離婚問題、頼れる人が誰もいません

 ニック先生、こんにちは。静岡県に住んでいる加奈子と申します。今年で50歳になりますが、長年問題があった夫との関係が、とうとう修復が不可能なほど悪化し、毎日生きた心地がしません。私は何度も修復を図ろうとしましたが、夫は私を無視し続けています。たまに話し合いの機会が作れても、夫は自分には何ひとつ問題がないという態度を取り続けるので、話し合いのたびに責められているような気持ちになり、どうしていいのか分かりません。

 夫婦仲が悪くなったのは、私が5度も流産して子供を産めなかったからかもしれません。流産するたびに夫は落胆して、5度目に流産した時には「お前はきっと最初から流産すると思っていたんだろう」と言われました。傷ついて何日も泣き続けましたが、夫はそんな私を慰めてはくれませんでした。その後、義母から夫が「子供ができないことを実家で泣いて悲しんでいた」と聞いてから、私自身も夫に対して心を閉ざすようになった気もします。

 話し合うたびに、夫の口からは離婚という言葉が出ます。もう、そうするしかないのだろうと思う反面、私には離婚後に働く場所がありません。数年前に夫が東京から静岡に転勤した際に、私は自分の仕事を辞めてしまったからです。すでに両親は他界し、親戚とは疎遠なので、頼れる家族もいません。友達は何人かいますが、彼女たちも自分の人生の分岐点にいるので、私の話をゆっくり聞いてもらえる状況ではありません。

 私は孤独です。今の私には唯一の家族が夫です。その夫との離婚の危機を乗り切る相談ができる人が誰もいないのです。ニック先生、助けて下さい。よろしくお願いします。

苦い経験……私が人生で一番悔やんでいること

 加奈子さん、こんにちは。とても辛い状況ですね。もしも今、加奈子さんが私の目の前にいるならば、あなたの目を見ながら誠心誠意、伝えたいことがあります。それは、「加奈子さん、流産のことでどうか自分を責めないで」ということです。

 加奈子さんの悩みは、私自身の過去の苦い経験を思い起こさせました。私には娘が一人いますが、彼女は養女です。私たち夫婦は子供を欲していたのですが、残念ながら妻は3回妊娠して、3度とも流産を経験しました。これはとても辛い出来事でした。しかも私は、そんな妻を追い詰めてしまったのです。3度目の流産の後、彼女を励ますつもりで投げかけた言葉が彼女を苦しめて、私たちは一時、離婚寸前の関係になりました。

 「また妊娠すればいいよ。君なら大丈夫だよ」

 今はこの言葉が、どれほど思慮に欠けた思いやりのないものだったことがよく分かります。流産をして傷ついている彼女に、どうして「また妊娠すればいい」などと言ってしまったのか。これは私が人生で一番悔いている発言です。

 私が犯した間違いは、それだけに止まりませんでした。当時、私はすでに心理カウンセラーとして活動していたので、ふさぎ込んでいる妻を自分がケアできると思い込んでいました。「プロなのだから、離婚問題は自分で解決できる」という、おごりもありました。私は自分の知りうる限りの情報やツールを用いて、妻を「直そうと」したのです。まるで自分の心理プログラムの実験道具かのように。そんな私の対応は彼女をさらに傷つけました。私は若く、どうしようもないほど無知だったのです。

心理の専門家でも、自分のことは誰かに助けてもらう必要がある

 一連の経験は、私たち夫婦を深く傷つけ、絶望感を生み、そして最終的にはお互いを真に知るきっかけになりました。少しずつ絆を深め合い、私たちはもう一度人生を共に歩くことを決めることが出来たました。

 この経験で私が得た一番の気づきは、「心理の専門家であっても、自分のことは誰かに助けてもらわねばいけない」ということ。今まで見ていた心理の世界の景色が一変しました。

 私たちは1年半もの間、カウンセラーに助けを求め、夫婦カウンセリングに通いました。誰かの心に寄り添うこと、寄り添いながらも客観的に背中を押していくこと。自分が当事者として誰かに自分の痛みを相談するという経験をしたことは、私のキャリアをより豊かにしてくれたと思います。

 また、夫婦カウンセリングを受けたことがきっかけとなり、私たち夫婦は養子を迎える決断をしました。あの苦しい道を辿らなければ、愛する娘に会うことはなかったと思うと、どんな出来事にも意味があるのだと思います。

 加奈子さん、辛い時に周囲に頼れる人がいないのは、とても苦しいことです。あなたが今一番必要なのは、安心して自分の心を開ける場所です。辛い時は、誰もが誰かに頼る必要があります。私がかつてそうしたように。

 お近くに心理カウンセラーのクリニックや心療内科はありませんか? 自分一人で悩み続けるのではなく、そうした場所に助けを求めてください。

 日本とアメリカではカウンセリングの概念が異なるという話は聞いていますが、出来ることなら、ご夫婦でいけるカウンセリングも活用することをお勧めします。客観的な第三者が二人の間に入ることで、思いもよらなかった相手の気持ちを知ることができたということもあります。離婚という結論を出す前に、ぜひ「頼れる場所」を探してみてください。

お相手は「どうしていいのか分からない」のかもしれない

 最後に、加奈子さんの悩みの中で、ひとつ注目したいのは「夫が、子供ができないことを実家で泣いて悲しんでいた」という点です。彼はどうして加奈子さんの目の前で涙を見せなかったのでしょう? もしかすると、口走ってしまった自分の言葉への後悔に加え、すでに傷ついている加奈子さんに対し、どうやって心を寄せてよいのか分からなくなったのかもしれない、という推測が頭に浮かんできます。

 真相は彼にしか分かりませんが、一般的に男性はプライドの塊です。暴言に似たようなことを口にした後、そのことをいくら後悔していても、結局は自分のエゴが勝ってしまい、自分の正しさを振り回して弱さを見せない態度を取ってしまう……。これが男性の性でもあります。私が自分の専門分野を振りかざして妻を「直そうとした」ことも、これに当てはまります。

 加奈子さんとしては、さんざん傷つけられた後に「今さら感」や「もう傷つきたくない」という思いがあるかもしれませんが、もしも離婚を望まないのであれば、もう一度、真剣に向き合うことを恐れないでください。そして、彼が感じている「後悔」を想像して、「自分の痛みだけに目が向いて、あなたの痛みには心を寄せていなかったかもしれない」という具合に、少しだけでいいので折れてあげてください。彼の心に自分の心を寄せるような誘い水は、二人の間にある溝を埋めるきっかけになるかもしれません。

 そして、どうか第三者の助けを借りてください。緊張感がある状態で冷静に話したほうが、お互いを理解できる状況になりやすいからです。一度しかない人生。ご縁があって結ばれたお相手ですから、どうか出来る限り自分のケアをしながら、愛を諦めないで欲しいと願います。

 

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