笑顔ひとつで出来ること

辛辣なことを言う人が増えたのは、長引くコロナ禍のせいかも

 こんにちは、板東汰美です。アメリカでのコロナ禍の生活も1年が経ちましたが、少しずつワクチンが出回り始め、経済回復の兆しも具体的にみえてきたように感じます。

 前回は「自身の市場価値」についてお話しましたが、昨年から続く高い失業率には大きな変化はなく、まだ景気が回復したわけではありません。なかには、この状況には関係なく大きなチャンスを掴んでいる人もいますが、多くの人たちがコロナ禍の不況で傾いてしまった企業やレストランなどの勤め先から解雇される可能性に今も怯えていたり、見えない先のことを心配しています。

 私の友人知人の中にも、コロナ禍で巡ってきた査定の際、パフォーマンスが良かったのに、この不況で昇給どころか下がってしまった人や、上司から「このご時世、安く働らいてくれる人財は余っているから、文句があるなら辞めてもいいんだよ」という心ないパワハラ発言をされた人などがいたり、悲しいことが増えました。コロナ禍で経済的に苦しいからなのか、他人に対する思いやりに欠ける発言や行動が目につきますが、きっとそれは誰もが経験したことがないパンデミックのせいなのかもしれません。

 でも、それでは誰も救われない。心が荒まないように生きていくには、どうしたらいいのでしょう?

笑顔になるには、努力が必要

 最近のアメリカは、ポリコレに敏感になっている風潮がありますが、特にパンデミック化では、女性も男性も「笑顔を増やす」ことを心がけることが大切な気がします。

 「女性が差別されている」という記事やニュースもよく見るのですが、もし男性の上司が笑顔を増やしたら、わたしたち女性はどう感じるでしょうか? 私はいつも身構える癖があるので、思わず「気持ち悪いなあ」、「何を企んでいるのだろう」などと思ってしまいそうですが(笑)、でもこの思い込みも差別ですよね。だから自分も気をつけなきゃと言い聞かせていますが、間違いなく笑顔の有無でギスギスした環境はかなり大きく変わると思うのです。

 今年になって私の尊敬する方が退職を迎えました。その人は笑顔がとても素敵な方でした。組織も異なる上に、何も知らない私にもいつも声をかけ、気遣ってくれました。今の職場に就いて間もない頃、毎日緊張の連続だった私は、その方の笑顔にとても癒されたものです。組織が異なるので、年に1回しか会えないのに何となく心待ちにしてしまうような人でした。

 ああいう方が同じ職場にいたら、その職場の雰囲気はきっと良いだろうなと思います。笑顔になるには、努力が必要。だからこそ、そういう努力をしている人たちが集まると、周りも活気づくのでしょう。

「自分に正直に生きること」と「自分勝手」の違い

 こんなことを書いている私ですが、笑顔の重要さに気づくまでに随分と時間がかかりました。

 以前、ある会社でオフィス・マネージャーとして勤務していたのですが、その頃は日々従業員と上司の板挟みでストレスもたまり、余裕がなくて、みんなと笑顔で接することが全然できませんでした。クビにこそならなかったけれど、今思うと私のオフィス内での評価はかなり低かったと思います。24時間アクセスのあったオフィスで毎日の残業に疲れ切っていたので、集中するために、部屋の電気を消してデスクライトのみをつけて仕事をするという暗い環境を作っていました。

 オフィスで近寄りがたい存在だったことは間違いありません。今それを見たら、「この人アブナイんじゃないか? 精神的に追い込まれているのでは?」と心配されるか、単にコワイと思います(笑)。今だったら、そんなもったいないことはしません。オフィス政治もなんのその、笑顔だって絶やさないと思います(笑)。でも、当時はそれで損をしていることに気づかなかったんです。「仕事さえしっかりやればいいじゃない、ほっといてよ」、「自分のやりたいようにやる」なんて思っていたんですよね。「周りがどう思おうと私のオフィスは暗くていいの、だって集中できるから」ということは、「自分に正直に生きる」こととイコールではないのに、そのときの私はその違いがわかりませんでした。

 周囲から誤解を招いて、扱いづらい人と思われる振る舞いを上司も含めて誰も認めないし、誰も得をしませんよね。「自分に正直に生きたい」という人は星の数ほどいますが、それは「体調を崩すまで無理をしてでも、やりたいことをやる」とか、「コミュニケーションを避けて一人を貫く」とか、「どうせ誰もわかってくれないから」と自暴自棄になることではなく、「そんな自分の状態にいち早く気づいて、ちゃんとケアをすること」だと思うんです。いっぱい寝るとか、美味しいもの食べるとか、友人と一緒によく笑うとか、風邪をひいたら暖かくして栄養とって休むとか何でもいいんです。そして、職場では笑顔。そうすると、気のせいか周りが優しくなったように感じることが多くなると思います。

 「自分に正直に生きる」とは「自分勝手」に振舞うことではありませんから、ときどき時間を作って、自分が無理をしていることや悩んでいることはないか、客観的にみて自身のケアを怠らないようにしたいものです。ケンカの仲裁やとばっちりを受けたり、私は対人関係で悩むことが多いのですが、振り回すだけの人からは意図的に距離を置くなどして自分を守るようにしています。だって私じゃなくてもいいんですから、そういう人は(笑)。  

 長引くコロナ禍で、経済的や精神的に苦しんでいる人が大勢いると思います。外出自粛下でひとり暮らしを続けている私も悩みは絶えません。でも、せめてみんなが笑顔でいる努力を続ければ、環境が少しは明るくなるかもしれませんから、私は、ひきつらない本当の、いや限りなく本当に近いであろう笑顔を心掛けてみようと思います。たとえ誰も見ていなくても(ひとり暮らしなので。笑)。

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