学び直した先に見えたもの

「作品が完成して世に出て、何かしらのリアクションが返ってきたとき、つまり一周巡ってきたというのを感じるときが、何よりも嬉しい」

 英国ロンドンのランドマークであるロンドン塔や、歴史あるケンジントン宮殿、ハンプトン宮殿の初代専属アーティストを経て、英国で劇場の舞台美術デザインやミュージックビデオ、絵本などマルチメディア・アーティスト、大渕園子さん。前編に続き、後編では、ロンドンでのキャリアを確立後、再び学び直すことを決めた大渕さんの新たな挑戦についてお伺いします。

もう一度、学び直そうと決意

 子供が生まれてから、子供を通して、それまでは会ったことのない世界と出会いました。その過程である子供の学校のPTAで、アート教室をやって。そこで教え始めたら楽しくて、養護学校でも教えるようになったんです。でも、私がやれると思うことが、教員免許がないことでできないというジレンマに陥り、2年間大学に入って免許を取得しました。

 人に教えることで学んだのは、エネルギーの循環。生徒がそこにいて、彼らの思いや悩みや希望や、希望がないことなどを受け取れること。私はそれをどうファリシテートしていけるのか? 教えるというより、見守る。そういう場所を提供して、そこで何かを楽しんだり、得たりして、何かの糧になって彼らの人生が前に進んでいく。「私の人生を変えてくれてありがとう」いうメッセージを頂いたり。こんなリワーディングな仕事があっていいのかしらと思うくらい、先生という仕事を楽しんでいます。

 回って、回って、回っていく。教えることも、アートも同じです。そして、そこには人がいないといけない

Anna Lou & Friends Poster

ミュージック・ビデオに託した想い

 昨年コロナ禍に、リユニオンというバンドのミュージック・ビデオを作りました。実は、私は若い時に大切な人を亡くしたのですが、ずっと何故、その人は亡くなって私は生きているのかと悩み続けてきました。それをバネして頑張ったところもあるけれども、そうでない部分もあり、長く引きづりました。でも、私自身が一度、自分を許すというか、自分を好きになってあげないと、私は子供たちを守れないんじゃないかと思って。

 そんな中でビデオのアニメーションの仕事を頂いて、曲をきいた瞬間、インスピレーションでパッと湧いたのですが、それが、その人との鮮烈な思い出だったんです。これは描けということだなと。この作品の作業で長い間悩んだいろんな想いを断ち切れました。出し切れたんですね。すごくパーソナルなことをやらせてもらったのに完成して、インタビューを受けたり、歌手のカイリー・ミノーグさんがインスタで取り上げてくれたりしました。自分が抱えていた苦しい気持ちに勇気を出して向かい合って良かった、と思っています。

園子さんがアニメーションを手掛けたミュージックビデオ Way Out West

大渕園子にとって「ミライを創る情熱」とは何か?

 私はなによりも人と繋がるのが好きで、人の心を受け取って、自分のフィルターを通して作品にして、それが相手にもう一回伝わって、勇気とか何かポジティビティーに繋がる、そういうのが大好きなんですよね。

 だから、私の原動力は人との繋がりだったり、元気になる未来というか、「循環」で何かが起きていったらと思います。ここにあったものが少し上に上がるような、そういうものを目指したい。その第一歩がもしも私の作品を通してだったり、私と仕事をすることだったり、私が教えることだったら、すごい素敵ですよね。すごいおこがましく聞こえそうですけど(笑)、それが原動力だと思います。

 付属品でついている理由で選んだ仕事は、絶対心が痛みます。そういうのを捨てると、自分が本当に魂レベルでやりたかった仕事が舞い込んでくる。私の場合、子供の頃からこんなに好きだったことが、自分の職業になるなんて思っていなかったわけですが、それを今やっているのはすごいことだなあと思う(笑)。だから、本当にピュアなパッションで取捨選択をしていって、本当に核に辿り着いて、「これが好きなんだ」っていう、それを仕事にできるときの爆発力と幸せはありえないものですよ。

 10年前の私に言いたいことですか(笑)? うーん、絵的にうまくなくても心が強い作品はいっぱいあるじゃないですか。それで人がどれだけ心を動かされるか。そのパワーを知っているから、「私もそのひとりになっていいんだよ」って、自分に言いたいかな。寝食を忘れて打ち込んでしまうものが、本当のパッション。だから「恐れないでいいんだよ。自分が表現し発信したものに誰かが共感してくれたり、心に火が灯ったりしたら、それすごくない?」っていって、笑うと思います(笑)。

====前編を読む====

大渕園子さん プロフィール

グラフィックやキャラクター・デザイン、立体的な空間デザインやミュージックビデオなど、2Dから4Dに渡る様々なデザインを手掛ける、クロスディメンショナル・マルチメディア・アーティスト。

福岡県生まれ、ロンドン在住。2001年に留学で渡英。2005年、ロンドン芸術大学卒業。ヒストリック・ロイヤル・パレスのアーティスト・イン・レジデンスとなる。シアターのステージデザインやキャラクターデザインを手掛けた後、2017年、再び学校へ戻り、ロンドン大学卒業教員免許取得。現在はアートを教えながら、アーティスト活動を行っている。さらなる詳細は公式サイト

インスタ https://www.instagram.com/sonoko.obuchi/
ツイッター https://twitter.com/obuchisonoko

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