医者は医者でも、「オランダ医」!

 世界中の多くの女性たちの心をトロトロに溶かしてきた恋愛小説シリーズ、「ハーレクインロマンス」。今回のシチュエーションは「オランダ医との恋」です。

 しかも、このシチュエーション、話の展開が文字通り「毎回、同じ」。毎度、リッチだけど恋には奥手のオランダ人医師と、ちょっと薄幸で健気なヒロインが、まったく同じ展開で恋物語を繰り広げるという、期待を裏切らないストーリーなんです。物語は読む前から予想がつくし、「あれ? 主人公の名前が違うだけで、また同じ話じゃない?」というツッコミを入れたくなるほどなんですが、それでも毎回萌えて胸キュンに(笑)。

 このワンパターンで不動の人気を手にしたのは、今は亡きベティ・ニールズというイギリス人作家です。ロマンス小説の大家で、すでに20年も前にお亡くなりになったのですが、彼女には根強いファンがいて、いまでも改訂版が出たり、マンガになったりと絶大な支持を得ています。

『とっておきのキス』ベティ・ニールズ著

『とっておきのキス』(ハーレクインロマンス)

『とっておきのキス』(ハーレクインコミックス)

 イギリスの病院で、スマイズ教授の秘書を務めているジュリー。体調を崩した教授が退官することになり、新しいボスとして、世界的権威の医師であるシモン・ファン・デル・ドリースマ教授がオランダから赴任することから物語が始まります。

 優しかったスマイズ教授の後任・シモンは、長身、金髪、ブルーアイズ。とびっきりのハンサムではあるのですが、初めての挨拶でもそっけなく、ちょっと冷ややかな男性です。仕事は優秀ですが人間味にかけ、ロボットのように淡々と大量の仕事をこなしていくシモン。ジュリーにも機械的に接するだけなので、彼女は「嫌われているのかも?」と悩むことも。

 ある時、「私のどこが気に入らないのですか?」シモンに訪ねたジュリー。するとシモンは「気に入らないということはないが、自分で秘書を選ぶなら君のような女性は選ばない」と言い放ちます。

 そんな彼の回答に悶々とするジュリーですが、2週間の出張で二人は一緒にオランダに行くことになります。ジュリーは二人きりになる不安とともに、密かに彼に恋心を抱き始めます――しかし、彼にはどうも恋人がいるようで……という展開。最後には彼が放った、ジュリーへの言葉の真意も意外な形でクリアになります。

胸キュンポイントとツッコミポイント

 ベティ・ニールズの胸キュンポイントは、どの作品にも共通して、とにかくヒーローもヒロインも「奥手」という点です。もどかしいくらいスローな展開が、読者の心をかえってヤキモキさせます。ヒーローは毎度のように「ポーカーフェイス」で、ヒロインへの思いをあまり表には出さないのが定番。シモンの場合もそれは同じです。

 ところが、ちょっとした事件が起きると、ヒーローはヒロインを守る「王子様」に大変身! その瞬間に「実は君が好きだった」となり、胸キュン!は最高潮に。清く正しい恋愛物語で、ホットなシーンは皆無ですが、最後のとっておきのキスは、大人の恋物語だからこその感動を呼びます。

 ツッコミポイントは、本当に毎回ワンパターンなこと。彼女の作品を読んでいる人なら分かると思いますが、どの物語を読んでもストーリーに真新しさは期待できません。そして主人公は毎度オランダから来るハンサムなお医者様。ヒロインは看護婦か秘書が多めですね。

 それでも世界中のファンが彼女の作品を愛してやまないのは、彼女のが綴った物語が、古き良き時代の清く正しい恋愛を私たちに思い起こさせてくれるからなのでしょう。

【作品評価】
胸キュン度★★★★★
ヒーローのむっつり度★★★★★
ヒロインの健気度★★★★★
物語の展開(意外性)★☆☆☆☆

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