ボアアウト(退屈症候群)を超えて
介護ってなんだろう?

<やまなし介護劇場>
「母、危篤」の連絡を受け、東京から故郷山梨へ飛んで帰って早13年。50代独身の著者が愛する母を介護しながら生活する日々を明るくリアルに綴ります。

介護人の心のエネルギーが枯渇するとき

 体のエネルギーは満タンで、ここ数年は風邪すら引いたことない頑丈な私でも「要介護4」の母との生活で、時折、心が疲弊してしまうことがあります。ようするに、心のエネルギーが枯渇するとでも言いましょうか。幸い日常生活に支障を起こすような病気にはつながってはいませんが、この夏の暑さもともなって、なんとなく気合が入りにくいです。しかも、母の夜中の覚醒に睡眠を妨げられてしまうため、軽い睡眠障害を引き起こしているのか、イライラすることが多くなりました。ついつい怒ってしまい反省しても、また怒ってしまう……という悪循環に陥りがち。そうなると自己嫌悪です(涙)。本当に睡眠って大事だと痛感しています。

 最近知ったのですが、睡眠障害を引き起こす原因のひとつに「ボアアウト(退屈症候群)」という病気があるそうです。調べてみると、仕事における物足りなさややりがいのなさから、意欲の低下やメンタルヘルスの不調を引き起こす状態を指すそう。発症すると不眠、無気力感、仕事への興味喪失、集中力の低下、疲労感、自己評価の低下、不安や抑うつが現れるとか。

 「退屈で発症」……って、10年以上前、まさに介護生活が始まった頃の自分のことだ!と思い当たりました。

「忙しい」のに「退屈」

 結婚や子育ての経験がない私は母の介護を始めるまで「誰かのため」を軸に生活をしたことがありませんでした。だから、介護を軸にした生活の中で自分だけの時間が削られていくことに当初は「窮屈さ」を感じました。

 親を介護するために帰郷することを自ら選択し、当初はすべて初めてのことばかり。介護を軸とした忙しい生活が始まりましたが、そこから時を経て、田舎生活の単調さに次第に「退屈」が生まれてきました。全てが初めての経験に溢れていた「介護」なのに「退屈」な日々。都会ならば「ソロ活女子」「おひとり様」ライフなんていう定番があり、行きつけの飲み屋で楽しんだり、本屋、劇場、映画館などカタルシスを感じられるスポットが数多くありますが、田舎生活だとそうそう選択肢はありません。簡単に息抜きができる場所が限りなく少ないのです。

 まず、飲み屋は近くにないため、自宅で深酒になりがちになります(笑)。友達や趣味の仲間たちと他愛ない話をしながら飲んでいるときは楽しくて悪酔いもしないのに、一人酒は違います。一人酒、手酌酒……そこに演歌でも流れれば、酒浸りの中年女のシーンがコンプリート。かと言って介護が必要な家族を残して、外に飲みに行ったら罪悪感で楽しめないことはわかっています。そんなわけで、すっかり都会生活に馴染んでいた私は、介護をしながらの田舎生活でどんどんストレスが溜まっていきました。

ストレスは自律神経を狂わせる

 ある日、私は介護疲れで爆発し「出ていく!探さないで!」と啖呵をきって、農業用の軽トラックに乗り、家を飛び出してしまいました。今となっては原因すら思い出せませんが、とにかく感情的になっていたのでしょう。

 山梨の県境から静岡に向かい、いつの間にか三保松原の浜辺に着きました。誰もいない海。曇り空を映し出す海は地平線まで灰色で、私の心はわびしさでいっぱいになりました。財布の中身も心細いし、そもそも「何やってんだろ……わたし」と。さすがにすぐ気づきましたが、とりあえず家族が心配して携帯に連絡が入ったら「渋々」帰ってやろう、と海をぼんやり眺めていました。ところ、いつまで経っても家から連絡は来ません。地平線に太陽が沈みはじめたので、いよいよバカバカしくなってスゴスゴと帰宅しました。トータルで3~4時間、しかも誰も気にしなかった「独りよがり」の家出でした(笑)。

 生活環境が変われば、誰もがそれだけでストレスを感じますよね。私の場合、自分の時間を奪われたような被害妄想が加速してしまったのだと、いまなら分析できます。人は誰にも心配されず、寄る辺ない退屈さに心を壊すこともある……。だからこそ、自分に無理のないスピードで生活スタイルを変えていくことが必要だったのです。

ボアアウト回避のために

 介護生活が始まって、13年目。私がしっかりスタイルを変えていけたのかというとそうでもなく、母とときどき親子喧嘩をしながらの介護生活のままです。ただし、自分の性分は社会とコミットしていないと「退屈」→「焦燥感」→「ボアアウト発症」に陥りやすいと気づき、短時間だけれど働くようになりました。その分、妹が主体的に母の介護をしてくれるように変化していきました。

 次回は「ボアアウト(退屈症候群)」と似て非なるもの、今後来るべき「バーンアウト(燃え尽き症候群)」についても、考えてみたいと思います。

【介護人の悩み 教えて!ChatGPT】

質問:怒りたくないのに怒ってしまう。反省して優しくして、また怒る……。私の情緒はどうなっていくのでしょうか?

<ChatGPTの回答>
あなたの情緒は、正常です。
むしろそれは、「人としてちゃんと感じている」証拠です。
介護には毎日何度も「理性」と「感情」がせめぎ合う瞬間があります。
怒りたくない。だけど怒ってしまう。それを反省してまた優しくなれる……。

この循環は、**「葛藤しながらも愛を手放していない人」**にしか起こりません。

ポイントは完璧を目指さないこと。
怒りは「ダメな感情」ではなく、「今の自分の容量オーバーを教えてくれる信号」です。
もしできるなら、その怒りを第三者目線で実況してみてください。
たとえば「今、私ちょっと湯気出てます」「怒鳴りそうなので深呼吸実況中」など。
感情を見つめる“ひと呼吸”が入るだけで、グラつきはやわらぎます

※AIのChatGPTに聞いてみました(提供:OpenAI)

<一服のコメント>
「葛藤しながらも愛を手放していない人」。優しいねぇ。なにげなく演歌だけど(笑)、泣ける表現です。うん、一人実況中継ならできるかもしれません。レッツトライ!

家出中の私。誰も気にしていないという現実!

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