ひとり駅弁部 番外編『SL 女ふたり旅』

呑み鉄女子の蒸気機関車の旅

 このコラムの執筆を依頼されて早3年目、初の番外編は呑み鉄女子・ゆか里さんと蒸気機関車に乗ったふたり旅「SLばんえつ物語」

 鉄道好きには撮り鉄、乗り鉄いろいろいるけれど、ゆか里さんは鉄道に乗りながらお酒を楽しむことが大好きな「吞み鉄」だ。SNSで知り合ったのだが、同じ新潟市出身でしかも同い年、高校もすぐ隣という偶然の奇跡が重なった。そうなると(元)女子たちが仲良くなるのは早い。ゆか里さんの行きつけのお店で何度かお酒を酌み交わし、よく乗るという蒸気機関車(SL)の旅に同行させて貰うことになった。

 美しい車体から「貴婦人」との愛称を持つSL C57-180型は、昔ながらに石炭を燃やして走る。昨年、運行開始25周年を迎えた。1999年の出発式では高倉健さんがテープカットをしたらしい。同年、映画『鉄道員(ぽっぽや)』が公開されたからだろう。

 午前10:03に新潟・新津(にいつ)駅を発ち、福島・会津若松駅の終点まで約3時間半の旅。あくまでも私たちの目的はこのSLに乗って楽しむことだ。4月~12月初旬まで毎週土日に運行されているが、人気が高く乗車券もグリーン車から売り切れるとのことで、チケットを1カ月前に購入。私は以前からSLに乗ってみたいと思っていたので、この日を楽しみにしていた。

SL女ふたり旅 写真日記

 新津駅には有名な駅弁屋が2軒ある。「神尾弁当」と「新発田三新軒」。テレビ番組でも度々取り上げられているので、駅弁好きならご存知のはず。

 早速ホームで目にしたのは、神尾弁当の駅弁たち。ここはやはり「SLばんえつ物語弁当」を買おうと決めていたのだが、いつもの青色のパッケージとは違う黒色のものがあった。SL運航日のみ販売される駅弁らしい。私は「記念」とか「限定」とかに目がないので、この黒いパッケージの「のどぐろの塩焼き」がメインの駅弁を選んだ。ゆか里さんは、鮭といくらと鶏の照り焼きが入った駅弁。どちらもお酒のアテにちょうど良さそうだ。

 早速、ゆか里さんが車内を案内してくれた。内装もレトロでおしゃれ。

 展望車や売店、キッズルーム、昔懐かしの丸い郵便ポストまであって大人も子どもも飽きずに楽しめる。

 まずは、ゆか里さんが用意してくれた冷えたビールで乾杯。SLで食べる駅弁は格別に美味しい! でも、この旅でひとつ後悔が……。途中の津川駅で限定販売されている「とりめし」を買わなかったことだ。あっという間に売り切れる「幻の駅弁」だということをあとから知った。お腹がいっぱいでも買えばよかった(泣)

 「窓を開けると顔が黒くなるよ」とゆか里さんに言われた。思ったより線路と周辺の家が近く、モクモクと出る煙に「大丈夫なのかしら?」と心配になったが、線路沿いの人たちは驚くほど手を振って歓迎してくれた。私たちも思わず手を振り返して自然と笑みがこぼれる。撮り鉄たちの姿も会津まで途切れることなく続いていた。

 途中で咲花温泉宿の人たちがやって来て、宿泊券が当たるというくじ引きが行われた。私たちが当たったのは参加賞の入浴剤。「まぁ、当たるわけないよね」と思っていたら、ひとり旅の隣席の男性は宿泊券が当たった。私たちは思わず顔を見合わせて苦笑い。

 さらに、車掌さんとジャンケンをして最後に勝ち残った人はSLヘッドマークの缶バッチが貰えるジャンケン大会もあった。ちなみに、勝利をつかんだのはゆか里さん(笑)。何度もこのSLに乗っている彼女は、車掌さんが出すジャンケンの順番まで予測していた。ヘッドマークは季節でいろいろ変わるらしく、初めて手にした彼女はとても嬉しそうだった。

 途中駅でゆっくり下車して写真撮影を楽しむ時間もあって、SLに乗っている乗客たちとは同じ旅をする不思議な一体感を感じた。こんな感覚、初めてだ。

 終点の会津若松に着いたら、青空が広がっていた。帰りのSLまでは2時間。観光をするには時間が足りないので、ゆか里さん御用達の喫茶店へ。呑み鉄の意志を貫いて、サンドイッチとビールで乾杯。

 そして、地元のスーパーに寄ったら、なぜかマグロの解体ショーをやっていた。知らない土地のスーパーで買い物をするのが好きなのだが、グリーンやホワイト、ピンクや紫色のアスパラが山積みになっているのを見て、会津のアスパラが美味しかったことを思い出した。お土産にアスパラを手に入れて大満足!

 帰りは一番後ろの展望席に座って、流れる線路を長い間2人で眺めていた。駅で見送る鉄道員に敬礼をしている男の子がかわいい。さすがにもう呑み疲れたので、最後は福島産の桃ジュースで乾杯。

 蒸気機関車を思う存分に満喫する旅、こういうのもいいなぁ。次は、紅葉の時期にぜひ乗ってみたい。

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