「ええ時も悪い時もある」
もう覚悟決めよし

「どうすれば幸せになれる?」「老後のお金は足りる?」何歳になっても悩みは尽きず、ひとりではなかなか前に進めない……。そんなあなたの背中をバシッと押してくれる頼もしい京都の姐さん、なかまつ小百合先生の痛快連載コラム。あなたのお悩み、何でしょう?

あなたは自分のこと好きか? 嫌いか?

自分の中の「陰」と「陽」どっちも大事や
ええも悪いもないねん
影あってこそ光がわかる
それに気づくために生まれてきてん

あなたは自分のこと好きか?嫌いか?

私はずっと、
自分の積極的なとこ、すぐ実行するとこ、明るいとこは
好きやってん。

そやけど、すぐ物をなくしたり、
どっかに置き忘れてきたり、
人が言うてることを自分だけ違って理解していたり、
スカタンなとこが嫌いやった。

片付けが苦手。
何度やっても失敗する。
めっちゃ早め早めに準備しても遅れてしまう。

なんでなんかな
どっかおかしいんかな。

母親も、娘も、夫も
「気にすることないよ。いつも頑張っているし
人より上手にできることがあるんだから、
人より苦手なところがあってもしかたがないよ」
と声をかけてくれた。

でも、私は許せなかった。
自分の、人より劣っているところが。

だから、いつもいつも自分を責めていた。

和の料理で気付かされた陰と陽

ある日、和食のマナーを教えてもろた時
先生が言わはった。

「和食にはひとつの皿に陰と陽、どちらも入るように考えられている。
ふぐのてっさは包丁のまっすぐな方の刃で切らないと薄くきれへん。
これは“陰”にあたる。
そして、それを盛り付けるのは“陽”である、まあるいお皿と決まっている。
陰と陽。
どちらがいいとか悪いとかでなく、どちらも必要。
日本で大切にされるのは“中庸”」

中庸とは
考え方や行動が極端に偏らず、
過不足なく調和がとれている状態のこと。

人にどんだけ慰められても、励まされても
受け入れられへんかったのに
このマナーの説明を聞いた時、
ハッとした。

和食の料理に求められている陰と陽が
私の中にもあるんやと。

あっていいんやと
それが当たり前の姿なんやと。

許されたような

長らくの苦しさから解き放たれたような気持ちになった。

自らの足りんを知る

自分を責めるのは辛い。
だって、逃げ場がないからな。
24時間、追いかけてくる。
ネチネチ、しつこいねん。

自分を許す、自分を認める。

そんなことができたのは
50歳を過ぎてからやと思うわ。

自分の内面だけやのうて
人生も
ええことも、悪いことも起こる。

どんなに神社にお参りしても
陰徳を積んでも
不幸な出来事は起こる。

でも、それが悪いこととは限らへん。
ええ時も悪い時も経験するのが人生や。

今世のさだめや。

悪い時は
これも経験、これも気づきと受け止める。

その中から、
我慢を知る、謙虚さを知る
継続し続ける根気を培う。

不幸な出来事が自分の揺るがぬ軸を育てるんや。

そうやって、
前世で乗り越えられへんかった壁に
今世は足をかけるねん。

悔しさを知るから
自らの足りんを知るから
人の幼さ、弱さを
よしとする器が育つんや。

私はそう思てるねん。

なかまつ小百合『悩める貴女にお金の作法教えましょ』書影バナー

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