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久々の帰国で感じた自分の年齢
こんにちは、ランサムはなです。暑い日が続きますが、皆様お元気でお過ごしでしょうか。先日2年ぶりに、日本に一時帰国しました。今回の帰省は翻訳者・通訳者学会への出席や昨年入院・手術した母の様子を見に行くことが主な目的でした。
しばらくぶりの日本は一見そんなに変わっていない印象でしたが、お札のデザインが一新されていたり、ラーメンの値段が1杯1000円を超えていたりするなど、細かいところで「あれ?」と思うことがありました。
個人レベルでは大学や高校に進学した甥・姪との再会を通じて、2年のブランクの間の成長を目の当たりにするとともに自分が年を取ったことも改めて実感させられました。
子育てをされている方であれば、お子さんの成長を通して月日が経つのを実感するのかもしれませんが、私は子どもがいないので、たまに甥や姪に会うときに、その成長ぶりを見て初めて自分の年齢を意識するぐらいです。もちろんもう若くはないので、体力的衰えから「歳だな……」と思うことはありますが、それは一瞬だけで、四六時中そのことを考えているわけではありません。そういう意味で、今回の日本行きは自分の年齢を再認識させられる機会となりました。
「シニア」の扱いに対する印象の違い
日本に滞在していた約1カ月の間、アメリカで暮らしている時よりも頻繁に「シニア」という枠組みを意識させられることがありました。
たとえば地下鉄や公共機関の高齢者・障碍者用の優先席。若い頃は日本に帰国して優先席を見るたびに、「日本はなんて高齢者にやさしいんだろう。歳を取ったら自分は絶対日本に戻ろう」と思っていました。高齢者マークを付けた車や高齢者向けパソコン教室、シニア向け旅行プランなど、とにかく高齢者はいろいろな意味で特別扱い。当時の私には、高齢者を特別扱いしてくれる日本は「高齢者天国」に見えました。
ところが、いざ自分が年を重ねて「シニア」と呼ばれる年代に近づいてくると、その特別扱いがちっともありがたく感じられないことに気づきました。結局のところ、自分はいくつになっても中身の部分は自分のまま。成人し、大学を卒業して社会人になり、結婚も離婚も再婚も経験しましたが、人生の節目を迎えたからと言って急に別の人生が始まるわけではありません。自分は今までどおりの道の延長線上を歩いているのに、急に「あなたは○歳だからシニア枠ね」と一括りに振り分けられることに、大きな違和感を覚えたのです。
若い頃は「高齢者にやさしい」日本は素晴らしいと思っていましたが、それは自分が当事者ではなかったから。他人事であれば「高齢者にやさしく」と笑顔で言えますが、自分が一方的にシニアや高齢者呼ばわりされると——違和感しかありません。今のアラフィフ・アラカンは若々しくて元気な方が多いので、私と同じように感じている方も少なくないのではないでしょうか。
アメリカの「高齢者」はどう暮らしている?
アメリカにももちろん「シニア」「高齢者」はいます。ただし、日本と比べるとそこまで特別扱いをされていない印象です。アメリカにも高齢者向け住宅や、医療保険や入場料の割引などはあります。ですが「シニア」と呼ばれる年齢層の人たちを一括りにする風潮は日本に比べると弱いと思います。
高齢者であっても身体が動く限り今までどおりの生活を送るのが一般的。ただし、子育てが終わると小さい家に住み替えたり、厳寒の地を避けて暖かい地方で冬を過ごしたりするようになります。仕事をリタイアしてからダンス教室や習い事に通ったり、ボランティア活動に精を出したり、夫婦でキャンプやクルーズ旅行などに出かける人たちもいます。配偶者と離婚・死別してから70代で恋愛や再婚をする方も少なくありません。
そのような過ごし方の方が、人生も後半戦に入った今の自分には違和感なく受け止められます。身体が自由に動く限り、精力的に人生を楽しもうという姿勢が感じられるからでしょう。
いくつになっても自分らしく生きたい
アメリカでこのような傾向が強いのはなぜでしょうか。私は、英語圏では年齢に関係なく、お互いをファーストネームで呼び合う習慣があることも関係しているのではないかと思います。
「お父さん」「お母さん」「おじいちゃん」「おばあちゃん」などという役割で呼ばれるよりも、自分の名前、つまり「はな」「ジョン」などファーストネームで呼ばれた方が、家族における自分の役割よりも自分らしさに注力しやすいような気がします。年を取ったらなおさらのこと、「妻」「母」としての役割よりも、一人の人間として残りの人生をどう生きるかに注意が向くのは自然なことだと思います。
とは言え、日本でも少しずつとはいえ、祖父母や親戚を名前で呼ぶ家も増えてきたようで(ちなみに私の甥と姪は私のことを「はなちゃん」と呼ぶように躾けられています)、以前と比べると、日本でも自分らしい年の取り方を模索することが推奨されるようになってきたのかもしれません。
アンチエイジングの医療や技術が進化し、人生100年時代も目前に迫りつつある現在、若い頃の縛りから解放されて、全く新しい自分を生きるという選択肢ができたら、ますます素敵な年の取り方ができるかもしれませんね。
ランサムはなのワンポイント英語レッスン
「熟成」の意味もある「Aging」
「Age」という言葉は「年齢」以外に「歳を取る」「加齢」「老齢化」などの意味でよく使われます。日本語でも「アンチエイジング」「エイジングケア」など、化粧品などのラベルに使われているので聞き覚えのある方も多いでしょう。
ただし英語の「Age」には「熟成させる」という意味もあります。ワインやチーズなど熟成させることで風味や質が高くなるものに使われます。私たちもただ年を重ねるだけでなく、人間的熟成を目指したいものです。

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