チップの支払いを渋る人に何と説明すればいい?
国際結婚・海外移住

【国際結婚・海外移住の質問に答えます!】
人生の選択肢を海外へ広げたいGo Women Go読者の皆さんからの様々なご質問に、国際結婚歴17年のジョーンズ千穂さんがアメリカから答えます。

読者からの質問:チップを支払いを渋る人に何と言えばいい?

 夫の転勤に伴ってアメリカに駐在して2年目の専業主婦です。駐在は3年が目安なので、私たちがアメリカに住んでいる間に訪問したいという親戚や友人が多くて、いつも誰かお客様が家に滞在しているような毎日です。ただ日本から来る人のほとんどが外食の際、チップの支払いで文句を言う(ケチる)ので、レストランには行きにくいのが悩みです。でも私がお客様の食事を毎日作るのも大変なので外食ははずせません。チップを納得して払ってもらうためには何と説明すればいいでしょう?

「そういう文化だから仕方がない」と言ってみる

 こんにちは! なるほど、状況がよく分かります。アメリカではレストランやタクシー、ホテルなどでのチップ文化が定着していますから、避けては通れませんよね。気分良く滞在してもらいたくて迎え入れる相談者さんも頑張っているのに、来客の文句や愚痴を聞いてしまうと悲しくなりますよね。

 でも日本にはチップ文化はないですし、特に海外旅行に慣れていない方なら「えっ? なんで追加料金を払わなきゃいけないの?」って思ってしまうでしょう。しかもこの円安で物価高ですから、レストランでの食事もたとえば食前酒1杯とかデザートを頼んでしまった日には、ランチでも軽く1人5千円を超えてしまいます(基本、日本のようなお得なランチセットがない国なので)。その上、さらにチップを支払うとなると……・「高いな(汗)」となる人の方が多いと思います。米ドルでお給料を頂いているアメリカ人ですら「外食が高くなったから控えるようにしている」なんて言っているくらいですから。

 ですが、来客の方々には「すでに日本より物価が高いアメリカに来ていて、ここは文化が違う国なんだ」ということを納得してもらうしかないと思います。チップはサービス業で働く人の収入の大部分を占める場合もあるので、支払うか否かは選択ではなく、マスト(必須)に近いことも理解してもらわないといけないと思います。

「ありがとう」や「ごちそうさま」を形で表す

 日本では外食したら「ごちそうさま」「ありがとう」と言ってお店を出ますが、アメリカでは、それをチップで示します。つまり、チップは「ありがとう」を形で表す文化だと思えば、チップを支払うことへのハードルがぐっと下がりませんか?

 レストランではサーバー(ウエイター、ウエイトレス)はお料理を運ぶだけでなく、飲み物のおかわりを気にかけたり、世間話で場を和ませたりするのもサービスの一部。要はアメリカ流のおもてなしですよね。心地よいサービスを受けた感謝の気持ちをお金で伝える手段がチップなのです。

 変わった例ですが、若い女性スタッフがパツンパツンのタンクトップにブルマーに近いショートパンツ姿で給仕する有名スポーツバー・チェーン店があるんですが(←わかるかな?笑)、そこに新婚当初に夫婦で行ったとき、私たちの席を担当した女性スタッフがなんと夫の隣に座ってカニの殻を剥いてくれたんです。でも、私のカニは剥いてくれなかった(笑、知らない人の触った蟹肉なんて食べたくないですけど)。夜のお店ではないので驚いたし、妻としてはかなり複雑な気持ちでした(苦笑)。気分は良くなかったので、夫には「ここのチップは控えめに!」とバシッと伝えたのですが、実際はいくら払ったのかは聞いていません(笑)。彼にとって心地よい対応だったならチップは多めに支払われたでしょうし、私のように少しモヤッとしたら控えめな金額になっていたでしょう。つまり、そんな感じでOKなのです。

異国のマナーを楽しむ気持ちで

 友人や親戚の中には、どうしても「チップを払いたくない」「高いのは納得できない」と態度に出す人もいますよね。そんな場合は、笑顔で軽めに説明するのがおすすめです。

 たとえば、「アメリカではチップはサービスへの感謝の形。お給料の一部になっているんですよ」とさりげなく伝えると素直に聞いてくれることがあります。お会計の時に言うのではなく、料理を待っている最中にしれっと話しておくと良いかも。それでも文句を言ったりする場合は、「チップはアメリカでのマナーなんですよ」「金額が少ないと店の外まで追いかけて来る時もあるみたいですよ」程度の情報を与えて、深く議論しないことがポイントです。特に「サービスがあまりよくなかった時」に問題になりやすいチップの金額ですが、雑な対応をされてモヤッとしたときは控えめに渡すだけで大丈夫(でも都会だと雑なサービスでも控えめな%は許されない説もあります)。異なる国の習慣やマナーについて説得しようとするとお互いにストレスになるので、相手の態度がどうあれ、自分のスタンスを守るのが一番です。

 レシートにチップの目安が印刷されている場合は、それを指さしながら「このお店は最低ラインが15%だから、そこに書いてある○ドルをチップの欄に書けば大丈夫ですよ」と言ってしまえば、心理的負担は軽減します。ちなみに最近は「サービスチャージ」という名称で、お会計に最初からチップとして22%程度が含まれている店も増えてきたので、レシートにサインする際にサービスチャージが含まれているかどうかを確認してからサインしましょう。昔は会計の10%が目安だったチップが今は都会だと18%が最低ラインで20%が一般的、地方だと最低15%くらいが目安だと言われます(請求書の推奨チップ金額欄を見るとその土地の最低%が分かります)。アメリカの物価も上昇しているので、チップは何%が妥当かのアップデートも必要です。

 私自身も高いなあと思ってしまうチップですが、「チップはありがとうを伝える手段のひとつ」と考えるようになってからは、外食をもっと楽しめるようになりました。「郷に入っては郷に従え」という言葉がありますが、完璧ではなくとも、ちょっと寄り添う気持ちを持つことで異国での時間をより豊かに楽しく過ごせると思います。「笑顔でチップを置いてさっと席を立つ」アメリカ流のマナーで、文化の違いを楽しんでみてください。

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