元夫は「働き者ではなかった」
こんにちは。国際離婚の痛手から立ち直りつつある、凛子です。私の元夫のダメ夫っぷりのおさらいは、こちらです。
ところで、みなさんは「働き者の成人男性」と聞いたら、どんな人を連想しますか?
毎日、まだ夜が明けないうちから起きて暑い日も寒い日も農業や漁業に精を出す生産者や職人さん、靴底がすり減るほど日々歩き回る営業マン、自らの命を危険にさらすこともある消防士や警察官、トンネル工事や高層ビルなど過酷な環境下で身体を張って働く人たち、長時間勤務のビジネスマンや教師や医療従事者など、「働き者」という表現が似合う成人男性は、世の中に大勢いらっしゃると思います。ざっくり言ってしまえば、世界の成人人口の大半は何らかの仕事を一生懸命している「働き者」であり、健康な成人男性なのに「積極的に働かない人」は明らかに少数派でしょう。
だから、出会ったばかりでトキメク相手を目の前にして、「この人は、もしかしたら働かない人かもしれない」という思いを抱きながら接するケースは少ないんじゃないかと思います。当時の自分の脇の甘さを庇護するわけではないですが、元夫トム(仮名)と出会った頃の私は、彼の仕事(自営業のグラフィック・デザイナー)の話をすべて鵜呑みにし、仕事は順調だということを文字通り、信じていました。
もちろん、私の知っている働く大人たちとは、トムの日々の行動や仕事に対する捉え方が少々、いや、かなり異なることには気づいていました。でも、モヤモヤする気持ちはあったのに、「きっと、これがアメリカ風なのだろう」とか、「ガツガツしたくないのね」などと、自分の迷いに蓋をするような結論をその都度がんばって出していたんだと思います。
今、こうして振り返るとNGサインは明らかに最初から出ていたので、そのサインをスルーした私がバカだったという話なんですが、当時の私は、「私が選んだ人が、そんなはずない!」という気持ちが先走っていました。40代突入を目前にした高齢初婚だったので結婚への焦りがあったし、「焦らず、じっくりと相手を選んで」なんていう余裕がなかったのです。
案の定、結婚後のトムは私という稼ぎ頭を得たことで安心したのか、みるみる仕事量が減っていき、それに比例するようにゲームに没頭する時間が増えていきました。そして、「この人は働き者ではない」という現実はあっという間に動かせないものに(驚!)。俗に言う「ヒモみたいな男」とご近所で噂されるような外見ではないけれど、内面はそんな感じというか(苦)。で、それだけでも相当な問題なのに、さらに災いしたのは「それなのに、やたらプライドが高い」という彼の性格でした。
なんでも相手のせいにしてしまう男
たいして働かないくせに、プライドが高い男ほど、厄介な人はいません。
結婚後にわかったことですが、もともとの仕事量が多くはなかったトムの場合、クライアントがひとつでも減ると収入に大きな影響が出るし、自営業とはいっても会社登記もしていないフリーランスで、蓄えもゼロ。通常、アメリカでは会社員を辞めてフリーランスになるには「2年間は生活していける蓄えを作ってから会社を辞めること」と言われますが、トムは貯金ゼロでフリーランスになってしまった強者でした。
しかも、デザイン会社を辞めた理由が、「自分の思い通りのデザインが通らないから」。
「お前は子供か?!」と言われてしまうようなワガママな理由で、貯金もないのに辞めてしまう大人に私はあまり会ったことがありませんが、トムと出会ったときには彼はすでに独立していたので、このような「彼の自分史からみるNGサイン」にも気付くのが遅れてしまったのです。
ゲームの時間が増えてきた彼に、「こうやって仕事を取ったらどうかな?」的にいろいろと助言したり、自分の知人を紹介したりしましたが、状況はまったく改善しませんでした。そこで、しばらくは私が担当している翻訳の仕事のプルーフ・リーディング(英語が正しいか確認する仕事)を振ったりしていたのですが、なんといってもトムは「根拠のない自信」に溢れる男です(笑)。まだ、たいして本格的な仕事もしていないのに、「君の仕事の手伝いは、僕がやるべき仕事じゃない。僕は僕にしかできない仕事をやるべきなんだ」とか訳のわからないことを言い出して、お手伝いですら、ちっとも身が入らないわけです。
その根拠のない高いプライドゆえに、「一般に募集をかけているような仕事に自分から連絡するのは、仕事ができない奴がすることだ」という意味不明な持論をかざしたり、「大きいプロジェクトじゃなければ、やる意味がない」と言ったり、学生のバイト代より低い収入の人が言うべきことじゃないことを、彼は懲りもせず、照れることもなく言い続けていました(苦)。
そんな訳で、運良く仕事の話が来ても最終的には決まらないことが多く、理由はいつも「相手の要求が現実的ではなかった」とか「相手の条件がバカげていたから断った」など、彼の言い訳はすべて相手のせい。営業ができないので友達以外からの仕事はほとんど取れないため、収入がほとんどないのに、周囲の人には「僕はプロだから、うんぬん」という話が普通にスラスラとできてしまう困った男だと分かった時の私のショック! このショックの振動具合が想像できる人がいるなら、友達になりたいのでメールください。(編集部注:お問い合わせメールをお使いください。編集部から著者へ転送します)
すべての項目に当てはまる人がここに!
「この人と結婚した私は、トンデモナイ間違いを犯したのではないか?」と悩み始めていた頃に、ふと目にとまったビジネス誌の記事がありました。見出しは、ずばり「無能な人」(笑)。恐ろしいまでに、はっきりと言い切った記事でした。ざっくり言うと、「この10項目に心当たりがある人は、職場で求められない」、つまりは「仕事ができない人とは、まさにこういう人です」という記事。で、その10項目とは……
1)内容よりも、長時間働けばいいと思っている
2)立場や役職に関係なく、なぜか上から目線
3)ミスを繰り返す
4)責任転嫁をする
5)詰めが甘い
6)自分の間違いを認めない
7)自分を過大評価している
8)自己判断で勝手に進めてしまう
9)傲慢
10)自分の働きに今の賃金が見合っていないと思っている
言うまでもなく、トムはこのすべてに該当していました(驚)。「やばいな、困ったな、どうしよう?!」とドキドキしていた私は、この記事を読んで、ある種の絶望感を感じたことを今でも鮮明に覚えています。もう40歳を超えているトムは、「誰だって頑張れば変われる」というような次元にはいないどころか、この項目を見て自分がひとつでも該当するとは思いもしないような人です。だから私は、「これから、この人を背負って生きていかないといけないのか?」という重責に息が詰まりそうになりました。結婚する前から気づいていた「モヤモヤ」に蓋をして、自分がそれを「うやむやに」してきたのがいけなかったと気づいても、後の祭りです。
この不均衡な夫婦関係を一体、どう解決すればいいのか? まず一時停止をさせたくても、日々の生活を止めることはできないし、家賃も食費も光熱費も払い続けなきゃならない。「うわー、どうしよう?!ここはアメリカなのに、外国人の私がアメリカ人の男を背負って生きていかなきゃいけないの?」とパニックになりかけた結婚2年目でした。
次回は、「この後、私はどんな展開に出たか?」です。お楽しみに。