<やまなし介護劇場>
「母、危篤」の連絡を受け、東京から故郷山梨へ飛んで帰って早10年。50代独身の著者が愛する母を介護しながら生活する日々を明るくリアルに綴ります。
平均寿命と健康寿命の差は?
お彼岸。毎年この時期、田舎の道端には「彼岸花」が咲き誇ります。
彼岸花を見かけると「あと何年、母と居られるだろうか……」、そんな想いにも駆られます。
長寿国である日本の平均寿命は、男性が81.47歳、女性が87.57歳ですが、これはあくまでも命尽きる年齢であって、誰もが理想とするピンピンコロリ平均でなく、「寝たきり生活込みの寿命」です。
ならば自力で生活ができる「健康寿命」と呼ばれる平均はというと……男性が72.68歳、女性が75.38歳とのこと(厚生労働省調べ2019年)。
つまり、男性は約9年、女性は約12年も介護を必要としながら最後を迎えることになります。
ちなみに私の母は介護が必要となって12年。統計によると、そろそろ……ということになりますが、母は半身不随ということ以外はいたって元気で同世代の女性より若々しく、平熱も36.5度、免疫力もバッチリです。
というわけで、「この先、私が元気でいられるだろうか……」と、そっちの方が不安です(笑)。
改正され続ける介護制度
12年前、母が介護保険適用者になった当初、すべての人のサービス負担割合は1割でした。それが次第に、経済環境によっては2割負担、3割負担にと改正されていきました。
うちの場合、母は少額年金受給者で、おまけに私を含めた同居家族も低所得というせつない環境ゆえ(涙)、今も負担割合は1割ですが、一般的な経済環境であれば、どんどん家計を切迫していく事態になっているのではないでしょうか?
そして介護負担割合だけでなく、サービス内容も少しずつハードルが上げられています。
介護者は要介護1~5に判定され、サービス内容や介護支給金額が決定します。その手前には要支援1、2という段階もあります。要支援とは日常生活に支障があるものの、おおよそ自立生活ができる状態にあるという感じでしょうか。12年前は、この要支援であってもデイサービスの利用が可能でした。しかし介護人口の増加に伴い、要介護認定者でなければデイサービスに通うことが出来なくなりました。
その代わり要支援者はデイケアというサービスが受けられるのですが、午前か午後のみという短時間利用(食事なし)か、朝から夕方まで利用できたとしても週1~2回しか利用できないなど、まさに「帯に短し襷に長し」状態なのが現実です。
老人ホームの入居も大変!
終の棲家といわれる老人ホームの入居もお財布事情により大きく左右されます。
ホテルのように豪華な民間経営の老人ホームに入居できる境遇の方を除き、一般的には初期費用不要の特別養護老人ホーム(特養)を選択したいところでしょう。しかし特養も昔は要介護1から、だいたい月10~15万円ぐらいで入所できましたが、いまや要介護3以上でなければ入所できません。ちなみに要介護3とは、すでに介護なしでは日常生活を送れない状態の方です。
しかも施設に空きがない場合、しばらく入所待ちをしなければなりません。増える一方の高齢者の人数を考えると、どれくらい待てば順番が回ってくるのかもわかりません。
幸いわが家は、お金はなくともマンパワーだけはあるので、母を老人ホームに入所させる予定はありませんので、この件の最新情報には少々不正確な部分もあるかもしれません。近年、条件もかなり細分化されていますので、詳しくは地域のケアマネジャーに相談することをオススメします(ケアマネジャー代は役場支払いなので個人負担はありません)。
老後の安心は担保されていない
つまり老後の安心が担保されていたはずの介護サービスは、経済的に恵まれていなければ、充分なサービスが受けられない時代へと突入しています。
もしかしたら今後は、一家に一人、介護専従者が必要な時代になるのかも知れません。それをロボットが担うのか、家族の誰かが担うのかは、未来のみぞ知る……としか言えませんが。
誰にとっても老後の安心は必要なもの。これからの日本の介護制度を改善していく偉い人たちは、まずはこの連載を読んで自宅介護のリアルを知ったほうがいいかもしれません(笑)。本当に必要とされるサービスや支援システムを作るべく、庶民(中・低所得者層)と意見交換すべきです。もちろん、うちに見学に来たかったらお茶くらいは出しますよ(笑)。