

:でもさ、病気持ちとかで、定期的に専門病院に通わないといけないとなると、私たち共働きだし、仕事と家庭との両立ができるかな?
:そうだね。子どもが元気であることにこしたことはないけど、君が言ったこととかも考慮する必要があるね……。

などと、なんやかんやと話して、結局、夫の希望は「女の子で、年齢は若ければ若い子がいい」。私の希望は、「年齢と性別の希望はないが、しいて言うならば障害がなく、定期的に病院へ通う必要がある病気を持っていない子」に落ち着きました。当時(2012年)、私の勤務先では里親は育児に関する休暇の対象外でした(実親や里親に関係なく、養育をしている場合は、育児に関する休暇が対象となる勤務先も存在します)。

子どもは親を選べないのに、親は子どもを選ぶのか?

 その夜、布団に入ってから、静まった環境の中で今一度、先ほど夫と話したことが私の頭の中をよぎりました。

 「いや、待てよ。希望する子どもなんて言ったけれど、これって私が子どもを選んでいるってこと? お店に行って、そこに並んでいる商品を見て、これだっ!って買う商品を決めるように?!」
 布団の中の私は自分の言葉に愕然としました。そして頭の中でさらに言葉がグルグルと回り出しました。

 「特別養子縁組は、子どもを選ぶってこと? はぁ〜? こ・ど・も・を・え・ら・ぶ? えぇ~、何だ、それ?!」 

 以前に「子どもは親を選べない、親は子どもを選べない」と聞いたことも思い出しました。もし私自身が特別養子縁組に出された子どもだとしたら、どう思うでしょう。里親候補が現れて、「あぁ、この子は〇〇だから、我が家では無理ね~。でも、あの子だったら△△だからいいよね」などと言っているのを聞いたら、どう思うでしょう? 

 「残酷過ぎる。嘘だ、そんなの絶対にあってはいけない! どうして今まで気づかなかったんだろう? もしかして特別養子縁組って本当はむごいものなの?」

 ……と、実に様々なことが頭の中を駆け巡り、「ひとの命」について、これまで自分が生きてきた中で感じたことがないくらい複雑な気持ちになりました。したたれ落ちる大粒の涙が止まらず、この夜の私はなかなか寝付くことができませんでした。

聞き取り調査の結果は?!

 そして、児童相談所の担当者による家庭訪問の日がやってきました。

担当者:希望するお子さんの要件について、ご夫婦でお話し合いを持たれましたでしょうか?
:はい。(夫と私のそれぞれの希望を伝える)
担当者:あのですね、お子さんを希望する里親の数が非常に多く、特別養子縁組に出せるお子さんが非常に少ないのが実態でして……。正直申し上げまして、ご主人が希望されているようなお子さんの要件ですと、なかなかお子さんを紹介することが出来ない可能性が高く、数年待ちもあり得るかもしれません。
:そうなんですか…。

 そこで、担当者に断りを入れて、今、聞いたことを夫に英語で説明。その場で夫婦で話し合いを持った結果、夫は夫婦として私が希望している要件でいくことに同意し、その旨を担当者へ伝えました。

 家庭訪問から約3週間後、郵便受けを開けると、見慣れない1通の封筒が。手紙の中身について全く見当がつかず、恐る恐る開けてみると……。

里親登録通知書。里親の登録については下記の通り決定しましたので、通知いたします

 と、ありました。わぁ~、ついに! これを読んだ時は本当に嬉しくて、気分が宙を舞い、通知書を繰り返し読んでいる自分がいました。

 数カ月にわたる研修への参加と、それに続く家庭訪問を経て、希望する子どもの要件を夫婦として児童相談所側へ伝え、ついに待ちに待った里親に登録されました。

 一般的には妊娠後、胎児が妊婦のうちで成長する過程で、親、特に母親は子どもに対する愛情が増すと言われています。私は「どんな子が我が家に来るんだろう?」と考えることが時間と共に増していく中で、「これが妊婦が経験する、妊娠中に子どもに対する愛情が増すこと」に似ているのかな、と思ったりもしました。

 次回は、とうとう「紹介したいお子さんがいましてね……」です。お楽しみに~!

以下、補足情報を記載します。

●里親登録は、一度登録されると5年間有効で、その後も継続を希望する場合は、「登録更新研修」を受ける必要があります。基本的に都道府県単位で行いますが、政令指定都市または東京都特別区等では都道府県とは別に独自に行う自治体もあります。

●これまでに私が直接お話をしたことがある複数の特別養子縁組経験者の事例を基にまとめますと、民間の特別養子縁組あっせん団体等を通しての特別養子縁組は、新生児を迎えた夫婦が圧倒的に多い中、1歳くらいまでの子どもを迎えた事例がほぼ全員。児童相談所を通しての特別養子縁組の場合は、新生児、乳児、幼児、養育里親として養育中に特別養子縁組へ変更となった事例がほぼ同じくらいの割合でした。

●私が「子どもを選ぶ」について悩んだことが、全ての特別養子縁組のケースに当てはまることではありません。一例として、民間の特別養子縁組あっせん団体等を通して特別養子縁組するケースでは、望まない妊娠のため実母は妊娠していることを一人で抱え込み、かつ妊娠期間中、未受診のまま過ごすこともあります。最後の砦として、実母はあっせん団体等へ駆け込み、その時点でいつ生まれてもおかしくない状態と言うこともあります。そのため、あっせん団体等は即急で生まれてくる子どもの受け入れ先、すなわち生まれてくる子どもの全てを受け入れられる特別養子縁組を希望する夫婦とマッチングする必要があります。この場合、受け入れる子どもを「選ぶ」ことができないのが現状です。
前回までのお話はこちら

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