老いは人間だけの特権なのか?

今年最初の読書は『うまいように死ぬ』

 最近はなんでも簡単にネットで情報収集ができるので、すっかり本離れしています。でも、ネット情報はなぜか心に定着しないと思いませんか? 私の場合、本を購入する費用とページをめくる手間がかかっても、本の情報の方が定着します。何事も「ひと手間を惜しんでは身にならない」ということなんだと思います(個人の感想です)。

 だからこそ、今年は読書する人になりたい。ということで、最初に選んだ本は『うまいように死ぬ』(鎌田實著・扶桑社)。鎌田氏は医師であり、長野県の健康寿命を延ばした立役者とも言われています。多くの著作がありますが、私は何よりこのタイトルに心掴まれました。

 「うまいこと生きれば、ちょうどいい死に方ができる!」とキャッチコピーにある通り、軽やかな文体で老いに向かう心の在り様のヒントが満載です。介護する者(私)も、される者(母)も、逃れられない「老い」と「死」。人生の後半戦に向かってグッと身にせまるこの頃なので、今年読みたい一冊目にこの本を選ばせていただきました。

常識にとらわれない自由な老後

 『うまいように死ぬ』の中から一章の一部を簡単にご紹介します。

~生物学者〇〇氏によれば、「老いは人間だけに与えられた特権」だそうです。陸上で暮らす生物の多くは、生殖機能が衰えると寿命を終える。しかし人間だけは、それ以降の人生がけっこう長い。集団で生活していく人間にとって、老いた者がいたほうが集団としてのメリットが多いからです。つまり人間は、生殖を終えた時期からのほうが、生物ではなく“人間として”の人生を始められるということです~

 この一文から始まる章にハッとしました。

 「人間として」人生が始まる……。なるほど!と思いました。たとえば閉経を迎えると、淋しさを感じる女性も多いかと思います。独身気ままな私ですら、どこか「女としての人生が終わったなぁ」とセンチメンタルな気持ちが去来しましたから。

 ですが、「食欲・性欲・睡眠欲」に支配されるただの「生物」を卒業し、ここからが「人間」なのだと突きつけられると、「私はまだまだ修行が足りん!」と身が引き締まると同時に、とても軽やかな気持ちになりました。

 私にとって母の「介護」は「人間修行」とも言えるかもしれません。鎌田氏の人生哲学とともに常識にとらわれず自由に生きることを大いに提唱している本書は、全編が優しさに満ちています。終末医療の現場でのエピソードとともに、リアルに丁寧に「生と死」を見つめてこられた視点が生む「老い方上手は死に上手」というテーマに、素直に感動しました。

最も勇敢な言葉とは?

 新たなフェーズを迎えている私の母は、最近明らかに「認知症」の兆候を見せるようになりました。記憶が蓄積されていく自分と、記憶が蓄積されずに忘れていく母との、まるで我慢比べのような日々が始まっています。例えば、こんな感じです。

 母「今日は誰か来るの?」
 私「誰も来ないよ」(母頷く)
 →5分後、この会話のリフレイン(苦笑)

 私の場合、亡き父の経験が役立っているので、認知症については特に驚きもせず淡々と受け止めています。しかし初めて経験する方には、この「リフレイン会話」で精神がやられてしまうほどの衝撃だと思います。そんなときに大事なことを鎌田氏の本からご紹介させていだだき締めくくりたいと思います。

 本書には「死を見つめるための絵本紹介コーナー」もあり、『ぼく モグラ キツネ 馬(チャーリー・マッケジー著・川村元気訳・飛鳥新社)』という、迷子になった少年とモグラとキツネと馬の旅物語の一文を紹介しています。旅の道中、少年は動物たちから「将来、何になりたい?」と聞かれます。少年の答えはなんと「ヤサシイヒト」……。そしてさらに「一番勇敢な言葉は?」と聞かれると、少年は答えます「助けて」……と。

 ついつい忘れがちな大切ないろいろが、自分の心に戻ってきたような読書タイムでした。

 改めて言いますが、介護は一人で抱え込んでは誰だって身が持ちません。時には勇敢に「助けて!」と外に発信して、誰かに頼りながら、もがきながら、その時々の最適解を見つけていきたいです。

読書する私(妄想、笑)

【介護人の悩み 教えて!ChatGPT】

Q:軽度認知症(左半身麻痺)の母が、新しい入れ歯を「出して!」「入れて!」と繰り返し、少々わがままが過ぎて困っています。どうすればいいですか?

ChatGPTの回答>

これはご本人のわがままではなく、脳の情報の受け取り方が変わってしまっているために起こります。
考えられる理由はいくつかあります。

1. 「口の中の違和感」が正しく脳に伝わっていない

認知症が進むと脳が感覚を正しく処理できなくなります。

•口の中が乾いている(ドライマウス)
 以前使っていた入れ歯の「圧迫感」という記憶だけが残っている
•頬の粘膜を噛んでいる、あるいは口内炎がある

などの小さな不快感をすべて「入れ歯が入っているから出してほしい」という言葉に変換して訴えてしまうことがあります。

2. 「見当識障害(けんとうしきしょうがい)」

今がいつで、自分がどこにいて、自分の体がどういう状態か(入れ歯を外したかどうか)が分からなくなる症状です。「さっき外したよ」と説明しても、その記憶が数秒で消えてしまうため、お母様にとっては「今、異物が入っていて苦しい」という感覚がずっと「初めて」の出来事として続いているのです。

3. 「不安」の裏返し

寝たきりで言葉が思うように出ない場合、何か不安や寂しさがあったときに、最も言い慣れたフレーズを繰り返してしまうことがあります。

<一服のコメント>

 AI回答の2と3が当てはまるな、と思いました。どちらも「感情的になってはいけない」が最適解。亡き父の経験値が私をちょっぴり大人にしているようで冷静に対処できると思います。時々余裕がなくて怒っちゃうのも人間だもの、仕方ない(母もすぐ忘れるから、気にしない♪)

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