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この映画を観ると、恋愛がしたくなる
9月に入りましたね。ロマンスの季節の到来(?)でしょうか。
「今夜、観たい映画Vol.2」としてご紹介する作品は、恋愛モードのスイッチをオンにしてくれる、リチャード・リンクレイター監督の1995年公開の『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』。
この作品は 後にリンクレイター監督の「Before Trilogy」と呼ばれるようになった3部作の第1作目としてご存知の方も多いかと思います。
Vol.2 『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』あらすじ
アメリカ人青年ジェシー(イーザン・ホーク)と、ソルボンヌ大学に通うセリーヌ(ジュリー・デルピー)は、欧州を横断するユーロトレインの車内で出会った瞬間から心が通い合うのを感じる。ウィーンで途中下車した二人は、それから14時間、街を歩きながら語り合う……そんな自然な会話の中から、彼らの人生観、価値観、そして心の奥の微妙な揺れ動きが見え隠れする。朝、別れの時間が迫ってきた……。だが、二人は「さよなら」が言えない。「半年後にここで会おう」。ついに本心を明かす二人。14時間を経て、恋人たちの距離がようやく重なった。
なぜ、主役が20代の恋愛映画を大人の女性にお勧めするのか?
先ほども触れたように、この「Before Trilogy」は三部作なのです。
今回ご紹介している『ビフォア・サンライズ』の内容もさることながら、続編となる第二部の『ビフォア・サンセット』(2005)は、9年後に30代になった二人を描き、第三部の『ビフォア・ミッドナイト』(2014)では、40代になった二人のロマンスの行方をリアルタイムで描いています。
そう、その年齢だった頃に、どこかで同じ感情を抱いた自分と重ね合うことが出来る恋愛映画なんですね。同時にこれからの自分の人生、そして恋愛が、いかに素晴らしいものであるかを身近に感じさせてくれるのです。
私の中ではお気に入りトップ3に入る映画かなぁ。あと、もうひとつオマケは、今も十分に素敵なのですが、当時のイーザンが美しい!ってのもあるかしらん(笑)?
『ビフォア・サンライズ』の魅力は、この3つ!
では本作の魅力に迫りましょう
大まかに言うとポイントは3つ。
まず、ひとつ目は20代なのに二人の会話がとっても知的なのが印象的。哲学チックでありながら、アートも絡み合っているあたりがお洒落なのです。印象に残る言葉はいくつもあるのですが、私の中で最も印象的だったのはセリーヌの台詞。
二人がクラブを出た後 石畳の路地にある椅子に座って話すシーンで、セリーヌはこう言います。
「もし神が存在するのなら、人の心の中じゃない。人と人との間のわずかな空間にいる。この世に魔法があるのなら、それは人が理解し合おうとする力のこと。たとえ理解できなくても構わないの。相手を思う心が大切」
そして、限られた時間枠の中いる二人、は何も言わず見つめ合うのです。
何度聞いても、このセリフは深い。パートナーを理解するだけではなく、人は孤独には生きていけないことを教えてくれます。他の人と理解し合い繋がることによって、初めて生きる喜びをシェア出来るのかもしれません。
他にも、手相を占う女性がセリーヌにいった言葉「You are 'STARDUST'!」の意味も楽しみに観てくださいね。
その後、二人は路地でジョージ・スーラ(1859-1891)の絵画展のポスターを見つけます。モノクロの「鉄道」と「乳母」と題された絵を見て、セリーヌは「人物が背景に溶け込む感じが好き。環境の方が人間より強いの。人間は移ろいやすいのよ。’Transitory'」と言うのです。
我々の生きている時間というのは、地球の年齢でいうとほんの瞬きのような僅かな時間なのかも知れないし、移ろいやすい人間関係への疑問や儚さを語っているのかも知れません。
ドナウ運河沿いにいた詩人が僕の詩があなた達の人生を彩ったら、ということで書く「MILKSHAKE」と言う題のポエムも素敵。後に公開される2作品においても、これらのセリフが劇中でかなり重要な意味を持って展開されて行くので必見です。
名所巡りのように美しいロケ地も必見
ふたつ目は、ウィーンという美しいロケ地。とても雰囲気のあるシーンの演出をしてくれています。
ブダペスト発パリ行きのユーロトレインの車内で出会う二人はウィーンで降り、そこからの14時間が始まります。レコード屋に立ち寄り視聴ブースでKath Bloomの’Come here'を聴く二人の距離にも注目! ぎこちない、でも惹かれ合って行く、たまらなくキュートなシーンです。こんな時期あったなぁ……。
博物館に向かい合ったマリア・テレージア公園を通り、私が劇中で一番好きな場所に。それは、二人が初めてキスを交わす黄昏の「プラーター遊園地」。ここにある大観覧車からはウィーン市内が見えます。ここに行けば、20代じゃなくても……ねぇ(笑)。
国立オペラ座やマリア・アム・ゲシュターデ教会、二人がそれぞれの友達に電話をかけるフリをするカフェ(このCafe Sperlという店は、この映画のお陰か今もオープンしているそう)や、赤ワインを呑みながら語り明かした市立公園、アルベルティーナ宮などなど、ハリウッド映画とは異なるヨーロピアンなロケーションは、まるで名所巡りの旅。私が大好きなシーンは、夜明けに二人で路地を歩きながら耳にしたハープシコードで演奏されるバッハの音色に合わせて踊るところ! 名シーンでございます。
果たして二人は再会できるのでしょうか?
そして最後には、再会を約束する二人。果たして二人は半年後に再びウィーンのその駅で会えるのでしょうか?
1995年に公開された映画ですから、これは25年前。まだインターネットがなかった時代に、住所も交換しなかった二人。どういう展開になるのでしょう?
もし、この1作目がお気に召したら、監督、主演の二人も再び脚本に参加したハイパーリアルな2作目、3作目も是非ご覧になってください。
今回は1作目をご紹介しましたが、3部作をすべて観ると「こんな恋愛してみたい」という感情よりも、「これから先の人生を一緒に歳を重ねて行けるパートナーに出逢いたいなあ」と真に考えさせられた私です。
そうそう、最近のインタビューでイーザンは、もしかしたら続編があるかも?とチラリとコメントしています。ってことは監督のリンクレイターは今年で還暦(祝)! イーザン・ホークは49歳、ジュリー・デルピーは50歳ということで、まさに我々世代の3人です。アラフィフ、いや、もしかしたらアラカンになった映画の中の二人の今後が観れるかも知れませんね。ロマンスはどのように変化して行くのでしょう?
それを観る私達にも、どんな人生の旅が待ち受けているのか、Bon voyage!!
では、次回もお楽しみに!