『逃げ恥』百合ちゃんの言葉がアラフィフ女性に響く理由

アラフィフ独身女性の「百合ちゃん」が表す社会

 先週、日本を揺るがしたニュースといえば、俳優の星野源(40歳)と新垣結衣(32歳)の結婚報告。契約結婚を題材にした大ヒット・コメディドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の主役カップルがリアルに結婚したことに日本中から喜びの声があがりました。

 そのドラマの中で、新垣結衣(役名みくり)と仲良しの叔母役だった石田ゆり子(51歳、役名も百合ちゃん)も、自身のインスタグラムに「あのすみません。びっくりして鼻血が出そうなんですけど」と祝福コメントを掲載。すっぴんで鼻を抑えながら喜びを表した「百合ちゃん」の写真も話題になりました。

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 この「百合ちゃん」と言えば、独身のバリキャリ、アラフィフながら美人で性格もチャーミング、仕事も部下の教育もしっかりこなし、出世コースから外れた同期女性たちの期待の星として同性からも好かれる魅力的な人物という設定。しかも、姪のみくりを溺愛することで育児の疑似体験をしていると思っていたり、男性に人気があるのに自分を大事にするうちに機会を逃して男性経験ゼロのまま閉経したという、かなり痺れる伏線も張られた役でした。

 その「百合ちゃん」を、自身も独身で同年齢の女優、石田ゆり子が生き生きと演じていた——。GWG世代の独身女性たちが、脇役である「百合ちゃん」をまるで自分の分身でも見守るような気持ちで、応援せずにはいられなかったことは想像に易いことでしょう。

 そこで今日は、百合ちゃんには共感しかないアラフィフ独身女を代表して、GWG編集長のわたくしが特に響いた名言を選び、星野&新垣夫妻への祝辞とさせて頂きます(笑)。

百合ちゃんの名言集、ベスト5!

 では早速、ここで「百合ちゃんの名言」の数々を振り返ってみましょう。自分は「会社には部下もいる50歳のベテラン女性社員で未婚。子どもはおらず、ひとり暮らし。現状パートナーはいない」という設定をよく頭に入れてから読んでください。

1)未婚よりバツイチの方が生きやすい

日本社会の中で、高齢未婚女性の痛々しさが指摘されてしまう悲しさを語る場面での一言。「こんなことなら、深く考えずにさっさと結婚しておけばよかった。未婚よりバツイチの方が生きやすかったって思うんだよね」。
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これは私の周囲でも、それはそれはよく聞かれるつぶやきです。

2)誰からも選ばれない

新婚の姪っ子夫婦を見ながらの一言。「お互いに唯ひとりの相手がいるっていうことは、誰からも選ばれない人生より素敵じゃない」。
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これは、結婚は「選ばれるもの」ではないことを頭では200%理解しているのに、ふとそんな気持ちになってしまう瞬間もあるという、酸いも甘いも経験したアラフィフの二重構造的発言とも言えるかと。

3)私の分まで産んでくれてありがとう

会社で産休を取る同僚に対して、残された女性部下たちが「ぶっちゃけ迷惑!」、「百合さんだって仕事が増えて困るでしょう?」と怒る中、先輩の百合ちゃんが後輩たちに言った一言。

「悪いけど、もうそんな次元にない。感謝。私の分まで産んでくれてありがとう。この年になるとね、もう嫉妬なんて通り越してる。それにね、今どき産休という福利厚生があるっていうことは、まだ(会社が)安泰ってこと」。
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深い。ひとつの山を自力で越え、これからも自力で次の山を越えねばならない「子なし女子」にしかわからない真の境地と言ってもいいかもしれない。

4)深い喜びを知らない

子持ちの男性からアプローチを受けた際、「子持ちの人と結婚すれば、今からでも子供が持てるんだって、新しい発見だった」と友人に話した百合ちゃん。そして、愛する姪みくりとの関係をこう表現しました。

「私の場合はみくりがいたから、娘がいる気分を味わえちゃったのよね。最高よ。責任取らないで、ひたすら可愛がるだけ。でもその代わり、深い喜びは知らないのかもしれない」。これを受けて「深い喜びを知りたかったですか?」と聞かれた百合ちゃんの回答は、「誰もがすべてのことを深く知るのって無理だと思わない? 誰かが知っていることを誰かは知らなくて、そうやって世界は回っているんじゃないかしら」。
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海より深く同感。他人の本当の気持ちは、他人にはわからない。

5)かっこよく生きなきゃ

部下から憧れられ、尊敬され、とても仕事ができる百合ちゃんですが、会社の男性上司が自分の陰口を容赦なく言っているのを聞いてしまいます。その日は明るくいつも通りに振舞ったものの、帰り道に出会った友人に高層ビルを飾る自分の作った化粧品広告を褒められたときに言った一言。

「例えば、私みたいなアラフィフ独身女だって社会には必要で、誰かに勇気を与えることができる。あの人が頑張ってるなら、自分ももう少しやれるって。今ひとりでいる子や、ひとりで生きるのが怖いっていう若い女の子達が、ほら、あの人がいるじゃない。結構楽しそうよ、って思えたら少しは安心できるでしょ。だから、わたしはかっこよく生きなきゃって思うのよ……」
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くぅ〜〜、これは堪んない。いろんな意味で、ちょっと泣きそうになりますね。

名言中の名言「自分に呪いをかけないで」

 さて、そのセリフの背景を考えさせられる百合ちゃんの名言の中でも、特に話題になったのが、この「自分に呪いをかけないで」です。百合ちゃんを慕う17歳も年下の男性(風見君)のことが好きな20代の女性が、突然百合ちゃんの前に現れて、一方的に暴言の数々を発する場面でのセリフです。

 その20代の巻き髪女子は、百合ちゃんに向かって、「正直に言いますね。風見さんを解放してあげてくれませんか」と切り出すと、「50にもなって、17歳も年下に色目使うなんて虚しくないですか?」、「アンチエイジングにお金を出しても、老いを買う人なんていません」、「私は“おねえさん”の半分の歳です」と、カミソリのような言葉を次々と投げるのです。でも、それに激昂することもなく、淡々と言葉を返した百合ちゃん。番組放送当時のアラフィフ独身女性の生息特定地域を直下型地震のごとく激しく揺らした名場面であり、今でも語り継がれる百合ちゃんの名セリフです。


 自分の若さに価値を見出しているのね。
私が虚しさを感じることがあるとすれば、
あなたと同じように感じている女性が、
この国にはたくさんいるということ。

今あなたが「価値がない」と切り捨てたものは、
この先、あなたが向かって行く未来でもあるのよ。

自分がバカにしていたものに、自分がなる。
それって辛いんじゃないかな?

私たちの周りにはね、たくさんの呪いがあるの。
あなたが感じているのも、そのひとつ。
自分に呪いをかけないで。
そんな恐ろしい呪いからは、さっさと逃げてしまいなさい。

若さマウンティング」を「呪い」と表現した百合ちゃん

 いうまでもなく、時間はすべての人に平等ですし、時間を止めることはできません。

 人生で今日という日が一番若い日なわけですから、この巻き毛女子にも老いは来ることを、淡々と伝える百合ちゃんに胸がスカッとした人はたくさんいたことでしょう。若さというマウンティングに対して、「呪い」という言葉で立ち向かった百合ちゃんの姿に、テレビの前で思わず立ち上がって、手が痛くなるほど力一杯、拍手した女性たちもいたはずです。

 社会の中で「大人の女性」として正しく空気を読み、正解だと思われる方向にアジャストしながら生きていく。結果的に自分が選んだ人生なのだから泣き言はいえないし、言ったら他人の迷惑になるから、先回りして背筋をシャンと伸ばす——という毎日を送っている多くのアラフィフ独身女性たちの心のモヤモヤを代弁してくれたのが、百合ちゃんなのでしょう。

 でも、前述のベスト5には入らなかったけれど、「同年代の女友達がみんな結婚しちゃった」という話の後で言った、こんな百合ちゃん語録もあります。

「年を取るとさぁ、むなしいこともいっぱいあるけど、楽しいこともいっぱい覚えるんだよね」。

 確かにこれまでの人生、1人だからこそ経験できた楽しいこともたくさんありました。ただ、自分が置かれた状況や環境が厳しいと、ポジティブなことは忘れがちになっちゃうんですよね。「それではいけないな」という気持ちや、多くの良い記憶を思い出させてくれた逃げ恥結婚ニュースに伴う、百合ちゃん語録。しかし、あれから何年も経ったのに、今でも同じように胸がすく名言ばかりだなあと思うのは、自分も社会もそう変わっていないということかもしれません。

 最後に、50年近く生きてきた百合ちゃんが、ちょっと自虐気味につぶやいた名言を紹介しましょう。

「人生が予定通りにいくのなら、私は27歳で結婚していました。おこごとおばさんやセクハラおばさんになる運命など誰が想像したでしょうか。いいですか? 思いもよらないことが起こるのが人生です」。


石田ゆり子さんの本『Lily—日々のカケラ—

逃げるは恥だが役に立つ」の原作は海野つなみさんの漫画。全11巻。

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