カサンドラ症候群とは

パートナーと、心がまったく通わない苦しみ

 昨今、大人になるまで見過ごされてしまう「大人の発達障害」が注目されるようになりました。落ち着きにかけ、衝動的な行動をしがちな「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」、そして対人スキルや社会性に問題のある「アスペルガー症候群」などは、大人の発達障害の代表的なものです。

 発達障害は、生活する環境や、周りの大人や友人たちの関係などによって、何とかカバーされることもあります。そのため、大人になるまで発達障害があることに気づかず成長してしまうケースが、少なくありません。また発達障害があっても、学校の成績が良かったり、人に勝る技能や特出した才能などを持っているために社会的な地位を極める人も少なくなく、その場合は「ちょっと変わった人」、「ユニークな人」ということで、問題が片づけられてしまうこともよくあります。

 しかし、発達障害に気づかずに育った大人の行動を、一身に受け止め続ける家族には、どういう影響が出るでしょうか? その人の言動に翻弄され続けることは、それをされる人の心身の健康を脅かす大問題になりかねません。カサンドラ症候群とは、発達障害をもつパートナーとの間に情緒的な深い繋がりを感じることが出来ず、絶望感に苦しむ状態をいいます。これは病名ではなく、人間関係上の特定の問題の呼称であり、アメリカの精神医学学会の診断基準にも含まれていません。

 カサンドラ症候群という言葉が生まれたのは、1988年のこと。ユング派の心理療法家、ローリー・レイトン・シャンピラが、1988年に「カサンドラ・コンプレックス」と名付けたことで、知られるようになりました。カサンドラ症候群の人は、身近な人間関係において理不尽や不条理な状況に追い込まれているのに、社会から理解してもらえないという特徴があります。カサンドラ症候群は、あらゆる対人関係で起きうるものですが、その多くはアスペルガー症候群のパートナーとの間で起こるのが圧倒的多数です。また、男性よりも女性のほうがその発症率が高いという特徴があります。

 「カサンドラ」は、ギリシャ神話に登場する予言者の名前です。太陽神アポロンの怒りを買い、「カサンドラの予言は誰からも信じられない」という呪いをかけられたために、予言を伝えても人々から信じてもらえなかった、という話がその起源です。

 先に述べたように、カサンドラ症候群は病気ではないので、抗うつ剤のような薬があるわけではありません。カサンドラ症候群が起因して鬱などになる場合、薬を飲む必要があることが出てくることはありますが、カサンドラ症候群自体は、原因となっているパートナーとの関係に向き合い、パートナーとの接し方や関わり方、考え方を変えていく以外に改善する方法はありません。しかし、パートナーに理解があれば、その人たちなりの「幸せ」の接点を見出すこともでき、関係改善が期待できるケースもあります。

 以下は簡単なカサンドラ症候群と、アスペルガー症候群の特徴を記したチェックリストです。正式な診断は専門医の元で受ける必要がありますが、傾向を知ることは可能です。該当する項目の数が多いほど、みなさんがカサンドラ、パートナーがアスペルガーの可能性が高くなります。皆さんと皆さんのパートナーは、このチェックリストの項目に、いくつ当てはまりますか?

カサンドラチェックリスト

(監修:Dr. Nick)