
永遠のマンネリ「ハーレクインロマンス」で心に栄養を!
1949年にカナダで誕生して以来、世界中の多くの女性たちの心をトロトロに溶かしてきた恋愛小説シリーズ、「ハーレクインロマンス」。日本では小説だけでなく、コミック・シリーズもあり、一定層のファンの心を鷲掴みにしています。ハーレクインと言えば、絶対にあり得ないようなシチュエーションと、ゴージャスな男性との恋。「いくらなんでも、そんなことあるわけないだろう?」というツッコミどころが満載なのに、それでも妄想の恋の世界に魅せられる人は後を絶ちません。
本国カナダやお隣のアメリカでは、ハーレクイン読者の多くが40代から50代の女性だそうです。年齢を重ねても、乙女の心を持つ人が多いってことですよね。ハーレクインはそんな心の栄養なのかも知れません。
この連載では、毎回「ハーレクイン・ロマンス」ならではの「あるあるシチュエーション」をピックアップして、ハーレクイン愛読歴25年の𠮷田薫の独断と偏見で、とっておきのおすすめ本を紹介します。記念すべき初回のテーマは「砂漠」。なぜかハーレクインって、シーク(アラブの王子様)との恋物語が多いんですよね……。欧米女子は砂漠にさらわれたい願望が強いんでしょうか(謎)。
『砂漠の姫君』サラ・モーガン著
砂漠の国・タズカンの女王ライラと、シーク、ラズ・アル・ザーキとの恋の物語。亡きライラの父は遺言で、ライラは暴君で次期国王候補のハッサンと結婚するようにと命じていました。しかし、ハッサンの手に国が渡ったら、「国が大変なことになってしまう」。そこでライラは男装をして、国王に最も相応しいと言われるラズの元に忍び込みます。
ラズは、愛する元妻をライラの一族に殺害されており、ライラはいわば許さざるべき者。しかしラズはライラの頼みを受け入れ、愛のない結婚を承諾してハッサンから国とライラ、そしてライラの妹を守ることを約束します。
愛のないはずの結婚。しかし身体を重ねるうちに、ライラはラズを愛するようになっていき……。というお話。ラズの愛娘とライラのストーリーや、ハッサンとの闘いなどが物語に彩りを与えます。
胸キュンポイントと突っ込みポイント
胸キュンポイントは何といっても、男前すぎるシーク、ラズ・アル・ザーキと、健気で芯が通ったライラの「奥歯にモノが詰まった」かのような、愛のやりとり。ヒーローのラズがライラにメロメロなのは、読者にはバレバレ(笑)。でもライラはそうとは思っておらず、「私の片思い」的にラズを見ていて、ラズは悶々としている……。何度読んでも、「早くお互いの気持ちをハッキリ伝えなさいよー!」と、思わず叫んでしまいそうになります。
ライラは父親から虐待を受けており、決して幸せな王女ではありませんでした。強くて弱いヒロイン。胸に何かを秘めているような健気さ。その事実を知るうちに、彼女を守りたいというラズの気持ちが高まる流れも、胸キュンです!
突っ込みどころは、物語の冒頭でライラが男装してラズのところに忍び込むシーン。ハーレクイン・ファンならば説明いらずかと思いますが、ほんとうにこれ、どの話にもよく出てくる展開なんです(苦笑)。それから、これこそがハーレクインらしさでもありますが、物語の展開が分かりやすいこと。20ページくらい読むだけで、物語のその後の展開が予想できてしまうのも、ご愛敬という感じです(笑)。
【作品評価】
胸キュン度★★★★★
ヒーローの男前度★★★★★
ヒロインのいい女度★★★★★
物語の展開(意外性)★★★☆☆