映画第3話

第一線で働く女性たち戦い方とは?!

 今回ご紹介する作品は、働く女性たちにぜひ観ていただきたい『スキャンダル』(2020年2月公開)。シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーという豪華3大女優共演作品です。

 原題は「Bombshell」。直訳すればセクシー」とか「ゴージャス美女とか爆弾ニュース」の意なので、御本家のタイトルはさすが。

 出演者の豪華さや受賞など話題性満載な作品ですが、何と言っても最重要ポイントは「働く女性が直面する様々な複雑さ」を描いていることです。何十人と登場する女優たちの中から、自分に重なる人を見つけられるかも?

 なかでも主に焦点を当てているのは、後のMeTooムーブメントへと繋がって行く「セクシュアルハラスメント」。この題材を初めて正面から取り上げた「旬」なハリウッド映画です。ここに描かれる女性たちから美しさだけではなく、強さや困難に立ち向かって行く勇気をおすそ分けしてもらいましょう!

Vol.3 『スキャンダル』あらすじ

2016年、アメリカニュース放送局で視聴率No.1を誇る「FOXニュース」に激震が走った!クビを言い渡されたベテランキャスターのグレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)が、TV業界の帝王と崇められるCEOのロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)をセクシュアル・ハラスメントで告発したのだ。騒然とする局内。看板番組を背負う売れっ子キャスターのメーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)は、自身の成功までの過程を振り返り、心中穏やかではなくなっていた。一方、メインキャスターの座を狙う貪欲な若手のケイラ・ポスピシル(マーゴット・ロビー)は、ロジャーに直談判するための機会を得て――。

アメリカで起きた「セクハラの実話」をもとにした映画

 この数年でアメリカで起きた実話を基に作られた映画ですが、「セクハラ」というセンシティブな問題を扱いながらも、エンタメ%をここまで高くしてくれたのは、監督のジェイ・ローチ。主に奥様であるThe Banglesのスザーナ・ホフの目から見たアドバイスは貴重だったようです。

 そして脚本はチャールズ・ランドルフ。この事実を葬ってはならないと言う想いから書いたとか。全米公開は2018年12月でしたから、ものすごいスピードです。スタッフ側の製作への熱意が感じられますよね。

 プロデューサーは映画の主人公メーガン・ケリー(FOX ニュース 2004-2017, NBC ニュース 2017-2019)も演じたシャーリーズ・セロン。ケリーのライバルで、ニコール・キッドマンが演じたグレッチェン・カールソンも実在する人物なので結末は既にネタバレ状況です。が! ここにマーゴット・ロビー演ずる野心家の若いキャスター、ケイラ・ポスピシルと、彼女を優しくサポートするレズビアンのジェス・カー(ケイト・マッキノン)などが絡み合って来るので、映画は事実より奇なり。

豪華アンサンブル・キャストがすごい

 そして、女優たちのこのアンサンブルにご注目くださいませ。いずれもアメリカ出身ではありませんが、ハリウッドではメジャーどころ。シャーリーズは好きな女優のひとりです。あのBeauty、鍛え上げているスタイル、知的さに憧れております。

 この3大女優の共演シーンで特に注意深く見ていほしいのが、Billie Eilishのヒット曲「Bad Guy」が流れるシーン。映画の予告編でも使われていますが、エレベーターの中で3人だけになったあの時。ここは見事にこの映画のメッセージを伝えてくれます。ほぼセリフなしの沈黙の時が流れるのですが、女性たちの間に流れるいろいろな感情を演技だけで表現しています。

 この3人をバトルに追い込んだロジャー・エイルズ役のジョン・リスゴーの怪演ぶりも思わず絶句してしまうほどですが、もうひとりの私のお気に入り女優は架空のキャラであるジェス・カー。これをSNL出身のケイト・マッキノンちゃまが演じています。プライベートでもゲイであることを公表しており、チャーミングさにも参るほどの脇役なので、ご注目ください。

 主演のシャーリーズは、メーガン役を演ずることに関して、これだけ世に知られた人物であることや、考え方も自分とは違うことなども含め、本作で彼女になりきることはかなりチャレンジングだったとコメントしています。ちなみに、この映画を製作するにあたりメーガン・ケリー本人とは関わらなかったそう。

 もし、メーガン本人を初め当時のテレビ局の同僚たちが本作をどのように感じたか、どれほど本人に似ているのか?など、この作品をさらに楽しみたい方はこちらのクリップをどうぞ

カズ・ヒロによる特殊メイクアップ&ヘアースタイリング

 この作品は、第92回アカデミー賞でKazu Hiroさんがメイクアップ&ヘアースタイリング賞を受賞しています(彼の受賞は今作で2度目)。

 シャーリーズが本物のメーガンにそっくりだったことも作品にリアリティを与えました。限りなくメーガンに近いシャーリーズを創り上げるために、鼻腔には彼女用に仕上げたプラッグを入れ、コンタクトレンズを付けて目蓋のパートを重くしたそう。シャーリーズ自身も声を低くして、メーガンの喋りのスピードも研究するという徹底ぶり。

 ニコールには主に頬に手を入れ、マーゴットはウィッグを付けただけだったそうですが、ジョン・リスゴーをロジャーという怪物に仕上げたのも、オスカー像に値する職人技。あの'ジャバ・ザ・ハット'体格に近づかせるために顔だけではなく贅肉パッドを身につけてもらって撮影したそうです。役者の演技はもちろんですが、この辺りも楽しみにしていてください。

この映画から見る、働く女性が直面する複雑さ

A) セクハラ

 ロジャーだけではなく、その地位を利用した「パワハラ」を行うシーンも描かれています。劇中では、女性たちが苦情を訴えるホットラインですら、ロジャーによって全て監視されているとメーガンが語ります。彼女だってパーフェクトな人間ではありませんが、「ロジャーのせいでセクハラの看板を背負いたくない」と言うシーンがあります。彼女が戦いに挑んで行くことを決意した理由とは?

 実は私も、ここまで極端ではありませんが、一度嫌な思いをした事がありました。劇中のグレッチェンではないけれどメール、LINEの記録、いただいたお手紙などはすべて取ってあります。これは自分の身は自分で守ることも教えてくれる作品です。

B) 女同士の「ジェラシー」

 女性キャスター3人は、ここまで追い込まれても「3人が助け合い、強く団結して行く」と言う展開にはならないんですよね。常にプライムタイムを狙っているライバル同士は話し合おうともしないんです。誰がどう声を出すかを伺っている。火花が飛び散りそうなバトルシーンも出てきます。しかし、それぞれのスタンスは違っても最後に目指す目的はひとつ。そこに向けて背を向けずに挑んで行く姿勢は同じなのです。衣装部屋のシーンは凄まじい物がございます。必見!

C)「更年期」と「若さ」

 ロジャーが、グレッチェンの番組の生放送直後にスタジオに怒鳴り込んでくるシーンには怒りを覚えました。女性の“客体化”に抗議をする彼女に対し、「更年期で汗だくの中年女は醜い!」と返すロジャー。

 このシーンは私は強い共感を覚えました。若いことは素晴らしい。でも、仕事の経験と能力があるなら、それを活かすべきでしょ?と。逆に、若い世代がベテランキャスターの中で仕事をする厳しさも映し出しています。

D) ジェンダー差別

 FOX ニュースのような保守系の環境では、ゲイへの偏見は強いはず。「カミングアウト=解雇」となってしまうこともあるでしょう。ここで働くジェスは、アパートメントの部屋にヒラリー・クリントンのポスターを貼り、自らを「クローゼット民主党」と呼んでいます。日本とは違い、アメリカではTV局が政治に対する姿勢を色濃く打ち出しているのですが、FOXニュースは特に共和党を支持し、とても保守的です。つまり職場においては局の方針と異なる政党への支持、ジェンダー・アイデンティティーを一切表に出さないことで自分の職を守っているのです。架空の人物をストーリーに組み込み、この話題を含めた点に映画の幅広さを感じました。

E強さ

 セクハラに対してだけではなく、物事に立ち向かって行く女性達の勇姿は観ている側にもエネルギーを与えてくれます。私の大好きなシーンは冒頭の方で、メーガンが2015年8月に行われたFOXニュース主催の第一回共和党討論会の場に入る直前、同僚達にバックアップされながら黒いドレスを着用して歩いて行く凛々しい姿! 彼女の名前がアナウンスされた時に、TV用に少しスマイルを浮かべる毅然とした態度。惚れました。

 この力強さは私自身、何か構えることがある時はこのシーンを思い浮かべて自らを励まします。瞼に焼きついているほど力強い。私の中では名シーンのひとつです。その直後の展開はご存知の方も多いはず。当時、大統領候補であったドナルド・トランプ氏にぶつけた最初の一撃はあまりにも有名です。

勇敢な女性たちから勇気のおすそ分け

 セクハラ事件そのものが起きた4年後の今年、アメリカでは大統領選が行われます。その意味でもタイムリーなこの映画。観ることにより、多くの人がこれらの問題に目を向ける良いきっかけとなる作品だと思います。是非、ご覧になって皆さんの明日からのお仕事への活力としてくださいね!


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