ひとり駅弁部 第31話『わたしたちの生きる道』

子どもを持たない人生を考えてみる

 私が思春期を送った昭和の時代、女性は結婚して子どもを産むのが当たり前だった。「結婚したら子どもは何人ほしい?」というたわいもない会話を学校で友達と普通にしていたし、結婚をして子どもを産むことに何の疑問も持っていなかった。

 そんな私だったのに、結婚しても子どもを産む選択をしなかった。相手もそれを望んでいなかったというのが大きな理由だけれど、今思うと、私は自分で「産まない選択」をした。少子化に一役買ってしまって申し訳なくも思うが、後悔しているかと言われたら、正直そうでもない。

 周りを見渡してみても、似たもの同士が集まるからなのか、子どもを持たなかった友人たちが多い。自分がそういうコミュニティの中にいるからかも知れないが、子どもがいない夫婦も独身も珍しくない時代になった、と思う。

子どもが嫌いなわけじゃない

 子どもが嫌いだから持たなかったのか? いや、そうじゃない。大学時代は乳児園でバイトをしていたくらいだし、どちらかと言えば好きな方だと思う。けれど、「子どもがいる自分の生活」をまったく想像できないのだ。子どもがいたら今の仕事を続けてこられた自信もない。

 しかし、子どもを持たなかったことで、自分の老後に厳しい現実が待っていることは覚悟している。こういう話は友人たちとの間で常々話題に上ってきたし、自分の人生を後悔している友人もいる。私に後悔があるとすれば、親に孫を抱かせてあげられなかったことだろうか。少し申し訳なく思っているが、孫がいないせいなのか、84歳になった父は未だに自分のことを「おじいちゃん」だとは思っていないきらいがある。仕事もまだ続けているし、通信の大学生でもある。まぁ、若々しくいてくれることに越したことはないけれど(苦笑)。

 子育ての経験はできなかったけれど、子どもを持たなかったことで経験できた人生もあるので、「自分の人生は満足でした」と言って終えられたらいいなぁと思っている。やっぱり、自分の人生は自分で決めたい。

これからの楽しみ方とは

 先日、黒柳徹子さんがインタビューで、独身の幸せは「思い煩うことがないこと」だと言っていたのを聞いて、「それだ!」と膝を打った。「家族や子どもの病気とか、自分ではどうしようもない悲しみがないのがいい」と。

 私には妹と高齢の父がいるので心配するタネはあるけれど、夫や子どものことで思い煩うことはない。それは人間的に寂しいことなのかもと思っていたが、考えてみれば「自分のことだけ悩めばいい」というのはお気楽なことだ。そのことに気づかせてくれた黒柳大先輩に大感謝である。

 こう書くと、私は子育てより仕事に没頭してきた女性を応援しているように聞こえるかもしれないが、自分が経験していない子育てをしてきた女性を私は心底尊敬している。ましてや働きながら子育てをしている女性は、私の何倍も苦労や努力をしていることも理解しているつもりだ。ただ、「子どもがいる、いない」でお互いをわかり合えないのは、同じ女性なのに寂しいなぁとも思う。

 歳を重ねてよかったことのひとつは、結婚して仕事を離れ、ママ友のコミュニティに属していた友人たちが、子育てが一段落して、再びこちら側に戻って来ることだ。これからは「自分のために時間を使って人生を楽しみたい!」と、推し活に夢中になる友人もいれば、もう一度ひとりで生きていくことを決断した仲間もいる。

 大人女子がこれから楽しんで生きていくためには、つかず離れず、何かあれば駆けつけるくらいの距離感で、たまに駅弁を持って旅をしながら、小さな幸せを少しずつ積み重ねて暮らすのが私の願い。私たち人生はまだまだ長いのだから。

今月の駅弁:青森県つがる惣菜「たまご箱」

 2025年駅弁味の陣で「味覚賞」を受賞した新作の駅弁をご紹介。名前は玉手箱ならぬ「たまご箱」。その名の通り、大きな玉子焼きが主役だ。定番の玉子焼きで勝負するには相当の自信があるに違いない。

青森県つがる惣菜の「たまご箱」

 

 津軽のこだわり卵「太陽の輝き」を使って、寿司職人さんが丁寧に手焼きしているらしい。その他に定番のサーモン塩焼き、自家製きゅうりの辛子漬け、優しい出汁をたっぷり吸ったがんもどきが入っているが、おかずはそれだけ。玉子焼きは何層にもなっていて、焼き上げるのに時間と手間がかかるので、数に限りがあるらしい。お寿司の玉子みたいに甘くはなく、ほどよい甘さだ。

 丸いフライパンで分厚く焼く玉子焼が上手だった今は亡き母の玉子焼きを思い出した。玉子焼きにはそれぞれ家庭の味があって、好きな味付けがあると思う。たくさんの駅弁の中からその味を探すのも、また面白い駅弁の食べ方かも知れない。

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