オリンピックに見る、日本とアメリカの違い

オリンピック一色に染まる日本、それほどでもないアメリカ

 こんにちは、ランサムはなです。北京オリンピックが終わりましたね。今回も多くのドラマが生まれ、見どころの多いオリンピックだったと思います。アメリカ生活が長い私ですが、オリンピックになると夢中になって追いかけてしまうのは日本の選手ばかり。どの国に何年暮らそうと、根底のところは日本人なのだなと思わずにはいられません。

 オリンピックの時期になると懐かしく思い出されるのが、日本全体がオリンピックの話題で持ちきりになり、期間中は新聞やテレビがオリンピックの報道一色に染まる現象です。日本の選手が金メダルを取ると、号外が出たりすることもありますよね。日本の国旗がはためき、アナウンサーの感動的な実況中継に、国民全員が涙したり……。オリンピック期間中に日本全体を覆うあの「一体感」や「高揚感」は、日本でオリンピックを見ていないと経験できないものです。なので、オリンピックの時ばかりは日本に帰ってテレビにかじりつきたい衝動に駆られます。

 日本ではオリンピック期間中に仕事を休んだり、徹夜してまで日本の選手の試合を見ることがSNSでトレンド入りするような現象まであるようですが、そのようなことをアメリカでは見たことがありません。もちろんアメリカでもオリンピックが一大イベントであることは変わりませんし、金メダリストはCMに出演するなど一目置かれる存在にはなりますが、日本ほど「国が一丸となって自国の選手を応援する」という熱気を肌感覚として経験したことがありません。周囲を見回しても、「オリンピック開催? へぇ~」程度の反応しか示さない人が大部分です。具体的な数字はわかりませんが、アメリカ人が同じ時間帯に一堂に会して熱心に観戦するのは、アメリカン・フットボールの祭典、スーパーボウルの方が多いのではないかと思うほどです。この温度差は、単一民族国家と多民族国家の違いなのでしょうか。

「一体感」と「疎外感」

 日本人である私は、そのような一体感がアメリカで感じられないことを恋しく思います。一方で、日本で暮らす一部の外国人にとっては、その一体感は違和感や疎外感を覚えるものでもあるようです。

 日本に住んでいた頃、日本在住の外国人の友人が、「日本は日本選手の活躍しか報道しないんだね」と寂しそうに指摘したことがありました。確かに、たとえば1位の選手が外国人で2位、3位が日本人選手の場合、1位の選手の国籍や名前に一切言及せずに「日本は2位」とか、「○○選手は3位」などの情報のみでニュースや記事が完結しているのを見かけることが多くありました。

 こういう表記は、日本で暮らす外国人にとっては、「他の国(の選手)はどうでもいい」と言われているように感じられるのかもしれません。「一体感」が強くなれば、それと同時に「疎外感を覚える」人たちも出てくることを改めて認識させられると共に、指摘されるまでそのように感じる人たちの存在に気付かなかった自分の配慮のなさにも深く反省させられたことを覚えています。「Majority(多数派)」であるということは、恵まれていて居心地が良い分、見えていないものもたくさんあるのだ、ということを実感させられた出来事でした。

国を代表するということ

 オリンピックを見ていると、いろいろな意味で「国を代表する」というのはどういうことなのかを考えさせられます。優秀な成績を収めるのはもちろん大切ですが、成績以外にも、選手が競技に臨む姿勢や佇まいが注目されるのがオリンピック。結果はどうあれ、選手を通じて出身国の個性がにじみ出るのもオリンピックの面白いところだと思います。

 私が今回のオリンピックで特に印象に残ったのは、フィギュアスケートで4位に入賞した羽生結弦選手でした。4回転アクセルという前人未踏の領域に果敢に挑み、メダルにはつながりませんでしたが、4回転アクセル公認という歴史に残る記録を打ち立てました。

 海外では「侍」と評されることもある羽生選手ですが、そのストイックな勤勉さ、謙虚さ、真摯さ、おだやかさ、礼儀正しさは、日本人の良いところとして世界が尊敬する資質だと思います。不運に見舞われても、最後までベストを尽くす姿。2度も金メダルを獲得した過去の実績があるからこそ、リスクを冒してでもさらに上を目指す挑戦である4回転アクセルを優先させる選択ができたのでしょう。2度も頂点を極めた後も慢心に陥ることなく、歴史の1ページに名を遺すための努力を重ねる後ろ姿に感銘を受けた後輩も多いのではないでしょうか。王者の誇りと品格を感じさせる挑戦は、ある意味、メダル以上に貴重で価値があったと思います。

「頑張る」という言葉がある日本

  競技後の会見で、羽生選手は「頑張りました」という言葉を何度も口にしていました。英語には「ベストを尽くす(do one’s best)」、「勤勉に働く(work hard)」などの表現はありますが、日本語の「頑張る」のように、努力する姿勢を一言で表す言葉はありません。”do one’s best”とか、”work hard”というと、特定の仕事や課題に短期的かつ集中的に取り組む印象がありますが、「頑張る」というと、単なる「仕事」を超越して自分自身に真摯に向き合い、自分に期待して辛抱強く努力を続ける、生き様とも言える姿が頭に思い浮かびます。そのような概念を言い表す「頑張る」という言葉がある日本は素晴らしく、その言葉に共感できる日本人に生まれて良かったとしみじみ思いました。

 「真摯」、「勤勉」、「努力家」、「謙虚」、「礼儀正しい」という日本の良いところを、競技を通じて世界に示した羽生選手。彼の姿を見て、「国を代表する」ということは、成績以上に重いものを背負って世界に出ていくことであり、その生き様や立ち居振る舞いが国全体の評価にもつながるものなのだということを強く実感させられました私も分野や活動は全然違いますが、日本の良さを世界に知ってもらうために草の根活動をしている一個人として、民間親善大使として、また日本人として、恥ずかしくない生き方をしたいと改めて思いました。

ランサムはなのワンポイント英語レッスン

「頑張る」は英語に訳せない言葉

 日本語には「よろしく」、「お世話になっております」、「おつかれさま」など、英語圏にはない概念を言語化した言葉がいくつかありますが、「頑張る」もそのひとつ。”Do one’s best”、“Keep working”、”Strive”、”Go for it”、”Hang in there”など、「頑張る」という言葉の様々な側面を表す表現はいくつも存在しますが、「頑張る」のように、それを一語で端的に表す言葉はありません。働きすぎや過労死が問題視されるあまりに、「頑張りすぎないように」などの警告が出されることもあるようですが、基本的にという言葉や姿勢は、日本の美徳として誇れる価値観だと思います。

また、日本では五輪のことを「オリンピック」と呼びますが、英語では「Olympics」と「s」をつけて「オリンピックス」と発音します。「パラリンピック」も同様に英語では「Paralympics」です。このように大会正式名称の呼び方が異なることは意外と知られていないのではないかと思います。

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